番号53

 英賀匡樟先輩は工学部に在籍している。その点は卜部先輩と同じだ。


 ただ卜部先輩とは真逆と言ってもいい見た目の持ち主だ。

 シュッとしている卜部先輩の真逆ということで、何となく察してほしい。


 全体的に太っている感じは無いのだが、お腹だけが突き出ている。

 今は座敷に座り込んでいるので、わからないがひどいガニ股でもあるのだ。


 がっしりとした顎で、受け口でもあり、とにかく見た目の特徴を上げるだけでお腹いっぱいになるほどだ。

 どうも英賀先輩は自分をそういう風にプロデュースしている感じもある。


 潤いの無いボサボサ髪もそれっぽいし。


 そんな自分の見た目を中和するかのように、頼んでいる飲み物はビール一択。

 そこはまぁ、普通と言えるだろう。


 うちのサークルには、ある意味では似つかわしい部分もある。

 推理の果てに見つけ出される側として。つまり“犯人”として需要があるビジュアルの持ち主ってことだ。意外性は無いんだけど。


 あとは……そう言えば自分で「メカニック担当だ」なんて事も言っていたな。

 最近、ドローンに夢中なだけだと思うんだけど、工学部だし本当のところはわからない。


 ……目的は覗きじゃ無いのか? なんて言われているんだから、普段の先輩の言動も窺い知れるというもの。


 それでも推理小説だけでは無く、色々な本を読んでいて、蓄えられている知識はサークルで一番であることも確かな事だ。


 僕は改めてトマさんに付いての話を切り出すことにした。


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