年下の幼馴染に迫られて  -おぱんつせんき 当然負けたのは俺でした-

青空のら

年下の幼馴染に迫られて -おぱんつせんき 当然負けたのは俺でした-

『ねえ、ママ。どうしたら直人に好かれると思う?』




 ――保育園年長  直人13歳中学生

「直人! 男の子って、女の子のパンツが好きって本当?」

「えっ!? いや、まあ、そうだけど。いきなりどうしたの、真白?」


 昼飯を食べ損ねていたので遅めの昼食として公園で真白の相手をしながら、合間を見てパンを食べようとしていた時だった。

 突然の発言にパンを口に運んでいた右手が止まった。食べかけた口を半開きにしたまま受け答えをする俺は傍目にはさぞかし滑稽なんだろう。

 夕方にも近い時刻に公園で幼女が"パンツ"と大声で叫ぶのは異様な光景だ。辺りからの視線が怖い。

 悪気のない真白がニコニコしながら両手で自分のスカートの裾を持つとそのまま捲り上げた。

 スカートから可愛いくデフォルメされたクマさんが現れて"こんにちは"する。お尻側にはクマさんのお尻が描かれているのだろう。見なくても想像がつく。


「はい! これでいいかな? パンツ見えた? 興奮した? どうだった? 真白可愛い?」

「ゔっふぉ! 早く手を下ろしなさい」

「ええっ? 何で? 男の子にパンツ見せたら興奮するって言ってたよ」


 パンで良かった。牛乳を飲んでいるタイミングだったら大惨事だった。

 納得していない真白が頬を膨らませて拗ねている。

 無理矢理真白の手を掴んで下におろす。真白の手に握られていたスカートも自然と下におりる。

 下手に放っておいたら、幼女にイタズラしている変質者として警察に通報されて連行されるぞ。まだ犯罪者にはなりたくない。

 クマさんパンツで興奮してたなんて不名誉は御免被りたい。


「真白、男の子がパンツ好きだって、誰から聞いたのか教えてくれるかな?」

「うちのママだよ。男の子はパンツ好きだから見せたら一発でコロリと落とせるって。直人を落としたいなら本人の前で見せなさいって」


 予想通りの答えが返って来た。母の末の妹の和子おばさんの仕業だった。ほくそ笑んでる姿が目に浮かんでムカついた。いたいけない甥っ子を弄んで何が楽しいんだか。挙句に自分の娘まで道具として使うなんて悪質な親だ。


「あとね、直人に言っておけって言われたよ『10年後に後悔するから真白にしておきなさい。放置しとくと他の男の所に行っちゃうわよ』って。直人は私の事嫌い? 私は直人の事好きだよ」


 真剣な顔でされる女の子(幼女)からの告白。俺だって邪険にする気はない。けど歳の差がありすぎる。真白年長組、俺は中1実に7歳差。従姉妹である真白は彼女が生まれた時から知っており、時には彼女のオムツ替えを手伝った事もある。

 10年後、確かにこのまますくすくと育てば美少女に育つだろう。それでも15歳、微妙にアウトだ。

 20年後? そんな先の事はわからない。


「ありがとう。俺も真白の事は好きだよ。兄として――」

「やったあ、両思いだね。結婚だね。いつにする? 明日? 明後日? ねえねえ、直人いつにする?」

「真白、結婚っていうのはね、大きくならないと出来ないんだよ。結婚出来る位に真白が大きくなって、その時にまだ俺の事を好きでいてくれたら結婚しようね」

「やったあ、真白早く大きくなるね。結婚出来るくらい大きくなるんだ。明日かな? 明後日かな?」

「――もう少し先かな。ずっとずっと先だね」

「わかった! 頑張って大きくなるね。それまで浮気しちゃ駄目だよ。浮気する男は最低だってママがいつも言ってるよ。直人は違うよね? それとも浮気するの?」


 真白は今にも泣きそうな顔をしていた。女を泣かすのは男のする事じゃない。相手の希望する言葉を与えるのは嘘ではなくて思いやりだ。真白も成長したらわかる日が来るだろう。


