シグナル

梅林 冬実

シグナル

青から赤になり

赤から青になり


移り変わる様を

どれほどの間 眺めているだろう


深まる秋 見知らぬ街角

ひとり空を仰ぐ私に

声をかける人など誰もおらず

だから私は存分に

秋風に吹かれ 心を溶かす


冬をひとつ迎え

春をふたつ迎え

夏をふたつ迎え

秋をひとつ迎えた私たち


ずっと一緒にいたいって君の言葉を

私は心のどの辺りで聞いていたのだろう



君から離れたけれど

あまり辛くないのは

私が酷い生き方をしているからね

私から離れた君が

辛い思いをしているのはきっと

優しすぎるから


私は君を愛してなどいなかった

甘えさせてくれる君の心を

利用したの

疲れたとき 苦しいとき 悲しいとき


君の心は広く柔らかで真白で

居心地がいいから

つい長居してしまって


体を重ねようとしない私に

何を言うこともなかったね


私の気持ちに本当は

気が付いていたんじゃないの なんて

君を傷付けると分かりきったことを

最後に口にした私に それでも君は

笑顔を浮かべることを忘れなかった


引き攣れた 苦し気な


どんなに私を愛しても

私が君を愛することはないよ


どこかで伝えればよかったのかな

だってさ 君は

私さえよければそれでいいって

きっと言ってくれたでしょ


信号が青に変わる

横断歩道の手前にいる私を暫し待ち

イラついたように通り過ぎるドライバーを

何人見送ったろう


私はこうして秋風に吹かれながら

君のこれからを考えているの

私がいなくなった空間を君は

何で埋めようとするのだろうって


私が君を愛することはなかった

信号が赤に変わる

私が君を愛することはなかった


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シグナル 梅林 冬実 @umemomosakura333

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