第17話

 数日後。俺らが負けた相手が優勝した。だけど、『相手は強かったんだ。負けるのは仕方がない』なんて思えるはずがなかった。

 悔しい。とにかく悔しい。

 もしあそこで勝てていたら、俺らが優勝していたかもしれない。だってあんなにいい試合をしていたんだから。

 そんな思いで俺の胸はいっぱいだった。

 そんな中、鮫島から一件のメールが来た。

[今週の土曜日、引退式あるからお前も来いよ]

 引退式。俺はどんな面を下げて、みんなに会えばいいのだろうか。

[怪我したことは気にすんな。お前だってチームメートなんだから。みんな待ってる]

 鮫島の言葉はいつも俺を救ってくれる。本当に良い相方だ。


「母さん、俺、土曜日に引退式に行ってくる」

 母さんは少し驚いたようだった。怪我をしてから部活に行くのを嫌がった俺が、引退式に顔を出すなんて言ったらそりゃ驚くだろう。

「あら、そうなのね。それなら、土曜までにそのボッサボサの髪、どうにかしときなさい」

 母さんはテレビから目を離さずにそう言った。

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