臆病でボッチだった僕が、部員勧誘に来た空手部の女子に騙されて入部したその後

かわなお

第1話 どうして、こうなった

 どうして、こうなった。


 僕、八重波浩輝やえなみこうきは、空手道着姿の女子三人に囲まれていた。


「ねぇ、八重波くん。今日は、あたしとよね」


 イヤ。


「ああーーっ、ずるいよ、メグミ。コウキくんは、私とする約束よ!」


 いえ、そんな約束してません。


「はあ? そんなの関係なくない。早い者勝ちだわ」


 えっ、待って、僕の意思は?


「ううん、そんなことない。コウキくんは私の物なんだから」


 じゃないし……。


 


 僕の目の前で繰り広げられる、まるで修羅場のような光景。

 もちろん彼女たちが言い争っているのは、僕への好意などという甘酸っぱいものではない。


「だいたいねぇ、メグミって寸止め苦手じゃない。それでいつもコウキくんに迷惑かけてるんだから、少しは遠慮してよね」


 おおっ、言い切った。


「ぐぬね」


 メグミ先輩、危うし。


「じゃあ、じゃあ。八重波くんに選んでもらうというのはどうかしら?」


 あ、やべっ、こっちきた。


「ええーーっ、でもメグミは部長でしょう。コウキくんが断れるわけないじゃない」


 そうです。


「いいや、そんなのわからないって。カリナにもチャンスはあるよ……たぶん」


 ないです。


「ほらー、そんなの出来レースだよ」


 ……って、うそっ、心を読んだのかよ。




 そんな風に僕が戸惑っていると、もう一人の女子ミオリさんが参戦。


「もう、センパイたち。コウくんが怯えてるじゃない」


 ああ、女神さま。


「なら、わたしがもらうからね」


 ちがった。


「そんなの、ダメよ! コウキくんは、私の物だもん」


 ……そこに戻るのか。




 もはや、収集のつかなくなった、この状況。

 毎度のことながら、ナゼここまで揉めるのか。


 その理由を説明するには、二週間前からのことを話さねばならない。





 

―――――――――――――――――――――――


 第1話をお読みいただき、ありがとうございます。

 このお話は、本編7話、ミオリ視点の短編1話の、全8話構成。

 1日1話を予定しておりますので、最後までお付き合いいただけましたらと、思います。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る