虹色魔導師は目立ちたくない
プリン伯爵
第一章 プロローグ
マリス・レオンハートは辺境に住む男爵レオンハート家の長男である。
この世界では10歳になると魔力判定を行う為に神殿から魔導師が来る。
幸いにも神殿から来た魔導師が知り合いであった。
「マリス!!!お前は何色だろうな!父さんみたいに三色だったら人生楽に生きられるぞぉ!」
「ちょっとアモン!!あんまりマリスにプレッシャーをかけないであげて頂戴。」
「あ、レイア。すまん……俺も今日が楽しみで楽しみでな。」
両親はせめて僕の魔力が二色以上であってくれと願う。
貴族として爵位を継げるのは二色以上。
もしもマリスが一色であったならば、レオンハート男爵家はアモンで終わってしまう。
「大丈夫です、僕は父さんと母さんの血を引いてるんですから二色以上にはなれます。」
「そうかそうか、嬉しい事を言ってくれるなぁマリスは。」
元々僕の家は平民だった。
しかしアモンが三色魔導師として宮廷魔導師にスカウトされた為、爵位をもらったのだ。
もちろん魔導師養成学校を首席で卒業しなければ平民から貴族になるなど不可能だ。
父アモンがとても優秀であったが故の男爵である。
この世界ではほとんどの魔導師が一色だ。
二色であればそれなりに優秀な魔導師と呼ばれる。
だからこそ平民から三色魔導師が生まれたことは異例であった。
宮廷魔導師はスカウトされなければ就くことが出来ない、生まれ持った才能があってこそ許された道だ。
魔導師としての才能があれば16歳になると魔導師養成学校に入る義務がある。
一色であったとしても、魔法は色んな所で役立つからだ。
僕が住むこの国、アステリア帝国は他国と比べても魔法大国と呼ばれる程魔法に特化した国だ。
本来一つの国に筆頭魔導師が存在するがどの国も四色魔導師であることに対して、アステリア帝国筆頭魔導師は世界最強と呼ばれる五色魔導師クレイ・グレモリーがいる。
それも魔法大国と呼ばれる所以であるだろう。
「おっ!来たみたいだぞ!!」
ドアをノックする音が響く。
神殿から魔導師が到着したようだ。
「久しぶりですね、アモン男爵。」
「へっよせよ男爵って呼ぶの。昔みたいにアモンでいいってテレーズ。」
「そうですか、ではアモン、そこにいる子がマリスですね?」
「ああ、今日10歳になったばかりなんだ。」
「ふむ、なかなか聡明そうな子だ。では魔色測定の準備に取り掛かりましょう。」
神殿からやって来たのは父さんの旧友、テレーズ・ゼクシア子爵だ。
父が学生時代の友人らしい。
首席で卒業した父に対して、テレーズ子爵は次席だったそうだ。
互いに良きライバルとして切磋琢磨したそうな。
神殿魔導師になるのは二色以上でなくてはならない。
テレーズ子爵は二色だったにも関わらず持ち前の知能で他の三色魔導師を抑えて神殿魔導師次席までのし上がったと聞く。
二色であっても使い方によっては三色すらも超えるとされるがほとんど有り得ない。
それはもちろん魔力量もそうだが、使える属性が一つ少ないからだ。
テレーズ子爵のように二色で三色魔導師に勝てる者は極稀だろう。
「さ、準備ができましたよマリス君。そこの魔法陣からでないようにね。」
「は、はい。」
これから自分の魔色が分かると思うと少し緊張する。
「肩の力を抜きなさい。そう、自然体でいいですよ。」
目を瞑り、心を落ち着かせる。
「さあ、行きますよ。魔色測定!」
テレーズ子爵は神殿魔導師だけが扱える特殊魔法を口にする。
魔力の色、通称魔色というがそれを見ることができる魔色測定の魔法が使えるのは神殿魔導師だけ。
うっすら目を開けてみると僕の体は光に包まれ足元の幾何学模様の魔法陣が動き出す。
魔法陣が僕の体を上下に移動し見たこともない文字が空中に浮かぶ。
しばらくすると、魔法陣は足元に移動しそのまま止まる。
僕の体から魔力と思われる赤と青の魔力線が浮かびだす。
「おお!二色だな!!!」
横で見ていた父さんが喜び声を上げる。
「いえ、まだ終わっていませんよ。」
そんなテレーズ子爵の言葉通り今度は赤と青に混じって緑の魔力線も浮き出てきた。
「あなた!!マリスは三色よ!!!これで人生は安泰ね!!!」
「流石俺たちの息子だ!!!よくやった!!!」
三色確認されたところで両親は喜びを分かち合うように抱き合っている。
これで一安心だと思われたが、テレーズだけは真顔だ。
「まだです!!魔色測定は終わると勝手に沈黙しますがまだ動いています!!」
その言葉を言い終わるか否か、今度は黄色の魔力線がゆっくりと姿を現す。
「う、嘘だろ?四色だと!?」
「マリス、貴方……私達を超えたわ……。」
驚愕の顔に染まる両親をあざ笑うかのように今度は紫色の魔力線が浮かび上がった。
「あ、有り得ない!!五色魔導師がここに、誕生した……」
テレーズは口をぽっかりあけたまま固まる。
しかし魔法陣は止まらない。
僕の体から、橙、藍色とついに七色の魔力線が浮かび上がってしまった。
「な、七色……」
「そんな馬鹿な……」
七色の魔力線を放ちながら魔法陣はゆっくり動きを止め、消える。
僕の体の周りには七色の魔力線が纏わりついていた。
「はは……これは……歴史が生まれた瞬間ですよ……。」
「テ、テレーズ……これってもしかして……。」
「ええ、そうです。この世界に唯一にして無二の存在、虹色魔導師が今この時生まれました。」
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