第19話離婚後3
私が傷心旅行に出かけた後、お母様達は即行動に移しました。行動に出た、と言いましても物理的なモノは一切ありません。ただ、「ああいった」方達は自分達に非難の声が上がるだけで精神的にダメージを受けるらしいのです。それは「非難や批判を自分達がするのなら兎も角、される側になったら嫌だから」という、実にくだらない理由によるものでした。「数年間の婚約期間を経て、五年間の婚姻期間。女性の一番輝かしい時期を奪っておきながら、裏切り行為を繰り返していた」「あちらの家から是非にと望まれていたというのに、それを反古にした」「娘の経歴に傷を付けて離婚させた」と遠回しに、茶会やパーティーなどの席で友人にお話しをしたらしいのです。当然、ご友人の皆様方は憤慨なさいました。鈴木家は非難の的になったのです。
お母様曰く、「事実をお話ししただけよ」と言っていました。
鈴木家は、非難を躱したくても出来ません。
何故、と問われればそれは「全て事実だから」でしょう。
五年。
結婚期間としては短くとも、婚約期間を合わせると十年以上の月日があります。その半分以上の年月を裏切り続けて、非難されないと思うほうが変ですわ。
ですが「そんなはずではない」と彼らは言うのです。自分達は悪くないと……。
余りの愚かしさに怒りを通り越して哀れみすら覚える程です。
本当に愚かな方々ですわね。
私は五年間、鈴木晃司の妻だったのです。
それ以前からも婚約者として、社交の場に顔を出していたのですから。
学生時代の恋人が忘れられない。
だから何なんでしょう?
偶然再会した恋人も自分を忘れられないでいた。
それがなんだと言うのでしょう?
やはり恋人と結婚したい。生涯を共にしたい――――自分達を隔てる障害は「妻」。それを取り払いたい。
そんな自分勝手な話に誰が共感するのでしょう?
元夫は私を悪者にしたいようですが、そう上手くはいかなかったようです。
何故、上手くいくと思ったのでしょうか?その辺がよく解らないのですが……。本人達は「望んだ結婚では無かった」「無理矢理結ばれた関係だったんだ」と言っているようですが、鈴木家からの婚約申し込みだった事は有名です。他企業にまで知れ渡っている事実ですわ。
すんなりと離婚を選択しましたけれど、私の名前に傷がついたのも本当です。相手側から望まれて結ばれた結婚だといいますのに、ほんの数年で別れたのです。それも相手の浮気。人によって、私は『捨てられた女性』『浮気された魅力のない女性』と見られてしまっている訳です。
こんな屈辱的なことはありません!
まぁ、そのような事を声高に訴えるような下品極まりないマネはしませんが……。この件に関しては、お父様やお兄様には少々理解し辛いのかもしれませんね。お二人は良くも悪くも合理的な面がありますので……。「浮気した方が100%悪い」「桃子の方が何倍も綺麗だというのに何故あの程度の女を愛人に据えたのか分からないくらいだ」「心配しなくていい。桃子の方が相手の女性より何十倍も優れている」――――という答えが返って来るのは目に見えてます。
私が言いたいのはそういう事ではありませんのに……。
これは女性特有の感情なのでしょうか?
それともお二人の感性の問題なのでしょうか?
その分、お母様は微笑んで私の愚痴に付き合ってくださいましたわ。
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