第12話

 色々と考えていると気づけば交差点の前に来ていた。まだ朝早いというのに、小さな男の子の笑い声が聞こえてくる。

「ママ~!! くるま~~!」

 男の子は目の前を通る車たちに、目を輝かせていた。そんな姿に俺がほっこりしていた、束の間の出来事だった。

 男の子が突然、道路に飛び出していったのだ。

 危ない。

 そう思った時には、もう俺の体は動いていた。

 俺は、男の子を歩道側に突き飛ばした。だけどその勢いで、俺の身は車道に放り投げられた。



 腕の痛みに目が覚めると、俺の身体は灼熱のアスファルトの上にあった。

「救急車ー! 救急車を呼べーー!」

「君、大丈夫か? 救急隊、すぐに来るからな。」

 ざわめく大人たちの声の中に、男の子の元気そうな泣き声が聞こえる。

 良かった。

 安心すると、俺の意識はアスファルトに溶けて行った。

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