第47話 力こそパワー
最後の挑戦者は、武道家のシーダさんです。
彼女は生まれながらの身体能力が高いわけですし、うちのパーティーでは一番レベルが高いわけですし、もっとも成功率の高い挑戦者といえるでしょう。
ただし彼女が、どんなスタンスでSASUKEェ的なアスレチックに挑むのか、まったく読めません。
なぜならシーダさんは、自由奔放だからです。
私の指示なんて無視するし、自分のノリをもっとも大切にしていますし、元学長のオヤジギャグだって一切興味を持ちませんでした。
彼女に常識なんて言葉は無意味でしょう。
そんな彼女が、どうやってSASUKEェ的なアスレチックに挑んでいくのか?
ふんふんっと肩と太ももを叩いてから、スタートラインに立ちました。
「力こそパワー……!!」
わけのわからないことを言いながら、軽快にスタートしました。
おお、さすがレベル五の武道家、走行フォームが綺麗だし、スピードも申し分ないですね。
とはいえ、どれだけ素早くても、丸太橋でバランスを崩したら、水たまりに落下してしまうわけですよ。
私は運動オンチだし、僧侶のレーニャさんは補助魔法で俊敏性を高めたのが逆効果になったし、戦士のアカトムさんは配信者として真面目すぎました。
そんなパーティー状況であっても、シーダさんには秘策があるみたいですよ。
「ジャンプ力もパワー……!!」
それってどういう意味ですか? と思ったら、おーっと大ジャンプしました!
なんと丸太橋の上を走るんじゃなくて、大ジャンプで飛び越えてしまったんですね。
これには解説の魔人さんも大興奮です。
『こんな突破方法、普通の身体能力じゃ考えられない。もしや彼女は天才か!?』
いろいろな意味で天才(ジーニアス)です。身体能力が高いだけじゃなくて、常人では思いつかないような行動で周囲を驚かせるので。
それぐらいの問題児だからこそ、あんな化け物じみた身体能力があるのに、うちみたいな弱小パーティにいるとも言えますが。
それはさておき、次は第二障害である
こちらのアトラクションの外見ですが、読者の脳内イメージを借りれば、小学校や校庭に遊具として置いてあったはずです。
はしごみたいに鉄の棒が並んでいて、そこにぶら下がりまして、前の棒を掴むことで、次々と前進していくやつですね。
そう、手でぶら下がって進むはずなんですよ、本当は。
でもシーダさんに常識は通用しないので、いきなり雲梯の上に飛び乗りました。
「スピードもパワー……!」
と、またもやわけのわからないことを言いながら、雲梯の縁を足場にすると、真っすぐ走り抜けていきます。
うーん、雲梯なのに手を使わずに攻略するなんて、やっぱり彼女は天才(ジーニアス)ですねぇ……。
解説の魔人さんも、目玉が飛び出しそうなほど驚いていました。
『た、たしかにワシは雲梯にぶら下がってクリアしろとは一言も明示していない。なんてことだ、あれはまさに発想の勝利だ』
発想の勝利というか、他人の定めたルールより、自分の思いつきを優先する人ですからね、シーダさんは。
そんなマイペースなノリによって、あっさり第二障害もクリアです。
第三障害が最後の関門であり、ロープ登りですね。
約四メートルのヤグラが組まれていまして、その頂点にゴールボタンがあります。
こいつを登るための手段は、ロープのみです。
さてシーダさんは、どんな方法で攻略するつもりなんでしょうか?
さすがに正攻法しかないでしょう。だって四メートルの高さなんですし?
と思っていた私は、発想が貧弱でした。
シーダさんは、
「キック力もパワー……!」
と叫びながら、四メートルのヤグラの根元をキックしました。
規格外の脚力で蹴られたことにより、四メートルのヤグラは根元から崩壊。原型がわからなくなるほど壊れてしまいました。
シーダさんは、ばらばらに崩れたヤグラの残骸から、スイッチを拾うと、ぽちっと押しました。
はい、これにてアスレチック施設はクリア! しかもクリアタイムは新記録達成でした! 真剣勝負が売りのアスリートもびっくり!
…………こんな脳筋な結末、本当にアリなんでしょうか????
解説役の魔人さんは、良くも悪くもお手上げでした。
『ワシはヤグラを壊すなとは一言も触れていない。つまり彼女の発想の勝利なんだ。きっと将来大物になるだろう』
コメント欄は、すごい盛り上がっていました。
『パワー解決だ』『脳筋だ』『あんな可愛いのに、発想が力こそパワーなのマジですごい』
うーん、配信は盛り上がったし、お客さんも300人まで増えましたから……細かいことは無視して、とにかくヨシっ!
***CMです****
アスレチック渓谷からCMです。SASUKEェ的なアスレチックコースは、毎日挑戦者をお待ちしております。特別コースとして、通常のダンジョンを省略して、いきなりアスレチックコースにチャレンジできる裏道もございます。アスリートのみなさん、挑戦をお待ちしております。
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