第65話「ツバメ」

「あっ」


 学校帰りの駅までの道、商店街通りを歩いてたら西森さんが小さな声をあげる。見ると、道端に何か落ちてる。


「これは、ツバメのヒナ?」


 見上げると商店の壁上にツバメの巣がある。


「もう死んでる」


 西森さんが悲しそうに呟く。


「実は今朝通った時にも落ちててさ、まだ生きてたから店の人に言ったんだ。そしたら店員さんが脚立に登って巣に戻してくれたんだけどさ…」


「また落ちたって事か」


「そう。死んだから落とされたのか、落ちてそのままになってたから死んだのか判らないけどね。店員さんだってずっと見てるわけにいかないしね」


「まあ、そうだね。弱い個体は他のヒナに落とされたりするのは聞いたことあるし」


「しかし不思議だな、村上くん。私にとってこのツバメのヒナは無関係だ。ただ、通学中に通る道に落ちてただけだ。私が飼ってる訳でもないし、何なら昨日まで存在を知らなかった。私に関係のない生き物だ。なのに、何故死んだら悲しくなるのかな?」


「これも…人間特有のものかも知れないね」



 今日の西森語録「人間は関係のない生き物の死にも悲しくなる」


 確かに、僅かでも関わりを持ったら、その死は悲しくなるの不思議だな。

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