「しないよ。浮気なんてしない。約束する」

「わーい、約束だよ。指切りだよ。嘘ついたら針千本なんだからね」


 真白の無邪気に喜ぶ声が夕暮れの街に響いていく。

 周囲から妹の相手をしてあげている優しい兄として、微笑ましく眺められてるのが彼らの眼差しと微笑みで感じ取れた。



 ***



 ――小学生3年  直人16歳高校生

「直人! ピンクと白とどっちが好き? 白だよね? 今日のパンツは白だよ!」


 朝の登校準備を済ませた真白がいつものようにランドセルを背負って姿を現した。気にせずにパンを口に運ぶ。

 無視されたと感じたのか真白が叫んだ。


「直人! きちんと見ないと駄目だよ。はい! どう? 興奮する? 真白で興奮した? 見せるのは直人にだけだよ」

 真白がニコニコしながら自分のスカートを持ち上げお尻を見せた。


「はいはい、可愛いよ。早く手を下ろしなさい」

「もう! こんな美少女のパンツ見れて幸せでしょう? 幸せじゃないの? 不幸なの?ええっ? 何で? 真白の事嫌いなの?」


 もう恒例になっているので何も感じなくなっており、淡々と答えた。

 真白が頬を膨らませて拗ているのも恒例の事だ。

 ただ、クマさんパンツとかを履いていたのが、今流行りのキャラクター物『キュアキュア』に変わっているのは成長を感じられて感慨深い。


「ああ、真白みたい美少女のパンツを見れて俺はなんて幸せ者なんだ。死んでも悔いなし」

「直人に死なれたら困るよ。死なないで直人。真白をお嫁さんにするまで死んじゃダメだよ」


 もう何度目かの恒例のやり取りなのに、真白が真剣な口調で言う。

 すっかりと持ち上げる事を忘れられたスカートは元の位置まで下がっていてパンツは見えなくなっていた。



 ***



 ――中学生1年  直人20歳大学生

「直人! 直人! 勉強教えて!」


 ガチャっと玄関の扉が開いたかと思うと、いつものようにパタパタと音を立てて真白が階段を登って来た。


「真白、ちょっと今日は――」

「今日は何なの、直人? どうかした? 女物の靴有ったけど浮気? 浮気は駄目だよ。絶対に許さないんだから」

「あら、可愛らしい。妹さんかしら?」


 ノックもせずに部屋の扉を開けた真白と同じゼミの中島さんの視線が合った。

 火花が散った気がした。気のせいだと思いたい。やっとの事で自宅に誘えたのに真白の存在を完全に失念していた。


「お姉さん誰? 直人の何なの? 真白は直人のお嫁さんだよ。いいでしょう! だから直人と浮気なんて駄目なんだよ」

「あらあら、そんな話は聞いていなかったからびっくりしちゃうわね。そうでしょう、直人君?」


 ゆっくりと振り返ってこちらを見る中島さんの目は笑っていなかった。その眼光にちびりそうになる。


「直人にパンツ見せてもいいのは真白だけだからね。はい、直人! 直人の好きな白いパンツ。今日はフリル付きだよ」

「あらあら、仲の良い事。私お邪魔な様だから失礼するわね。あっ、安心してね。直人君がロリコンだなんて口が裂けても他の人に言わないから。じゃあ、失礼するわね」


 真白が左手でスカートを少し持ち上げてチラリと白いパンツが見えた。

 白さに眩暈と絶望を感じていると真白の姿を見た中島さんは不穏なセリフと共に後ろを振り返らずに部屋を出て行った。

 誘ってから部屋まで来るのに一月掛かったというのに全ての努力が水の泡になった。


「ああ、直人、残念そうな顔してる! 浮気する気だったんだ? 真白というものがありながら。遊びだったんだね? 結婚の約束は? 針千本飲ますからね! 絶対に許さないんだからね」

