美由紀の事情ー3

 有紗が俺に懐いてきたのは、親父が亡くなった後、カーリーとケイトがうちに入り浸りになってからだ。


日本に帰ってきてしばらくは、ボスや黒川さんがカーリーに付きっきりだった。

ロンドンのスタジオが忙しくなり、ふたりは帰っていった。

その代わりに、ルーが来るようになった。

ルーが帰ってしまうと寂しくなったカーリーは、うちに入り浸る。


 男の子みたいなカーリーを、有紗は最初怖がっていた。

母親である美由紀や有希の後ろに隠れるようにして、俺たちには近寄ってこなかった。


でも、ケイトが有紗に興味を持ち、くっついて歩くようになり、有紗がそんなケイトの面倒をみるようになり、周りの大人達から、


「さすが、お姉ちゃんね!」

「良いお姉ちゃんね!」


と褒められるようになって、自信がついた様子だった。

それから、ケイトのママであるカーリーにも気を許し始めた。


 その頃、俺は会社でバイトしないかと言われ、美由紀から仕事を教わりしごかれていた。

俺と美由紀が、仕事の話や他愛のない話をするようになったせいか、有紗は俺にも気を許し始めた。


有紗はシャイなんだと思っていたが、男の人が苦手なのだと気づいた。


俺は美由紀に、こう聞いたことがある。


「有紗は男嫌いか?

父親にはどうなの?」


「別居中なの。

あの子が赤ちゃんの時から。あはは!」


美由紀が軽く答えるから、それ以上は詮索したことはなかった。


 有希は、性格は美由紀に似てはっきり物を言えるのに、周りに気を遣う子で、

有紗は、シャイで男嫌いで大人しい子で、

それは、ふたりの個性だと思っていた。



ーRayー



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