第40話陽向side

「お帰りなさい」


 酔っぱらって帰って来た晃司を迎える。何時ものように支えられながら帰って来た。


「いつもごめんね」


 晃司を支えてくれているのは、成田修なりたおさむ君。


 私達の一つ下の後輩で、同じ生徒会メンバーだった。

 それに加えて私と修君は幼馴染。家が近いから小さい頃はよく一緒に遊んだな~~。高校進学の相談にだって乗ってあげてた。修君の家はうちの家と反対でお父さんがいないかったから。「家計に負担のかからない高校ないかな?」って言ってたからね。うちの高校を勧めたんだ。そうしたら見事に特待生の座を勝ち取った頑張り屋さんだ。


 大学に入ってからは疎遠になっちゃったけど、また会えて嬉しい!


 修君が弁護士になってたのには驚いたけどね。



「気にしなくても大丈夫ですよ。元々、帰る方向も同じですから」


「ありがとう、修君」


「先輩、家に着きましたよ」


「う、ん……わがっでいる」


 晃司は相当酔ってる。

 まったく、どんだけ飲んだんだか……。


「分かってませんね。今日も寝室に運んだ方がいいですか?」


「うん。お願いしちゃおうかな」


 修君は何度も家に来ているから何時ものようにお願いする。

 

「はい、任せてください」


 二人の後ろ姿を見つめながら私は少し笑ってしまった。

 何だか懐かしい。学生の頃に戻ったような感覚に襲われる。


 相変わらず面倒見がいい。

 そういえば、修君は晃司の次に生徒会長になってた事を思い出した。特待生が生徒会長になるのは初めてだったとかで当時は結構騒がれていた気がする。しっかり者な処は昔と変わらないなぁ。


 修君は晃司を寝室のベッドに寝かしてくれた。


「それじゃ俺は帰りますね」


「え?お茶でも飲んでいかない?」


「いえ、外でタクシーを待たせてますから」


 そう言うと修君は帰ってしまった。

 修君が帰ったあと寝室を覗くと、晃司が気持ち良さそうに寝ていた。


 これじゃあ、どっちが年上か分からないね。

 晃司は次の日、当然、二日酔いで仕事が手につかなかったみたい。ほんと、しょうがないな。どうせ今日も修君と飲んでくるだろうし、私は友達とディナーに行こっかな~~!


 ストレスのない生活って本当に楽!



 私は自分が思っている以上に浮かれてた。

 だから知らない。

 修君が北海道にいる事も、晃司が苦しんでいる事も、何も――――

 





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