1-1-6〜太陽照らす、家族の輪〜

 太陽の光が家の隙間からこぼれ出て、男性の顔を橙色に照らす。

 男性は、眩しさを感じ目を開け、いつものように身体を起こす。

 目線の先にある、棚に飾る剣を見て、

(こんな高価なもの...一体誰の家だ?)

(そして、私は何をしていた?)


「お目覚めになりましたか」

 見に覚えがない、ひげを長く生やした老人が現れる。

 男性は、何が何だかわからず、ぼーっとしていると、老人は、

星命セイメイ帝君ていくんをお呼びします」

(えっ、まさか、あの「最強の神」の従者、星命セイメイ帝君ていくん!!!)


「ああ。お願い」

ーーーーーーーーーー

「お父さん!!!」

 少藍ショウラン汐鸞セキランが、走って父親の元に駆け寄る。

 母親は、子供よりもゆっくりと迫り、

「半年もどこにいらしたのですか...」

「本当に...。でも、生きててよかった...」


「前後はあまり覚えてないが、気付いて起きたら、ここにいて...」

「俺は、さっき星命セイメイ帝君ていくんの説明してようやく理解したんだ」

「そういえば、これ」

 すると、男性は袖から書物を取り出し、少女に与える。

 汐鸞セキランは、

「やった~! 推しの最新刊!!」

「お父さん、ありがとう」

といい、男性に抱き着く。

 

 ひげを長く生やした老人が再び入ってきて、

「お父様お母様、柏麟ハクリン上帝じょうていがお呼びですので、私に着いて来てください」

ーーーーーーーーーーーー

 柏麟ハクリンは、少藍ショウラン汐鸞セキランの弟子入りの状況について母親と父親に詳しく話す。

 続けて、柏麟ハクリンは、

「こちらから、家族四人分の衣食住は提供するつもりだ」

「そなた達も、弟子達と一緒に住みたいであろう」

「だが、そなた達に少し手伝ってほしいことがある」

「まず、資金の調達だ」

「具体的には、これらをすべて売ってほしい」

 すると、柏麟ハクリンは、2人が座っている眼の前に手をかざす。すると金色の粉が舞い降りて、大量の武器が現れる。

 やり、剣、大きな刀、どれも、素人が使うものではないと言わんばかりの彫刻と、神々しさが目立つ。

 柏麟ハクリンは、続けて、

「これらが、無くなればまた別の物を用意する」

「取引先については、星命セイメイがよく知っている」


 男性は、

「私は、端くれの兵士ですが、仲間と共に武器を集めておりました」

「これらの武器はどれも一級品やそれ以上の価値があり、あり得ないほどの値がつくことでしょう」

「しかし、このような大量のお金、家族四人分の衣食住とは到底思えません」

なにゆえにこのようなことを?」


 柏麟ハクリンは、(ほう。なかなか鋭く、物怖じしない。このような性格が子供にも現れているのだな)と関心し、

「それは、門派を創るためだ」

「今の門派は明らかに弱すぎる」

「我は、裏をつたって、総合力の底上げを行うつもりだ」

(また、門派の内通者をあぶり出す狙いもある)


「承知しました」

 

 柏麟ハクリンは、続けて、

「次は、弟子たちの食事を作ることだ」

 星命セイメイは、柏麟ハクリンの横から

わたくし達、神は、食事は必要としません」

「神殿の供物が大量にあるので...」

「調理場所や調理器具は、こちらから調達しておきます」


「そなた達の子供のどちらか『楼主ろうしゅ』になってもらおうと考えているがよいか」


「『楼主ろうしゅ』とは、門派の代表のことですよね」

 

 星命セイメイが答える。

「ええ。そうですよ」

 

 母親は、

少藍ショウラン汐鸞セキラン、が『それでよい』と言っているなら、私達は異論はありません」

「家は貧乏で学校にもまとも行かせてやれず、門派に入ることなど夢のまた夢でした」

「また、私達をお助けいただいた上にこのようなことを...」

「これ以上の幸せはありません」

「深く御礼申し上げます」

「そして、何卒なにとぞ、私達をお使いくださいませ」


 柏麟ハクリンは、

「承知した」

「色々あって疲れただろう」

「今日は、家族で、ゆっくりするとよい」


 星命セイメイは、

「ここは広いですから、探索しても楽しいですよ」

「どうぞ、ごゆっくりと」

「わからないことがあれば、あの老人に話しかけるとよいですよ」

「あっ、結界がありますのでこの神殿外に出ることはないのでご安心ください」

「なお、ここにはトイレもありますので、ご心配なさらず」


 老人は、家族を連れて部屋から出る。


 柏麟ハクリンは、

星命セイメイ

「森林の土地は買っているか?」


「もちろんです」

「ならば、準備は整った」


「今日中に天界での仕事を終わらせるぞ」


「承知しました」

2神は、空へ向けて飛び立った。

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