帰国〜ショウー4

 地下のモルグに、真澄は横たわっていた。

真っ白な顔。

陶器の人形のようだった。

冷たかった。


そんな真澄を見ても、実感がわかない。

真澄もどこかで、この冷たくなった遺体を悲しんでいるんじゃないかとすら思った。


俺は、この時泣いたのかすら覚えていない。

誰かが、俺の体を支えている。


 双子の妊娠は何かと大変だからと、真澄のママは、早くからロンドンに来ていた。


真澄のママは、待合室のベンチに放心状態のまま座っている。

その隣に、俺が座る。

しばらくの沈黙の後、2人で声を上げて泣いたのは覚えている。


 NICUの担当医が、子供達に会うかと聞いて来た。

保育器に入れられた、小さな赤い生物。

至る所にテープを貼られ、管がそこから伸びている。

隣の保育器には、さらに小さな赤い生物が。


真澄のお腹を蹴っていた胎児と結びつかない。

自分の子という実感が、この時はまだなかった。

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