第38話 今回の配信の収益発表

 収益発表の回ですよ、みなさん。


 気分的には『ゆっくりしていってね』と言いそうな二人組の電子生首を並べて、収益の数字を並べたい気分です。


 そんなお茶目な前置きはさておき、私たちはすでに活動拠点の町に戻っていました。


 いつもの二人用の部屋に、四人でチェックインして、収益の計算中です。


「勇者たちの舞台裏を取材した、プロジェクト情熱大陸Xのとき、視聴者が1000人を突破したじゃないですか。あの時間帯の収益が、1000ゴールドですね」


 以前レートを説明しましたが、5000ゴールドあれば、私たち四人パーティーが、一か月間、宿に宿泊できます。


 ということは、あの時間帯で稼いだ1000ゴールドを、宿代に換算すれば、八日分の宿泊費になる計算ですね。


 かなり割のいい稼ぎといえるでしょう。


 僧侶のレーニャさんが、楽しげに口笛を吹きました。


「たったあれだけの時間で1000ゴールド稼げるんだもの。やっぱりダンジョン配信で成功者になりたいわね」


 そう、成功者になれば稼げるんですよ、成功者になれればね。


 ただし、みなさんも知ってのとおり、勇者たちが配信を始めた瞬間、私たちの配信はお客さんが激減しました。


 あの時間帯の収益を、戦士のアカトムさんが計算しました。


「勇者パーティーが配信を始めたら、たった50人しか残らなかったじゃないか? あそこからの収益は50ゴールドだね」


「「少なすぎっ!」」


 と同時に叫んだのは、私とレーニャさんでした。


 だって50ゴールドしか稼げないなら、日雇い労働したほうが効率よく稼げますよ。


 たとえば武道家のシーダさんは、水攻め装置の建築を手伝ったおかげで、日給をもらってきたんですが、その額が100ゴールドです。


 シーダさんは、むきっと筋肉を強調しました。


「我だけ圧倒的黒字……!」


 そうなんですよねぇ。


 あくまで今日は勇者に寄生したから、初の配信で1000ゴールド以上稼げました。


 しかし、もし単独で配信していたら、おそらく100ゴールドしか稼げなかったんです。


 つまり、シーダさん一人の日給と、寄生なしで配信した日給が、まったく同じ額になる計算です。


 もし四人で配信して、100ゴールドしか稼げないなら、パーティー一日当たりの宿泊費170ゴールドに届きません。


 お金が足りなければ宿に泊まれないわけですから、野宿生活に逆戻りですよ。


 いやぁ、配信業って難しいですねぇ。


 もし大人気の配信者になれたら、一般的な労働者では稼げない額を、手に入れられます。


 しかしまったく人気が出てこなかったら、広告収入なんて入ってこないですから、日雇い労働の方が稼げるわけですよ。


 だって四人で日雇い労働すれば、一日で合計400ゴールドの稼ぎじゃないですか?


 という感じで、長々とお金を計算してきましたが、稼げる稼げないの話題は、冒険者稼業には付き物ですからね。


【もし冒険者としての収入に不満があるなら、いますぐ労働者になったほうがいい】


 はい、配信ナシの冒険者だろうと、配信アリの冒険者だろうと、稼ぎに不満があれば、真面目に働けというわけですね。


 しかしそうなってくると、他のダンジョン配信者が、どうやって稼いでいるのか気になりませんか?


 戦士のアカトムさんが、VITで他のダンジョン配信者たちのチャンネルを開きました。


「そこそこ強いパーティーの場合、ダンジョンで手に入れたお宝を換金することで、配信収入と合わせて黒字転換、っていうパターンが多いみたいだね」


 なるほど、冒険者としての収入がそもそも多めなので、視聴者数が少なくても成立しているわけですね。


 うちのパーティの場合、そもそもレベル1から5までしかいないわけですから、ダンジョンでお宝をゲットする余裕はないんですよね。


 というか、冒険者としての収入が少ないから、ダンジョン配信で稼ぎたいわけじゃないですか。


 やっぱり私たちは、他のダンジョン配信者を参考にしないで、エンターテイメントに徹したほうがいいですね。


 じゃあ、どうやってエンターテイメントしていこうかと悩んだとき、武道家のシーダさんが、ファイティングポーズで、こう言いました。


「すでに寄生配信はやったんだから、次は自分たちだけでダンジョン配信をやってみないか?」


 彼女の言う通り、自分たちの力量を試すのは大切なことですね。


 現在の50人ぐらいのお客さんで、どれぐらい広告収入を稼げるのかチャレンジしてみましょうか。


 というわけで、次回の更新は、ダンジョン配信者向けの定番クエストを受注しようと思います。

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