ルー

ルーー1

 ロンドンのスタジオは、今忙しいらしい。

Scream of No Nameのライブに協力してくれた同じスタジオの仲間達がブレイクし始めているらしい。


 ボスも黒川さんも、ほとんど日本には来られなくなった。

なので、私は、2ヶ月ほどで面倒見てもらうのを打ち切られてしまった。


 果穂ちゃんも、毎日のように様子を見に来てくれたり、ご飯を一緒に食べたりしているし、ショウくんのバアバ達に誘われたりもする。

食事も、誰かしらが差し入れしてくれるし。


 ただ、どこに行くにも足がない。

いつもタクシー。 

それも面倒くさくなってきた。

そんな時、レイちゃんが自動車学校に通い出した。

真似して、私も通い出した。

その間、ケイトは、ショウくんのばあば達が見てくれる。

ショウくんも誘ったが、今は、唄のリハビリで頭がいっぱいらしい。

 


 12月の半ば、病院の帰りにケイトが公園に行きたいと言う。

雪こそ積もってはいないが、めちゃくちゃ寒い。

少しだけねと釘を刺して、公園に行く。

さすがの修平親子も、今日は来ていない。

でも、数人の子供達とお母さんがいる。


 砂場に、誰かが忘れていったシャベルがあった。

ケイトは、それで穴を掘り出した。


 その時、いきなり人の気配が近付いてきて、私の頬にキスをした。


「ぎゃー!」


叫び声をあげ、私は尻もちをついた。


ルーが笑いながら立っていた。

 


「サプラーイズ」とか言ってくる。


「サプライズは嫌いなんだよ」

と言って、砂をかけてやる。


そんな私の手を取って、立ち上がらせると、両頬にキスをし、ハグをする。


「ヘイ!ケイト!覚えてる?」

と言って、両腕を差し出すと、ケイトは抱きついていった。


「私は最近忙しいんだよ。

家にいなかったら、どうするつもりだったんだよ?」


「電話すればいいやん」


見た目思いっきり外国人のルーは、関西弁だ。



 そんなルーは、ボスや黒川さんが日本に来ることができなくなってからも、何度か、私達の様子を見に来てくれている。

今回で、3回目だ。


 こんな私が、ケイトを抱えて、1人で生活しているのが心配なのか、必ず我が家に泊まっていってくれる。





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