レベル1からレベル5までしかいない低レベル女の子パーティーなんですけど、ダンジョン配信を始めたら冒険の収入より広告収入が上回りました
第35話 勇者の配信が始まったら、私たちの配信はお客さんが激減しました
第35話 勇者の配信が始まったら、私たちの配信はお客さんが激減しました
水攻め開始直前となれば、勇者パーティーも配信を開始することになりました。
となれば、私たちは、配信補助のアルバイトをやらないといけません。
私は、照明器具をセットして、明かりをつけました。
「照明よーし。お肌の毛穴までくっきり見えますよー」
僧侶のレーニャさんは、光度を調整するために、反射板を構えました。
「勇者パーティーって、顔が綺麗すぎて現実味がないわ。つまり勝負師だらけの競馬のジョッキーが一番かっこいいってことね!!!」
いつものギャンブル狂でした。
いやまぁ、顔の良さより、生き様で選ぶのは良いことだと思いますけどね。ジョッキーって収入も多いし。
戦士のアカトムさんは、大型のVITを肩に構えて、いつでも中継できるようにしました。
「このVITを担ぐ仕事、カメラマンって名前みたいだけど、新しい道具が開発されると、職種も増えるんだね」
VITが開発されてから、あきらかに技術の進化が加速したんですよね。
そう考えると、ダンジョン配信っていうのは、技術の進化によって、冒険者の仕事の形が変化したことの証明なのかもしれません。
武道家のシーダさんは、勇者に雇われたことを忘れてしまったらしく、水攻め装置の仕上げを手伝っていました。
「肉体労働は、筋肉がつくし、金も稼げて、一石二鳥」
うーん、さすが脳筋のシーダさん、マイペースすぎる……。
いまから彼女を呼び戻そうとしたら、配信のスタートが遅れてしまうので、しょうがなく私がマイクも持ちました。
配信準備完了です。私が勇者たちに合図します。
「本番開始五秒前です。四、三、二、一、配信スタート」
勇者たちは、水攻め装置の前に立つと、視聴者たちに挨拶していきます。
「こんにちは、みなさん。勇者エリアフです。今日は四天王ドルンバンのダンジョンを攻略していこうと思います」
普通に挨拶をしただけなのに、勇者パーティーの配信に視聴者が集まってきました。
あっという間に10000人を突破ですよ。
ええっ……なんですか、この人数?
ちょっとした都市の人口数が、勇者パーティーを観戦している計算じゃないですか。
さすが人気者、広告料稼ぎまくりですね。
かなりうらやましい。私にも分け前ください。
なんて冗談はさておき。
うちの配信に遊びに来ていた勇者ファンの人たちは、勇者の配信が始まった瞬間、さーっと水が引くように移動していきました。
ふと気づけば、50人しか残っていません。
ついさきほどまで、1000人も視聴してくれていたのに。
悲しいですねぇ。でも、わかりきっていた結末でもあるんですよ。
彼らは、あくまで勇者たちの舞台裏を見たかっただけであって、私たちが目当てじゃないですから。
それでも僧侶のレーニャさんは、実に不満そうでした。
「なによ、まるで本命のカノジョの繋ぎにされたみたいじゃない」
たとえがアレですが、気持ちはわかります。
しかし寄生配信というのは、得てしてこういう結末になるものなんです。
勇者ファンたちが悪いのではなく、人気のない私たちが悪いんですね。
「とはいえ、50人も残ってくれたんですから、だいぶラッキーじゃないですか?」
初めての配信で、これだけの人数が集まってくれたなら、かなりうまくいっていますよ。
もし寄生配信みたいなブーストをかけないで、初めての配信をやっていたら、視聴者0人のまま終わることだってありえるんですから。
50人も残ってくれてラッキーの精神で行きましょう。
実際、残ってくれた人たちは、コメント欄で反応してくれました。
『おもしろかったよ、ドキュメンタリー方式』『コメディタッチだったしな』『斬新だったよ。女の子しかいないから、てっきり可愛い路線でやるかと思ってたから』
そうそう、うちの美少女武道家を看板にして、可愛い路線をやる道もあったんですよ。
でもそれだと、本格的なお色気配信には勝てないですし、そもそも武道家のシーダさんが脚本通りに動くはずがないので……。
やっぱり我々はコメディ路線ですよ。
命がけのギャグや、体当たりのドキュメンタリーですよ。
地道に派手に背伸びせずに、魔王退治より広告収入を目的にしましょう。
魔王退治は勇者パーティーにまかせました。
ちょうど魔王退治の話題に乗っかるように、水攻め装置が起動するみたいですよ。
せっかくの機会ですし、今回の水攻め作戦を考えた、勇者パーティーの魔法使いにもインタビューしておきましょう。
そもそも魔法使いが、どんな人物なのかもふくめて、次回の更新をお楽しみに。
***CM***
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