第18話 幻影魔法です!

☆☆☆ニョーイ


こうしている間にもスカートがもぞもぞしている。


「お、落ち着こうオリビエ君。き、君は今トイレに行きたいと言ったね?」


「は、はい……実は結構前から我慢していまして……うぅぅぅ!」


かなり我慢していたんだな。ずっとスカート掴んでいるし。


「その辺でしてくるというのはどうでしょうか? 僕達は目隠ししていますので」


「そんなことできるわけないよ! トイレでしないと恥だよ! 臭いとか……漂いそうだし! そしたら死ぬし! 恥ずか死ぬ!」


「それについては心配ないよオリビエ君。この場所は大変不衛生で臭いなんて気にならないだろう。恐らく悪臭は悪臭によって掻き消される」


確かに……この場所は衛生環境が終わっているので、今更用を足したとしても何も変わらない。


でも、オリビーが気にしているのはそういうことじゃないのだろう。僕達に見られるのが嫌なのだ。


何より僕が見たくない。


「そういう問題ではなくて……うぅぅぅ……どこかトイレを……トイレ……」


「先に進めばお手洗いが見つかるかもしれません!」


「え……ここのトイレ使うの……」


こうして僕達は内股のオリビーに合わせながらゆっくりと歩きそして……


「あ、あ……お手洗い……」


古く使われていないお手洗いが見つかる。ボロボロであり個室の扉も外れかかっていた。


「ティアちゃん……個室まで一緒に付き合って……でも見ないで耳を塞いでいてほしい! これ絶対個室に入った途端。上から出てくるパターンだから! あぁ、考えただけで……うぅぅっ!」


漏れそうになるのか股を抑えている。


「え、いや、流石にそれは……いくら友達でも……」


個室の中に入りたくないよ。異性だし……


「わ、私が付き添おうか?」


「カノン様!?」「カノン先輩!?」


「ちょうど私もトイレに行きたいところだったのさ、だから一緒の個室で……ティエラリア君もどうだい?」


あ、カノンもトイレに行きたかったのか……


「僕は遠慮しておきます。膀胱に限界は訪れていませんので、お二人でどうぞ」


即答した。


「そうかい、ではオリビエ君行こうか」


「は、はい……緊急事態。緊急事態なんだ……カノン先輩と一緒の個室に入ってしまうなんて……うぅ……でも一人よりはマシだ……」


こうして二人は一つの個室に入っていった。


「先にオリビエ君からでいいよ、私は後ろを向いているから」


……耳は塞いでおこう。すると……


「あぁ……ようやく解放されるぅ……」


……おや、魔力の気配が……これは……


「お二人共、恐らく数秒後に幻影魔法と幻聴魔法が展開されますよ」


「「え!!!!!」」


「えっと、この魔法は恐らくお二人の頭上から、不快な音と共に人型の幻影魔法が展開されますね」


「え!? 今最中なんだけど! ティアちゃんどうにかできないの!? え、トイレしているタイミングでお化けが出てくるの!」


「幽霊ではないですよ。幻影魔法です!」


「お化けだよ……あ、恐怖で震えてあぁぁぁ!」


一体個室では何が起きているのだろうか……考えたくもない。


「わ、私の番まだなのだけど、どうしたらいいんだね! ティエラリア君! 得意の魔法解除を使ってみてはどうだろうか!」


「幻影魔法ですからダメージがないですのでスルーすれば良いだけですよ。間違っても幻影魔法に排出物を掛けたりしないでくださいね! 貫通しますよ」


「「できるかーー!!!」」


すると、二人が入っている個室の隣にも人影を感じた。ふむ、これが幻影魔法か……


「僕ちょっと隣のお手洗いに入ってきますね!」


「え……ティアちゃんちょっと待って……」


『嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼……』


オリビーでもカノンでもない声が聞こえてくる。これが幻聴魔法か……


「ぎゃあああああああ! 出たぁぁぁ! トイレ途中だけど出ます! あれドアが開かない! 助けてぇぇ!」


「ダメだよオリビエ君! 全部出し切らないとその場が大変なことになるから!」


「多分ですけど内側から魔法障壁が欠けられているのだと思います! 僕も個室に入って幻影魔法が出てきたところなのでちょっと観察してますね」


幻影魔法で作られた青白い人型の霊。黒髪は長く白い服を着ている。頭の方を見てみると解剖されたような縫い跡が見受けられた。


人体実験の被験者という噂もあながち間違いではないだろうか……しかし、この幻影魔法よくできているな。僕でも作れるだろうか……真似して作ってみようか……


「『コピー・イリュージョン』」


『嗚呼嗚呼嗚呼……』『嗚呼嗚呼嗚呼……』


出来た。同じ幽霊モドキを向かい合わせる。


ガタガタガタガガタッ!


「あなたは意志を持っていますか?」


幻影魔法の幽霊に問いかけるが……


「……」


やはり返事はないか。


「ティアちゃん! お化けが、お化けがぁ! 近づいてきてるよぉぉぉ! 助け――」


「――今幻影魔法と会話中ですから少し静かにしてください!」


しかし、肝心の魔法師はどこにいるのか、いや、もしくはこの場所に踏み入れたら発動する罠かもしれない。既に死亡している可能性もあるか……


それこそ、被験者の無属性魔法師が生前に作った罠であるとも考えられる。


だとしたら、ここはニコラス・ロストベルタの研究所である可能性が否定できない。


ここにはもしかしたら世間に公表されていない資料が存在しているのだろうか……


「あぁぁぁぁぁぁ! 『オール・ライトニング!』」


すると、オリビーの光魔法がこちらにも来る、そして幻影魔法で作られた幽霊が全て消え去った。


「せっかくの幻影魔法がもったいない……かなり良く作られていましたのに」


「オリビエ君最初からそれ使えば、解決だったのではないか?」


「怖かったから……」



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