第50話 これってちょっとした混入なのでは????
早押しクイズも三問目に差しかかりました。
どうやら最終問題っぽいんですけど、魔法人格が定番のルールを説明してくれました。
『最後の問題は、ポイント十倍です!』
はいはい、たとえ一問目と二問目を正解してポイントを稼いだとしても、最終問題を正解した人が優勝というやつですね。
バラエティ系のクイズ番組だと定番の流れですね。
一発逆転要素であり、かつ最終問題まで視聴者に楽しんでもらうための工夫です。
さぁどこからでもかかってきなさい、魔法人格。おもしろおかしくボケた解答をしてあげますよ。
『時間差問題です。さきほど食べたコロッケの具材を正確に答えてください』
ふーむ、ボケる以前に、コロッケ食べたの一週前の更新だから、正しい答えを忘れちゃいましたね。
しかもレモネードを飲んだせいで、味覚に残っている素材の味も消えていますし。
記憶を手繰り寄せてみると【じゃがいも、ひき肉、とうもろこし、にんじん、たまねぎ】のように感じます。
せっかく私が正しい答えを思い出してからボケようとしたのに、その前に元学長の魔人がぴぽんっと解答ボタンを早押ししました。
『じゃがいも、ひき肉、とうもろこし、にんじん、たまねぎ』
あ、ズルイ! 元学長の魔人が自分で調理したんだから、コロッケの材料覚えているに決まっているじゃないですか。
っていうか、そういうハメ技ですね、これ。
クエストのボスキャラが、自分に有利な問題を魔法人格に出題させるっていう。
しかもわざわざレモネードを提供することによって、冒険者の味覚に残っていた素材の味を洗い流したんですよ。
いやー、腹黒であるはずの私が、こんな初歩的な手に引っかかるなんて。ちょっと油断しましたね。
配信のコメント欄もバッシングの嵐ですよ。
『ずるいぞ魔人』『ちょっとしたチートじゃないか』『さすがボスキャラ汚い』『でもユーリューたちが負けるところはちょっと見たい』『それな』
なんてふざけた視聴者層でしょう、私たちの敗北を望んでいるなんて。
まぁお笑い路線で売っているのは他でもない我々なので、こういうリアクションをされた時点で勝ちっちゃ勝ちですけどね。
と、私たちが敗北する流れだったのに、展開がおかしくなりました。
元学長の魔人の解答に対して、魔法人格がこう答えたんです。
『不正解です。主さまは、この問題に対して解答権を失います』
元学長の魔人は、ビー玉みたいに目を丸くしました。
『ええっ……? ワシ、ちゃんとレシピ通りに作ったけど……? ここにレシピもあるし』
おや、ちょっと雲行きが怪しいですね。
配信のコメント欄でも、推理が始まりました。
『入れ忘れた材料があるとか?』『もしくは無意識で余計なものを入れた』『あるいは入れる材料を間違えたパターン』『まさか、禁断のキノコとか……?』
やめてくださいよ、実は幻覚の見えるキノコが入っていたとか、そういうのは。
他でもない元学長の魔人が、キッチンのゴミ箱に残っている残骸を調べて、とんでもないことを言い出しました。
『おや、こんな材料使ったっけな、ワシ?』
ちょ、ちょっとまさか本当にヤバいキノコが入ってるんじゃないでしょうね!?
こんな状況なのに、魔法人格が私に解答を急かしてきました。
『ユーリューさん、コロッケの材料をお答えください。早くしないと時間切れで不正解になって、クエスト失敗になりますよ』
んまぁ、元々クエストを失敗しようとも、ボケまくって視聴者をゲットすることが目的だったので、時間切れになることはどうでもいいんですよ。
それよりボケられる機会がなくなるのが困りますね。
というわけで、配信のコメント欄を盛り上げるためにも、視聴者の解答を拾ってボケておきましょうか。
「禁断のキノコ!」
『正解! 冒険者パーティーの勝利です!』
正解しちゃった!?
正解したらマズいでしょうが、いろいろな意味で!
もしかして私がいま見ているこの風景も幻覚なんですか?
元学長の魔人が、材料倉庫のストックを調べたことで、コロッケに混入した素材に気づきました。
『いかん。とうもろこしと間違えて、黄色いキノコを使ってしまった』
やっぱりキノコ!!!!! 医者を呼んでくださーい!!!!
***CMです***
帝国政府から医療広報です。近年、山菜取りなどで、食用キノコと毒キノコを間違えて食べてしまい重症になるケースが相次いでいます。
専門の知識がない素人は山菜には手を出さないでください。
見た目がそっくりでも中身が違うことがよくあります。以上、帝国広報でした。
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