レイン -君に再び出会い、共に歩む為に-

天風 繋

1.ミレイアと共に歩む為に、俺に出来ること

土砂降りの雨の中一人の男が立ち尽くしていた。

その手には、長剣が握られていた。

彼のプレートアーマーは、傷だらけで見る影もない。

漆黒の厚手な服も所々に血が滲んでいる。

漆黒の髪は、地に濡れていた。

足元には、血だまりが広がっている。

彼の双眸には、既に光がない。

ああ、あれが俺だ。

ロード』と呼ばれていた頃の。

レイン・フォン・クロフォード公爵。

当時の俺の名だ。

セントバルクーリ聖王国。

それが、仕えていた国だった。

王弟だった父。

ある年に、他界し俺は爵位を継いだ。

俺には、ミレイアと言う妻がいた。

しかし、俺が領地を離れている間に領地を巻き込む大戦が勃発し彼女を失った。

俺は、国王に爵位を返上し傭兵へと身をやつした。

それからは、生涯常戦を貫き戦場を転々とした。

そして、俺はセントバルクーリ聖王国最後の戦場で死を迎えた。

そう、俺はあの日死んだ。

だが、俺は目覚めた。

赤子の姿で。


どこか懐かしい部屋だった。


「あれ?レインちゃん、目が覚めたのね」


俺の顔を覗く黒髪の女性。

ああ、懐かしい。

母上だ・・・もう10年以上会っていなかった。

ミレイアが亡くなった年に、母上もまた亡くなった。

俺は、過去に戻って来たのか?

そうなのだとしたら、ミレイアに会いたい。

彼女を抱きしめたい。

彼女の笑顔が見たい。

ミレイア・・・ああ、ミレイア。

俺が、彼女に初めて会ったのは5歳の時だったな。

5年後か・・・早く会いたい。


「レインちゃん?あれれ?今日は大人しいわね」


母上が、首を傾げながら俺の顔を覗き込む。

俺は、ついさっき未来から戻って来たばかりだ。

つまりは、過去の俺が少し前までいたのだろう。

過去の俺は、未来の俺に上書きされてしまったのかもしれない。

済まない、過去の俺よ。

俺は、今度こそミレイアと生きていきたい。

あの悲劇を迎えない為に、俺は・・・。

俺は、母上に抱き抱えられる。


「レインちゃん?」

「あうあう《母上》」


ああ、そりゃあ喋れないわな。

首は動かせる。

と言うことは、首は座っているということか。

生後3か月くらいだろうか。


「あらあら、可愛いわ。レインちゃん」


母上・・・シルビア・フォン・クロフォードが俺に微笑む。

若いな。

俺自身も赤ん坊に戻ってしまっているから生前より30年も昔。

ということは、母上はまだ19歳になったばかりだったはずだ。

母上が亡くなったのが40歳の頃。

俺が、20歳になった頃だったからな。

隣国との大戦を誘発させる内戦によって母上は亡くなった。

ミレイアと共に。

あの内戦は、俺ではなく父上が生きていれば変えられたかもしれない。

父上の死が内戦へ繋がったように思う。

父上の死は、俺とミレイアの結婚式の翌日。

今の俺なら、父上の死の真相も知っている。

変えてみせる、未来を。


とりあえず、俺がすることは・・・。

ミレイアと再会すること。

ミレイアと共に未来を歩み続けること。

その為には、父上の死を回避すること。

内戦を回避すること。

そして、大戦を回避、もしくは勝利に導くこと。


その為には、力をつけなくては。

俺の中に眠る剣を成長させ続け、大戦終結時の状態まで最低でも覚醒させなくては。

俺達の中には、万人変わらずに武器が眠っている。

5歳になると等しく皆、武器の『真名』を教会から賜り顕現することが出来るようになる。

武器は、成長していく。

やがて、一段階の成長が終わると進化し新たな姿になる。

大戦終結・・・我が剣『アルマディオン』は長剣へと進化し1千の敵を屠った。

あの時、『アルマディオン』はある鉱石を触媒として進化した。

それがあれば、いち早く進化させることが出来る。

知識と経験は、俺の中にある。

行けるはずだ。

俺は、胸に手を当てる。

なあ、『アルマディオン』。

今世では、更に高みを目指そう。

お前がいてくれるなら、俺もまた強くなれる。

そして、共にミレイアを守ってくれ。

胸の奥に、熱を感じる。

呼応するように。


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この世界には、人間のステータスはありません。

5歳の時に、武器の真名と武器鑑定のスキルを教会から賜り武器を顕現させる。

武器が成長することで人も成長する。

『成長』は、武器鑑定することで知ることが出来る。

鉱石や魔獣の素材は、基本的には防具の素材になる。


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