帰国〜果穂ー2
姉と会うのは、8年ぶり位だ。
大学に行かずに、ミュージシャンになりたいと言って親の猛反対に遭い、高校の卒業式の翌日に家を追い出されたのだ。
何も持っていくことも許されなかったらしい。
姉が出ていった日は、姉の誕生日だった。私は中学3年生で、公立高校の受験日。塾に寄り、その帰りに姉へのプレゼントを買いに行き、帰宅した時にはすでに姉はいなかった。姉がいないことを問いただしたが、その日の夕食の食卓は特に殺伐としていた。
もともと我が家の食事風景は殺伐としていた。
母が、何かにつけて文句を言ったり、時には大声を出すこともあった。
子供心に、母の逆鱗に触れないように静かに食べていた。
決して楽しい食事風景ではなかったが、祖父母のお陰でどうにか、そんな気まずさを乗り切っていた。
子供の頃は、自分の家が他の家と違うことには気がつくことができないのだろう。
父は転勤が多く、そのほとんどは単身赴任だった。
母は家事があまりできない人で、それを心配してか、祖父母は持ち家がありながら、私達家族と同居していた。
祖父母の家には、当時、離婚してひとり息子を育てていた母の姉つまり私達の叔母が住んでいた。
あの頃、祖父母がいてくれてなかったら、私達姉妹はどうなっていたのだろうと考えたら身の毛がよだつ。
しかし、あの日姉が出ていったことで、私は実感することになった。
私は、そのことで、姉を少し恨んでいたのかもしれない。
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