「そ、そんな事ないよ。わからないところがあるって言うから勉強会してただけだよ?」


 プリプリとする真白を宥めた。姉妹というだけあって真白の口から和子おばさんに伝わった事は瞬く間に母へ伝わってしまう。

 そして俺の頭に拳骨が落ちる。女の子を泣かせるのは最低の所業だと。

 うむ、いまいち納得出来ないがパンツ拝観料として無理矢理納得するしかない。


「ふーん? 本当かな?」

「俺が真白に嘘ついた事あったか? 無いだろう? 俺は真白一筋だから」


 大嘘である。真白中学1年13歳、こちらは大学生20歳。どう見ても犯罪です。ありがとうございます。本気で恋愛してると語った時点で頭のおかしい犯罪者確定だ。

 せっかくいい感じになりそうだった中島さんにも逃げられて途方に暮れる他なかった。



 ***



 ――中学生3年  直人22歳大学生

 あれから10年弱、真白は立派に可愛く美人に育った。確かに後悔するとの和子おばさんの予言は当たっていた。母親の直感侮りがたし。


「直人! 今日の夕ご飯はシチューだよ。好きだよね。私とどっちが好き?」

「真白、今日は彼氏とのデートだったんじゃなかったのか?」

「映画観たらすぐに解散したよ。どうかしたの?直人も見たかった? 一緒に観に行く? イマイチだったけど直人とだったらもう一度観てもいいよ」

「彼氏ほっといて大丈夫か?」

「彼氏じゃないよ、ボーイフレンドだよ。年頃の女の子はボーイフレンドの一人や二人くらいいてもおかしくないってママが言ってたよ」


 どこまでも忍び寄る和子おばさんの影。親娘関係が良好な証とはいえ、どうなんだろう? 悪影響しか与えてない気がするんだが。


「どうかしたの? 直人元気ないよ? 病気? 熱でもある? 病院に行く?」

「いや、大丈夫だ。ちょっと考え事してただけだ」

「元気ないなら真白のパンツ見る? はい! どう? 元気出た?」


 真白が右手でスカートの裾を持つと、パンツが見えるギリギリまで持ち上げた。

 うーん、ギリギリ見えてる。白黒のストライプのパンツ、いやパンティ。ご馳走様です。


「チラッと見えるのがいいんだって、ママが言ってたよ。全部見せちゃうと逆にテンション下がるんだって。男の子って難しいんだね」

「いつも言ってけど、年頃の娘がする事じゃないからね。そんなにポンポン、パンツを見せるものじゃありません」

「違うよ。簡単に見せたりしてないよ。直人にだけ見せてるんだよ。嫌だった? パンツ嫌い? 真白の事嫌いなの?」

「いや、好きだよ。大好きだよ」

「良かった。直人がパンツ好きで。もっと見る? ほら、どう? 興奮する?」


 真白が右手を3センチほどさらに上げた。

 どさくさ紛れの告白をスルーされる悲しさ。パンツ好きの大人がここに一人。



 ***



 ――高校生3年  直人25歳社会人

「直人! お帰りなさい。ご飯とお風呂どっちにする? それとも私?」


 家に帰るとパタパタと真白が奥から出て来た。もはや出入り自由、第二の我が家として傍若無人の振る舞いをしていた。

 とはいえ、夕ご飯を作り、勉強して帰るだけなので両家の親は微笑ましく見守るスタンスを取っていた。パンツ連呼で直人に迫る事を含めて親公認だった。


「真白、ただいま。いつもありがとう。腹減ったよ、今日のご飯は何かな?」

「今日は特製トマトカレーだよ。真白の愛情たっぷり入ってるからね。嬉しいでしょう? 遠慮しなくて良いんだよ。照れて可愛い。そんな直人も好き。はい。今日のパンツはレース柄だよ」


 一瞬だけ、瞬きすると見逃しそうな程の僅かな時間、制服のスカートの裾から白いレースらしき物体が見えた。

 年々露出度が減ってきているのは恥じらいを覚えた真白の成長を喜ぶべきなのか、鑑賞に耐えうる年代になったおパンツを眺める事の出来ない残念さとの狭間で複雑な気持ちになっていた。

