第43話 ワープ床(ワープするとはいっていない……いやワープする別の意味で)

 私は、前回と同じように、ほふく前進でトラップ床に近づくと、どんな罠なのか調べました。


 結論からいえば、ワープ床でした。


 一般的なワープ床を踏んだ場合、ダンジョン内のどこかしらに吹っ飛ばされるんですが、その地点は冒険者側でコントロールできません。


 もし飛ばされた先が、モンスターの巣窟だったら、私たちみたいな弱小パーティーであれば、ほぼ確実に全滅でしょう。


 溶岩や毒沼の上に飛ばされても、生き残れる自信はありません。


 もっと最悪なのは、高い塔のてっぺんに飛ばされて、そこから自然落下で地面に叩きつけられるパターンですね。


 まぁ例の魔人が作ったワープ床なので、もっとオヤジギャグよりの場所に飛ばされるとは思うんですが、念のために対策会議をやっておきましょう。


「次の部屋にあるすべての床に、ワープ床が敷き詰められていますね。もし迂回路があるのであれば、そっちを通ったほうがいいんですが……運悪く今回のダンジョンは一本道ですから、迂回路がありません」


 私が前提条件を解説すれば、僧侶のレーニャさんは石ころを拾いました。


「さっき回転床を試したときと同じように、石ころ投げて、どこに飛ばされるか実験しましょうよ」


 いつになく堅実な方法ですね。どうせなら、その堅実性をギャンブルにも適応して常識の範囲内で遊んでほしいんですが……。


 戦士のアカトムさんは、ダンジョンの出口方面を指さしました。


「石ころで実験した結果、危険なワープ床だとわかったら、一度ダンジョンの外に出て、内部構造をリセットするのもアリだと思うよ」


 元学長の作ったアスレチック渓谷は、入るたびに内部構造が変化するわけですから、それを利用して、めんどうな罠をリセットすればいいわけですね。


 ダンジョン攻略の時間が長引くというデメリットもありますが、ワープ床を踏んで全滅するより何百倍もマシでしょう。


 武道家のシーダさんは、その場で足踏みして、筋肉をウォームアップしました。


「ワープ床を迂回する道がないなら、大ジャンプして飛び越そう」


 こんな長い距離をジャンプできるのは、うちのパーティーではシーダさんだけですよ。


 と本人に伝えたら、彼女は他の冒険者が落としていった大型ハンマーを担ぎました。


「なら壁を破壊して迂回路を作ろう」


 いくらシーダさんが力自慢でも、これだけ分厚い壁は破壊できないでしょう。


 というか、もし壁を破壊できたとしても、その衝撃で天井が崩落してきたら生き埋めになるので、安全のために却下とさせていただきます。


 メタ発言を添えておくと、ト〇ネコやシ〇ンであれば、杖やドスコイで壁を壊して進む方法もあるんですが、うちの作品では成立しないので。


 というわけで、まずは石ころを投げて実験して、もし危険なワープ床だと判明したら、一度ダンジョンの外に出てリセットする方針になりました。


「そんじゃあ、石ころ投げるわよ」


 僧侶のレーニャさんが、石ころをポイっと投げました。


 弧を描いた石ころが、ワープ床に着地した瞬間――ダンジョン内の風景ががらりと変化しまして、宇宙戦艦のブリッジみたいになりました。


 比喩じゃなくて、本当に宇宙戦艦の船内なんですよ。よくわからない計測器とかありますし、壁や地面は鉄板ですし。


 メタ発言をすると、宇宙戦艦ヤ〇トっぽいです。


 艦長席には、沖田艦長っぽいコスプレをした魔人が座っていました。


『これよりワープ装置を使用する』


 私は思わず突っ込みました。


「いくらパロディやメタ発言が多くても、この作品は異世界ファンタジーですからね!? 宇宙空間でワープ装置みたいなSF技術をぶっこまないでください‼」


『でもワープ床を起動したのはお前たちじゃないか。つまりワープ装置で敵戦艦の背後に出現して、波動砲でぶち抜くシーンが見たいんだろう?』


 だんだん著作権的に危険になってきましたね。


 もしパクリ認定されて作品がBANされたら、私たちごと物語が消滅じゃないですか。


 というわけで、作品を守るためにバリア装置展開!


 宇宙戦艦っぽい要素を禁止しました!


 しかし魔人が不服そうに言いました。


『お前もSF技術のバリア装置使ったじゃないか』


 うるさい魔人ですねぇ。裏技を使って作品を守らないとPV増えないでしょうが。


 というわけで、ワープ床関連の話は強制的に終わりにして、読者のみなさん、また来週お会いしましょう!


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