第37話 まさか水攻め失敗ですか!?

 まさか水攻め失敗ですか!? 勇者パーティーさん!?


 という帯を、この37話に巻きたいですね。


 策士策に溺れるなんて言いますけど、いくら勇者パーティーであっても、なんでもかんでも、うまくいくわけじゃないんですねぇー。


 いやまぁわかってはいるんですよ? いくら他人の不幸は蜜の味とはいえ、勇者の失敗を喜ぶ姿勢が良くないことなんて。


 でも平均視聴者数が、10000人を超えている人たちの広告収入を考えると、『ぐぬぬ、おのれ金持ちめ』って正直な感想も沸いてくるわけでして。


 さてさてー、今ごろどんな顔をしているのかな、金持ち勇者パーティーのみなさんは???

 

 と思っていたんですが、予想に反して、したり顔なんですよ。


 堂々としているというか、計算通りというか、まぁこんなもんだろう、みたいな。


 その理由は、魔法使いルリヤが説明してくれました。


「不安に思っていた市民のみなさんも、やーいやーい勇者パーティーが失敗してやんのーと喜んでいたみなさんも、ご安心ください。水流を逆流してくるパターンも対応済みです。親方、落とし穴を発動してください」


 あいよっと気合を入れた親方は、レバーをガチャリと切り替えました。 


 水攻め用水路に、ぽっかり大きな穴が開きました。


 となれば、バタフライで逆流してきたモンスターたちは、海水と一緒に奈落の底へジャバーっと落ちていきます。


 当然ですが、四天王ドルンバンも、バタフライで泳いだ姿勢のまま、ぴゅーっと穴底へ落ちていきましたとさ。


 THE END


 ………………えー、こんな結末ありですか?


 もしかして他人の不幸は蜜の味だと思わせておいて、私の不見識がバカにされるパターンですか?

 

 ちなみに、うちの配信のコメント欄は、二つの意味で大盛り上がりでした。


『四天王が落とし穴に落っこちるのおもしろすぎ』『悲報配信者さん、勇者の失敗を喜んでいたら、実は罠だった件』『ユーリューも四天王と一緒に落ちてみよう、きっと笑いがとれるよ』


 コメント欄が加速するのはいいことですが、私を叩くコメントが増えるのは、きっと自業自得でしょう。


 たぶん読者のみなさんも、私を叩いていることでしょう。


 この腹黒女、いい気味だーって。


 ええい、覚えていなさいね、視聴者と読者のみなさん。いつか恥をかかせてやりますから。


 それはさておき、落とし穴の底から、四天王ドルンバンが叫んでいました。


「水路に落とし穴を作るなんて、卑怯すぎるだろう、魔法使いルリヤ!」


 魔法使いルリヤは、糸みたいに細い目を一瞬だけ開いて、キザっぽくいいました。


「こんな安い手に引っかかるほうが悪いでしょう?」


「こいつの声と口調、石田彰キャラみたいで腹が立つ!」


「さようなら、さようなら、また会う日までー」


 魔法使いルリヤは、土系の攻撃魔法を唱えると、落とし穴に土砂を流し込んで、ぱかんっとフタをしました。


 うーん、四天王ドルンバンの声が聞こえなくなりましたねぇ。


 今度こそTHE・ENDですよ


 しかも、どうやら水路を設計した大工の親方が、筋肉モンスター軍団を退治した判定になったらしく、ぴろりぴろりとレベルアップの音が連続しました


 元々親方のレベルは45だったんですけど、今回で47まで上がりましたね。


 さすがにダンジョン一つ分のモンスターを丸ごと倒すと、すごい量の経験値が入ったみたいですね。


 っていうか、まさか本当に水攻めだけで、四天王が一人やられたことになるんですか?


 もしかして魔王軍って、お笑い軍団なんじゃ…………。


 という疑惑に関しては、魔法使いルリヤが補足説明してくれました。


「四天王って、引継ぎがあるんですよ。だから一人倒しても、また別の誰かが四天王になるだけ。かれこれ僕たちは、十人ぐらい四天王を倒しましたけど、ずっと四天王は補充され続けているので、まぁイタチごっこというやつですよ」


「……それ、四天王の四っていう数字にこだわる必要ないんじゃ?」


「おもしろいツッコミですが、まぁ悪の組織なんてそんなもんです。というわけで、作戦完了です。みなさん撤収しましょう」


 えっ、本当にこれで終わり?


 勇者パーティーと四天王の熱いバトルとか、必殺技のぶつけあいとか、魔法合戦とか、そういうのもナシで?


 …………やっぱり帝国にはロマンがないですね。


 ***CMです***


 帝国お笑い劇場からお知らせです。皇帝が不謹慎ギャグを禁止してしまったので、来週出演予定だったトリプルビートはキャンセルです。


 なおトリプルビート目当てのお客さんたちは、下町にある小劇場に向かっているみたいですが、我々の関知しないことですので、ご了承ください。

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