~番外編 自業自得の人達~

第1話浅田理事長side

 鈴木グループの倒産。

 切っ掛けになった令嬢とその一家が歩んできた道のりが特番で流されていた。


 令嬢の親。

 つまり鈴木専務夫妻の恋。

 一世を風靡したシンデレラストーリー。

 その陰に隠されていた真実も赤裸々に暴かれていった。


 当然、夫妻の母校がやり玉に上がった。

 二人の出会いは高校だ。

 こればかりは仕方がなかった。

 隠すこと自体不可能だから。


 二人を祝福した事も、それによって不幸になった人が居た事も。


 大袈裟に報道されたとは思わない。

 現実はもっと酷かった筈だ。この番組は客観的な方だと思う。


 これを機に俺は、いや、俺達の派閥は社交界での立場を失った。


 元々なかっただろう、と言われるが、それでも「参加できる」のと「参加できない」のとでは雲泥の差だった。

 俺達世代は仕方がない。

 それだけの事をやったんだ。

 傲慢で横暴な振る舞い。

 それが我が身に返る事で因果応報という言葉を改めて噛み締める事となっただけのことだ。


 浅成学園の卒業生だというだけで色眼鏡で見てくる。

 一番の被害者は、何もしていない、関係ないはずの在校生と卒業生達だろう。


 関係ない世代の卒業生達。

 彼等は間違いなく被害者だ。

 だが世間はそう思わない。

 俺達と同類だと決めつける。


 妻とは離婚した。

 子供を守るために。


 この騒動で理事長を辞めた。

 それでも学園は定員割れを防ぎきる事はできなかった。


 数年もしないうちに廃校になるんじゃないか、と言われ始めている。


 友人の殆どが第一線を退いた。

 退かざるをえなかった。


 鈴木家の没落の余波を俺達は諸に受けた。

 未だに踏ん張っている連中もいるが時間の問題だろう。


 結局、全て失った。


 足掻いた末だ。

 後悔はない。



 岸から誘いを受けている。


 あいつは三年前に病院を退いている。

 理事の座を捨てた。

 他の連中と違って退陣を勧められた訳じゃない。自ら辞めた。


 今は各地の温泉巡りをしているらしい。


「お前も一緒にこい」と連絡がきた。


「料理は美味いし酒は美味い。湯治は最高だ」と言っていた。


 暢気な事だ。

 まぁ、早期退職したと思えばいいのかもしれないな。


 荷物をまとめている時に、古い写真が出てきた。


 満面の笑みで笑っている。

 青春時代の思い出。


 俺達の原点とも言うべき写真だった。


 



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