 男だもの仕方ないよね。可愛い子のパンツが見えるなら見てしまう悲しい性。



 ***



 真白がパンツと口に出さなくなって数日が経った。最初は体調でも悪いのかと心配したが、夕食を作り、勉強して帰るのは普段と変わらなかった。


「どこか具合悪いのか?」

「そんな事ないよ? 直人、心配してくれてるの? やっぱり優しいね。真白は大丈夫だよ」

「何か悩み事でもあるのなら俺でよかったら相談に乗るからな」

「悩み事? ない事はないけど、心配しないでいいよ。大丈夫! 直人には無理だから自分で解決するね」


 ぐふっ! サラッとディスられて俺のガラスのハートは粉々に砕かれた。多分真白は無自覚に発言しているだけに余計にタチが悪い。


「そうか? ならいいんだけど。真白の手に負えないようなら遠慮しないで俺に言えよ。相談に乗るから」

「ありがとう、直人。他の女にも優しくしちゃ駄目だよ。勘違いして大事になるからね。もちろん真白は負ける気ないけど」


 真白は一体何と戦おうというのだろう? 少し心配になってきた。


「なら安心した。最近パンツ見せてくれないから――」

「――直人、女の子にパンツ見せてとか言っちゃあ駄目なんだからね。立派なセクハラだよ? 直人の事だから無自覚で言ったんだと思うけど、街中で言ったりしたら警察に捕まっちゃうよ? 気をつけてね」

「!?」


 いやいや何を言ってるのか意味がよくわからない。混乱する俺を置いてけぼりに真白が続ける。


「まあ、真白と直人は幼馴染だから際どい発言も許してあげるけど、真白が嫌がったらセクハラだからね、覚えておいてよ。次はないよ。うっかりで済んだら警察はいらないからね」

「――ああ、すまなかった。今後気をつけるから許して欲しい」

「真白は寛大だから許してあげるよ。女の子にパンツ何色? って聞くのもセクハラだからね。許されないからね。直人、気付けて」

「――忠告、心に刻みつけておくよ。まだ警察のご厄介になりたくないしね」

「うんうん、直人の素直なところ、真白大好きだよ。ところで――」

「まだ、何かあるのかな?」


 話を消化しきれていない俺は早く真白との会話を打ち切りたかった。

 数日でまさか扱いがここまで酷くなるとは思ってもみなかった。

 これが思春期の娘に嫌われる父親の気持ちなのか――


「真白の大事な所を見た責任は取る気あるのかな、直人? 逃げるのかな? 男なら責任取るよね、直人」

「ゔっふぉ」


 不意打ちを喰らって、よだれまで飛び散る。汚いな、もう意味不明で訳わからないぞ。見せつけられるパンツを拝観してたら責任追求されるとはとんだ美人局だ。


「男性で見たのはお父さんと直人だけだからね。きちんと責任取るよね、直人。見るだけじゃなくて触ってるんだから言い訳出来ないよ、直人。ママは証言してもいいって言ってるよ」

「えっと? パンツの話だよね、真白?」


 恐怖と共に恐る恐る真白に問い掛けた。


「ううん、真白の大事な所だよ。身動き出来ない真白を押さえ付けて触ったよね、直人? 覚えてないとは言わせないよ。逃げられないんだからね」

「――ちなみにいつな話かな?」

「忘れちゃったの? 真白と直人の初めて出会った日の事だよ」

「――ああ、なるほど」


 確かに記憶にあるわ。真白との初遭遇。

 その日、初めて従姉妹にあえるとワクワクして遭遇した未知の生き物、赤ん坊。

 えんえんと泣いて泣き止まずにオロオロしていたら、和子おばさんが

『オムツ替えるの手伝ってくれる?』

 といい放ち、無理矢理手伝わされたのだった。

 ウンチまみれのお尻をウェットティッシュで拭き取り、女の子だからきちんと細部まで拭き取りなさいと理不尽に怒られながら綺麗にしたのは、記憶の底に沈めていた黒歴史。

 オムツ替えして気持ち良くなった真白はその後、きゃっきゃ、キャッキャと俺の髪を握りしめて上機嫌だった。

 そうだとしても、それは性的な意味合い全くないからノーカンだよな?

 第一、真白には記憶ないはずだよな? 和子おばさんの差し金か!?


