第39話美咲side

 

「陽向は美咲とコミュニケーションを取りたいんだ」


「はっ?」


「晃司君と連絡が取れなくてね」


「それって……」


「ああ、美咲が心配しているような事じゃないよ。会社の事で色々あって、今大変な状態だろう?だから連絡を取り合うのは良くないってことで……」


 言葉を濁しながら言う早川の祖父。

 何が言いたいのかは何となく理解してる。

 鈴木家の後始末に追われているせいだ。


「詳しくは教えてくれなかったんだけどね」


「……」


 ネットニュースで一部の親戚が夜逃げしたと騒いでた。

 きっとその事の対応もしてんだろう。


 もうどうでもいい。


 気が付けば夜の街をフラついていた。

 誰もいない場所へ、 一人になれる場所へ、 そう思っただけ。別に深い意味はない。ただただ歩いていただけだった。気が付いたら知らない場所に来てた。そこからの記憶はない。ただ最後に見た女の顔がミスコンに優勝した子に似ていた気がする。どうでもいいけど。


 次に目を覚ましたのは病院だった。

 瞼が重くて仕方がない。

 朦朧とする意識の中、早川の祖父に似た声が聞こえた。

 なんだろう?

 祖父よりずっと若い声。でもどこか似ていた。

 その人が怒鳴っている。

 誰を?

 母を……怒鳴りつけていた。

 何て言っているのか聴き取れない。


 親……?

 資格??

 自覚???


 ああ、この人はこう言いたいのか。


 親の自覚も資格もないって――――


 分かってない。

 この人は。

 両親は二人だけの世界で完成されてる。そこに子供である異物は必要とされていなかった。きっと生まれたこと自体が両親にとって間違いだったんだ。っは。私も生まれてくる親を間違えたんだ。


 まあ、もうどうでもいいけどね。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る