母と娘ー13

 2階まで階段を駆け上がり、家の鍵を開ける。

真っ暗だ。


「お姉ちゃん」


明かりをつけて、トイレやお風呂も覗いてみた。

いない。


寝室を覗き込んだ。

人の気配はない。

でも、クローゼットの扉が開いている。

明かりをつけて、クローゼットを覗き込むと、眠っているケイトを抱きかかえて座る姉がいた。


「お姉ちゃん!大丈夫?」


焦燥し切った顔で言葉も出ず、動こうともしない。

八木さんを呼んで、ケイトを引き離し、姉をクローゼットから引きずり出してもらった。


顔が青白い。貧血を起こしているのかもしれない。

八木さんが薬と水を持ってきた。

そのままベッドに横たわらせた。


八木さんが、私の腕からケイトを受け取った。鼻水と涙の跡で、顔はドロドロだ。

目を覚まして泣き出したケイトをあやしたり、顔を拭いたりしている.


ベッドに横たわり、どこを見ているのかわからない姉に、もう一度尋ねた。


「お姉ちゃん、大丈夫?」


ボロボロと涙を流しながら


「怖かった!」


と言った。


「私も、怖かった!」 


「また来る?」 


そう聞かれて、背筋が凍りついた。



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