第2章 逃亡生活編
第9話 砦で迎える朝
マリア母さんとリサと脱出を喜んだあとは、僕が屋敷の監視でマリア母さんとリサが部屋の整理を続ける事になった。
屋敷の様子を千里眼でしばらく見ていたけれど特に問題ある様な動きは無かった。多少は死人が出るかなと思っていたけれど、屋敷で働く使用人は魔力が高いので水魔法をうまく使って火に撒かれる事無く脱出出来て居た。
屋敷を見るのを止めて部屋を見まわしたら、マリア母さんとリサは部屋の片づけの手を止めてこちらの様子を見ていた。大丈夫だよと言うと顔を綻ばせてくれた。
部屋の外に出ると丁度山陰から日差しが差し込む所だった。
鉱山を防衛するために建てられたというこの砦があるのは山間部の街道近くの山の上にあって、鉱山が枯渇した後は価値が無くなり放棄されていた。
周囲には廃坑跡や廃村跡が多数あったが今は無人で自然に溶け込み始めている、大型の獣が何匹か居たけれど、必要な場所は駆除してある。頭か心臓を凍結させると生き物は直ぐに死ぬことに気が付いてから、獣を倒すのに苦労をする事は無くなっていた。
砦から最も近い街の近くの廃村跡に盗賊が住み着いていたけれど、街道の方と行き来しているだけなので放置していいと思った。
新しい生活が始まる記念すべき朝だけど不眠で活動したため眠かった。
ベッドに腰かけマリア母さんとリサの姿を見ている内にいつの間にか眠っていた。
眠りから覚めると外は薄暗かった。
とても長い夢を見ていた気がするけれど内容は覚えて居なかった。
食器が使われて洗われていたので2人は1回は食事を取ったのだろう。
マリア母さんとリサも別々のベッドで寝息を立てていた。
部屋を出て外を見ると昨日日差しを見た場所と同じ山の位置の淵が明るくなっていた。
ほぼ丸一日眠って居て砦に来てから2日目の朝なのだろう。
朝の少し冷涼な空気を胸いっぱい吸い込んでいると、やはり同じ位置から日が昇って来た。
気になって千里眼を使い屋敷の方を見ると屋敷の近くに天幕が張られていて篝火が炊かれていた。
焼け跡から持ち出されたと思われる焦げた壺やら小箱などが一角に置かれていたけれど価値は低そうだった。何らかの曰く付きのものなのかもしれないけれどこんなに焦げたら価値など無くなって居るだろう。
父親は比較的大きな使用人の家で眠っていた。
女と赤ん坊は両親と思われる人の家に居たのでそこが実家なのだろう。
柔らかい感触があったので千里眼を解除すると後ろからマリア母さんに抱きしめられていた。リサもマリア母さんの後ろに立っていた。
こんな朝が来るのをずっと3人で目指して来た。
そしてついに叶ったのだ。
ずっとこのままで居たかったけどお腹がグーっとなってしまった。
マリア母さんが笑い、リサが朝食の準備をするため部屋に戻っていった。
朝食はフワフワのパンケーキにたっぷりと蜂蜜をかけた特別メニューだった。
魔力の回復の為に大量に取っておいた蜂蜜も今後は惜しむことなく消費しても問題無いという事だ。
美味しい朝食を頂いたところで、マリア母さんがここに風呂場は無いのと聞いてきた。
崩れた風呂場跡があった事を思い出したので、それを伝えると見に行くといってリサと出ていった。
千里眼で宝物を隠している廃坑跡と図書類を隠している廃村跡の周囲を探索して問題無い事を確認していたら、風呂場跡とみられる方向から大きな音が聞こえて来た。風呂場跡周辺は結構崩れていたので何か事故でも起きたのかと思い焦って駆け付けた。
そうしたらマリア母さんとリサが風呂場跡の片付けをおこなっていた。
マリア母さんが水魔法で床や壁を洗い流していて、リサが湯舟内に落ちている水を風魔法で吹き飛ばし瓦礫を片付けている。大きな音がする訳だ。
僕も手伝おうと念動力を使って湯舟に溜まった水と大きな瓦礫類を外に放り出した。
風呂場は天井がポッカリと開いてしまっていて壁もかなり崩れていたため、柱の基礎だけしか残っていない状態にしてしまった。
マリア母さんが勢いよく水魔法で湯舟を洗い僕が念動力で捨てるを繰り返すと濁らなくなった、リサが着替えを取るためにと部屋に向かっていったのでマリア母さんが水を溜め僕が熱変化で温めた。
20人ぐらいが一斉に入れそうな大きな湯舟だけれど、マリア母さんの魔力なら余裕でいっぱいに出来てしまう。
瞑想によって一時的に魔力が高くなるだけで時間が経つと元に戻ると思っていたけれど、何度も繰り返す事で少しづつ魔力が少しづつ多くなっていた。
マリア母さんもリサも、若さを保つためと魔力のコントロールが難しくなるというデメリットを無視して瞑想を受け続けた結果、今では貴族並みの魔力を得るに至っていた。大変だと言いながら嬉しそうに魔力コントロールの訓練をする2人はとても楽しそうだったので協力してしまった。
貴族並みの魔力の2人はこの世界では平民や準貴族と隔絶した化け物になってしまっているのだ。
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