「真白? 赤ん坊のオムツ替えはノーカンじゃないかな?」

「あっ!直人責任取らないつもり? そんな男だなんて思いもしなかった! それだけじゃないし――」


 真白の意味深な言葉に記憶を辿る。うん、やましい事は何一つない。俺は潔癖だ。


「真白が初潮迎えた時に、やり方よくわからなくて戸惑ってたら手伝ってくれて生理用品を取り付ける時に見たよね。言い訳なんて男らしくないぞ。責任取るよね、直人!」

「ゔっふぉ」


 確かに記憶にございます。言い訳は――させてくれそうにないな。

 あの日、突然の出血でスカートを汚して狼狽える真白。その場にしゃがみ込んでしまった。

 俺は手持ちのタオルで真白を包んで抱いて家まで連れて帰り、その後、和子おばさんが不在だった為に親代わりとして生理用品を買い出しに行って真白に使わせた。

 純粋に困っている真白を助ける為で下心も不粋な気持ちも全く無かった。信じてくれ。

 和子おばさんか、母の帰りを待つ手も有ったかもしれない。しかし泣いている真白を放っておくことは出来なかった。


「あの時、血で汚れるのも気にしないで真白の手当をしてくれたんだよ。普通の男の子なら戸惑って手出ししない事なんだよ。直人だけなんだよ。凄いんだよ」

「勘弁してくれ、思い出したら恥ずかしくなってきた」

「綺麗にタオルで身体を拭いてくれた後に、下着とスカートが汚れないようにって買ってきたナプキン取り付けてくれたけど、反対だったよね。逆だった。身体の方につけるんじゃなくて、パンツの方につけるんだよ。直人も間違えるんだなって安心したよ。詳しいのもなんか嫌だったし、本当に安心したよ」


 褒められているのか貶されているのかよくわからない微妙な気持ちにさせられた。

 無意識にディスってない?


「それで責任を取れと? 具体的な責任って何かな?」


 彼氏になれっていうのなら気が済むまで付き合ってあげても痛くも痒くもない。むしろ美少女に育った真白と付き合えるなら、ご褒美かもしれない。嬉しくないわけがない。

 妹に近い気持ちしかないと自分の気持ちを誤魔化しているが、俺も真白の事は大好きだ。


「えっ? 何言ってるの? 刑務所にでも入る? 嘘つきは泥棒の始まりだよ。結婚だよ。結婚の約束したよね? 直人、真白をお嫁さんにしてくれるって言ったよ。嘘だったの?」

「結婚は大きくなったら――」

「真白、先週誕生日迎えたから結婚できるよ。してくれるよね。でも、まだプロポーズされてないよ。プロポーズは? ねえ、プロポーズは?」


 言われてみれば真白がおパンツを見せなくなったのは真白の誕生日後すぐだった。言われるまで気付かなかったのは迂闊だった。

 となると、この流れは仕組まれていた可能性が――


「ママもおばさんも、真白と結婚する為に立派な会社に就職したのを評価してるから許すって言ってた。真白の為に頑張ってくれてて嬉しい。あとはプロポーズだよ? してくれないの?」


 なる程、どおりで大学受験、就職活動の時に『真白の為にも頑張らないと駄目でしょう?』としつこく言っていた訳だ。

 情けない姿を見せるな、という意味で受け取っていた俺が馬鹿だった。

 真に受けて頑張ってた自分が可愛く思えてしまう。


「いやいや、おじさんは真白の事大事にしているから反対――」

「うんとね、お父さんは大賛成だって。どこの馬の骨ともわからない奴に奪われるくらいなら直人の方が安心だって。というか、直人以外は許さないって言ってる。家もお隣さんだしね」


 可愛い顔してしっかりと外堀を埋めにかかるとは恐るべし真白。手玉に取られていたのは俺の方なのか?

 腹を括ってプロポーズの言葉を考える。

 ベタなプロポーズでも俺たちの関係なら大丈夫だろう。


「真白、大好きだ。俺と結婚して、毎日パンツを見せてくれ!いや間違えた。手料理を食べさせてくれ!」


 うっかりと本音がこぼれた。すぐに反応すると思っていた真白からの反応が無く、不安になる。

 そして、耐えきれない程の沈黙の後に真白が口を開いた。


「浮気は絶対に厳禁。許さないから。料理はもちろん毎日作るよ。愛情たっぷり込めて。お残しも厳禁だからね。あと、もう真白からパンツは見せないよ。絶対に駄目」

「えっ!? いや、はい――」

「だから今日からは旦那様が真白のスカートめくるんだよ。よろしく直人。大好きだよ」


 助走をつけた真白が俺の胸めがけて飛び込んで来た。





『ふふふ、やっと直人を捕まえたよ!』

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