番号30
明けて翌日、というか翌朝――
推理小説サークル+トマさんは
で、うちのサークルにあてがわれている部屋はきっぱりと大学の僻地にあるので、この食堂のテーブル席がもっぱら部室代わりという状態だ。
だからここに再集合までは改めて打ち合わせをする必要も無かった。
先輩達も……多分あまり変化はない。英賀先輩だけはショルダーバックを持ち込んでいたけど、メカニック担当だからそういうものだろう。
「……それで、トマソンの巡り方なんだけどね」
「巡り方?」
昨晩のトマさんの発言の報告と、英賀先輩が用意してくれた各トマソンの画像をプリントアウトしたものをテーブルに広げたところで、部長が切り出した。
僕は反射的に、よくわからない部分を聞き返してしまう。
「そう。トマソンのある場所に行くのは決定事項でしょ? なら少しでも効率よく回りたいじゃない」
言われてみれば、確かにその通りだ。
考えてみれば、僕はトマソンがこの市に多いことはよくわかったけど、それぞれがこの市のどこにあるのかまでは掴んではいない。
これでは効率の前に、巡るルートさえも見当付かないだろう。
僕は納得して、続く説明を待った。
「で、お前の部屋の近くの公園は市で考えると北寄りで東寄りだそれはわかるな?」
説明を引き継いだ英賀先輩の言葉に僕は頷く。確かにそういう位置になる。
「となるとだ。トマさんはさらに北東から南下してきたのではないかと推測されるわけだ。この市ではないけれど北東には山田駅がある。駅があるのは駕籠市じゃ無いけどな」
なるほどなるほど。山田駅は繁華街に直通している路線が通っている大きな駅だ。
駕籠市の玄関代わりになっている要素はもちろんある。つまり市外、あるいはもっと遠くからトマさんがやって来た場合、山田駅から始める可能性は高くなるだろう。
何か色々な前提を飛ばしている気もするけど、納得の推測ではあるな。
僕の納得を受けて英賀先輩はさらに続けた。
「となると、昨日のトマさんの行動を再検証というコースと、まだトマさんが行っていないであろう市の南から回るコース。二つのルートを想定できるわけだ」
「ああ、二組に分かれるんですね。確かにその方が良いか……」
ここで効率という言葉が出てくるのか。
でもさして、締め切りがあるわけでも無いしなぁ……
「それで、どういう組み分けで回る?」
いきなり部長がそんな事を言い出した。
え? 気合い入れるような事だろうか? 僕とトマさんは……あれ? 分かれた方が効率が良いのかな?
トマさん自身と、トマさんの発言をニュアンス付きで覚えてる僕はそれぞれのコースに――
「この二人と、我々で別れれば良い」
そんな僕の逡巡を断ち切るように卜部先輩が重々しく告げる。
特に説明されたわけではないんだけど、それだけでどういう組み分けか理解出来てしまった。
先輩達と、僕達だ。
「昨日の事もあるしな。トマさんはその方が安心できるだろう。どこで記憶が戻ってくるかわからんわけだし」
さらにその組み分けを英賀先輩が後押しした。
確かにトマさんの記憶のことを考えると、ただ単に効率だけを追求するのも問題あるか……
「……そうね。その組み分けで回りましょう」
そして部長もそれで納得したみたいだ。何だか不満そうだけど……何でだ?
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