第2話大場社長side
その日はどうやって帰宅したのかよく覚えていない。
ただ今日、俺は社長の座から退いた。
どうしてこうなった?
『残念です。私達、ご縁がなかったようですね』
何故か思い出すのは元妻の言葉。
何故、今更……思い出すんだ。もう何の関係もない相手だ。
あれから何年経った?
遥か昔に離婚した元妻と二人の息子達。
あの時、もしも離婚しなかったらどうなってたんだ?
彼女は情の厚い女だった。きっと俺を支えてくれたに違いない。別れた当初、息子達は幼かった。下の子は2歳だ。
あれから一度も会っていない。
今は幾つになっている? 記憶の中の息子達は幼い姿のままで止まっている。
妻との結婚は見合いだ。
周囲の友人達が次々に結婚していくのを見て「俺もそろそろだな」と思っていた。その頃は付き合っていた女は多いが『妻』にするには今一つ物足りない相手ばかり。
長年の付き合いで『息子』を産んだ後輩は、金を与えていれば問題なかった。本人も窮屈な結婚生活をするよりも自由な生活の方が性に合っていると常々言っていた。
『妻』となった女は、地方の旅館の娘。
意外だった。
親が見合いをさせるくらいだ。どっかの御令嬢だとばかり思っていたからな。
一言で表すなら「平凡な女」だった。
にこにこと笑っている顔が印象的な女だった。「福の神」を思わせる。人の良さが全体から漂う感じだ。
今まで付き合ってきた女達とは明らかに種類が違う。
真面目で誠実。
それだけじゃない。
なんとなく、雰囲気からして違った。それが何なのか分からなかったが、明らかに俺とは別次元の人間だと感じた。
結婚式は神社で行った。『妻』の希望だ。
親族だけの結婚式。
俺の親は『妻』の親族と親しくしようとしていたので少し意外だった。いや、もしかするとコッチにホテルを建てるための下準備なのかもしれない。
一度訪れた妻の実家。
旅館は見るからに古い。
立地は良い。
ここに新しいホテルを建てる事を両親は検討しているのかもしれないな。
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