後輩ー6

 数日後、哲治さんから連絡があり、塾講師の常連さんと会うことになった。

俺とカーリーは、午前中のまだ誰もいない塾に通された。


「私、馬場勇大と申します」

と、ご丁寧に名刺を渡された。


「私も、A中卒業です。4期上です」


「俺たちの先輩っすね」


「そういえば、同級生に、馬場沙知花さんていましたけど」


「妹です。あなた達の噂はその頃から聞いてました」


表情も変えず、真面目そうで、眼鏡の奥の目は鋭い。


 まず、大学で何を学びたいのかとか、将来的にどうしたいのか等の話を聞かれる。


そして、おもむろにテスト用紙を出され、2時間程、俺たちは学力検査なるものをやらされた。

順次採点され、出た結果は


「苅原さん、あなたはそれなりですが、H大には程遠いです」


「川瀬さん、あなたは全く話になりません」


「2人共少し進路変えませんか?

考えておいて下さい」


と言われた。


カーリーは引き下がらない。


「H大の森林研究会は、他の大学からでも参加は可能です。

本気で研究者目指すなら、他の大学の生物系学課に入って、その後H大の大学院に行く手もあります」


納得はいってないカーリー。


「川瀬さん、あなたは、まず理学療法士の専門学校に行くのはどうでしょう。

国家試験があるので、厳しいですが、その後に大学に行くという手もあります。

あなたは、まずは日本語です」


「2人共、先は長いですが。

それでよければ、私は、できるだけのことはやります」


カーリーは、まだ納得はいってないようだが、

ふたりで、


「よろしくお願いします」


と頭を下げた。


「では、1ヶ月6万円。週一で通って下さい」


といって、何冊かの参考書と問題集を、それぞれ渡された。


「来週までに」


俺は、頭を抱えたが、

カーリーは、不敵な笑みを浮かべた。


ーShowー

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る