今城騎士のド根性

@20132007

第1話 今城さんの会社事情

「おはようございます部長!」


「ああおはよう。昨日君に任せた仕事の書類を渡したまえ」


「そのことなのですが!実は昨日泊まり込みで取り組んだのですが終わらず...」


「会社では昨日どれくらい寝たのかね?」


「気づいたら寝落ちしてしまっていて2時間ほど」


「あのね~今城君。会社は君の家じゃないんだ。だが寛大な社長は電気を点けなければ会社で寝てもいいと言っておられるのだ。その宿泊費分の仕事もできんのかね?」


「本当に申し訳ございませんでした。」


「大体君は…」


その後俺は30分ほど説教を喰らったあと仕事に戻り、気づけばもう夕方になっていた。

俺の名前は今城 明(こんじょう あきら)。しがないサラリーマンだ。俺は昔から頭が悪く、忘れっぽいため、よく怒られて育ってきた。人生に何の目標もなく、

昔から何となく生きてきた。何となく勉強して、何となく大学入って、何となく就職してみればこのザマだ。

今も何となく鬼スケジュールの下で仕事してたびたび怒られるというサイクルの中で生きている。俺は所詮この社会の使い捨ての歯車になる定めだったのだ。

最近は休日出勤が重なってもう最後に休んだのが一か月以上前になってしまって

いるのだが、あまり違和感を感じない。もう俺は手遅れなのかもしれない。


「先輩お疲れ様です」


「ん?あー森内か」

彼は後輩の森内君。大学の頃のサークルも同じで会社で唯一気軽に話せる人だ。


「それどーいう反応ですか?」


「ていうか私語見つかったら減給されるぞ」


「もう部長帰ったから大丈夫ですよ」


「え?本当だ。気づかなかった」


「もう頭働いてないじゃないですか。何で自分の自己紹介をパソコンで打ち込んでるんですか?」


「え?あ!やべ!」

もう頭が働かん。ちょっとやばい。


「もう今日ぐらい定時で帰りましょうよ。奢りますよ?」


「お前だって生活きつい癖に無理するな。俺はまだ残るからもう帰っていいぞ」


「先輩~ぶっ壊れちゃいますよ~心配ですよ~」


「あ~分かったよ!泣きつくな。これが終わるまで待っててくれ」


「わ~い!ありがとうございます!」

なんで俺が帰ることでこんな喜んでんだよと思いつつ手元にあった鏡を見たら

そこには子供の頃に死んでしまった爺ちゃんの様なよぼよぼな顔があった。


「・・・もう帰るか」

久しぶりに7時前に退勤した。

俺は森内に連れられ、居酒屋に入った。すると中には見覚えのある奴らがいた。


「おー森内来たか!!って今城!?お前生きてたの!?」

彼らは大学時代のサークル仲間だった奴らだった。


「今城心配したぞ!家にもいなかったし連絡しても返信なかったからもう捜索届を

出そうかと思ったぞ!何してたんだよ」


「何って仕事だけど」


「仕事って出張でも行ってたのかよ?」


「いや会社で泊まり込みを」


「はあ!?最後に家帰ったのっていつだ?」


「は?そんなん急に言われても覚えてない」


「かぁーお前社畜じゃん」


「そんなことないだろ。今回はたまたま仕事が重なっただけだしいつもは一週間

程で帰れるし」


「そもそも泊まり込みってのがおかしいだろ!」


そう言うとそいつはポケットから何かを取り出して俺に差し出した。


「持ってけ」


「何これ」


「盗聴器」


「なんてもん持ってるんだよ」


「これでパワハラな会話を録音すれば絶対勝てるぞ」


「いらねーよそんなもん」


「いいから持ってけって」


そう言うとそいつは無理矢理に盗聴器をポケットに押し込んできた。


「ちなみにこの会話も録音してるから」


「きめーよ」


「ははは」


俺たちは終電ぎりぎりまで飲んで帰った。


「先輩どうでしたか?」


「おん?」


「気分転換になりましたか?」


「あ、ああお前があいつらを呼んだのか?」


「呼んだっていうか大体月一で飲みに行ったりしてますよ」


「え?なにそれ行ってない」


「先輩がいつも呼んでも来ないんですよ」


「…そうか」


「明日もどっか出かけませんか?あいつらも明日休みらしいし」


「は?俺らは仕事だろ?」


「何言ってんすか?明日日曜っすよ。世間一般では休みなんです。」


「でもまだ仕事が山積みなんだが」


「手伝いますって!!それに家でも出来るでしょ。わざわざ会社で泊まらずとも」


「…でも」


「先輩、これは先輩のためを思って言ってるんです。たまにはこうやって気分転換をしないと潰れますよ」


「...森内」


「ん?どうかしました?」


「なんで俺のことそんなに気に掛けるんだ?」


「え?何言ってるんすかぁ、そりゃあ俺だって先輩に今までつらい時とかたくさん助けられてきたんです。だから俺、先輩には幸せになって欲しいんす。」


「...そうか」


「今照れました?」


「かわいい女の子に言われたかった」


「ちょ、そりゃ無いっすよ」


「へへっ」


本当は嬉しいけど、こいつには絶対言わない


「そういえば覚えてます?」


「ん?」


「先輩が大学の時に言ってたあの話」


「あの話?」


「はい、先輩の...」


「お、おい」


俺は森内の言葉を遮り言葉を発した。


「あの車運転荒くね?」


「え?」


「マズいこっち来るぞ!」


俺は咄嗟に森内を押し飛ばし、俺はもろに吹き飛ばされてしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る