恋を知らない彼女は、俺のことが好き。

なゆお

恋を知らない彼女は、俺のことが好き。

俺の幼なじみ、月本 瑠花は、

容姿端麗、頭脳明晰、スポーツ万能と、

何にしても、出来ないことは無い。

男子にも女子にも好かれ、クラスの人気者である彼女は唯一、苦手なものがある。

それが─。

この俺、草葺 木葉らしい。

俺も何故、瑠花が俺のことが苦手なのか分からない。

彼女が言うには、「近づくだけで無理」と。

その時の俺は、オブリガードに言えと思いながら、夜に涙で枕を濡らした。

彼女はどれだけ俺のことが苦手なのかと言うと、入試の苦手なものに俺の事を書くぐらいだった。

お陰様で、試験官達に優しい目で見られた。

そしてそんな俺の事をめっちゃ嫌いな瑠花は…


なんと、俺の隣の席になっていた。

しかも机がくっついているので、今までにないほど、とても近い距離だった。

瑠花は、

「こっち見ないで」

と今でも俺のことを避けている。

「いや、無理だろ。2人で教科書読めって言われたんだぞ」

「なら1人で読む」

「止めろ、俺が真面目に授業やっていないと思われる」

「普段真面目にやってない人が、何言ってるんの」

「言い返すことも出来ねぇ…」

「真面目にやって」

「分かってるよ」

「あー、ここの答えを木葉に言ってもらおうかな」

「えっ?」

やっべ!全然聞いてねぇ!この時は成績優秀な彼女に…!


俺は拾ってくださいと言わんばかりの子犬の目よりも真剣な眼差しで彼女の事を見たが…。

「あなたがうるさくて私聞いてない」

オワタ。


土曜日。

「おまたせ」

「ん」

「待ったか?」

「いや、」

「そうか。なら良いか。行こう」


俺と瑠花は土日などはこうやって遊んでいる。

瑠花は俺の事を苦手なのにだ。

俺はいいが、彼女はどう思っているのか分からない。

こいつ、本当に俺の事苦手なのか?

と思う。

まぁ、気にしない方向で行こう。



「楽しかったなー」

「うん」

「…。何で俺の事苦手なの?」

「急に話題変わったね」

「それぐらい気になるんだよ。別に俺の事を避ける訳でも無いし、本当に何でなんだ?」

「木葉を見ると、心臓が高鳴って上手く喋れないから、それが嫌で、でも一緒にいたいから、そんな微妙な気持ちが嫌いだから、木葉にあまり会いたくない」

「…」

それは、俺でも分かる、心の病であった。

でも、俺にこいつがしてくれるなんて、

理解出来ない。

まぁ、一応聞いてみよう


「それって、恋じゃないの?」

「…え?」

「…」

「…」

「?」

「…!」

瑠花の顔が一気に赤くなった。


「私、なんてわかんなかったんだろう。」

「まぁ、今まで恋してなかったから仕方ないんじゃないかな?」

「…」

「何?」

「なんでも」

「そうか?」

「ねぇ、」

「ん?」

「木葉は私の事、好き?」

「…」

正直、俺は瑠花の事を好きなのか分からない。

でも、瑠花の想いには答えたいと思う。

だから、俺は

「好きだよ」

そう、答えた。

「じゃあ、」

「付き合おう」

多分俺は瑠花の事が好きだ。

でもそれは明確ではないから、

だんだんと好きになろう。


瑠花とお付き合いしてから、1週間が経った。

あれから変わった事と言えば、瑠花が俺の事を苦手だと言わなくなった事と…。

「木葉ー、好きー」

「俺もー」

人前で甘えてくれる事だ。

これまでの彼女とは違い、腕を抱き締めてきたり、好きなど、愛の言葉を囁いてくれたり。

お陰様で、周りから優しい目と憎しみの目が

俺に向かって飛んでくる。

「そういえばさ」

「何?」

「面接の時、俺の事苦手って言ったんだよな?」

「うん」

「理由聞かれた?」

「うん」

「何て答えた?」

「木葉から苦手な理由聞かれた時と同じ事言ったよ」

「…。もしかして、クラスが一緒なのも、席が隣なのも…」

「先生達の優しさ」

「マジか…」

だから、面接の時優しい目で見られたのか

…恥ずかし。



冬。

もう、登下校などは瑠花と行くのが当たり前になって来た頃。

「手、寒いな」

「なんだ?手でも握って欲しいのか?」

「何でそんな発想になる」

「手が寒い時に彼氏に手握って貰って、温めてもらうのが恋愛漫画の定番なんだ」

「そうなんだじゃあ、」

瑠花は不自然に手を出して言った。

「手、寒いな」

「…。手袋ならあるよ」

「ならいいや」

だが、瑠花の手は本当に寒そうだったので手袋を外して俺は瑠花の手を握った。

「…」

「えへへ、暖かい」

瑠花の顔を見ると、顔が酷く赤くなっていた。

俺の顔は、何故だが暖かかった。


1周年。

もう、くっつくのが当たり前になってしまった。

新しく来た1年生からも、

「うわー」

と俺らのイチャつきぶりを見て引いていた。


瑠花からこんな事を言われた。

「付き合い始め、私の事あまり好きじゃ無かったでしょ」

と。

俺は正直に答えた。

「うん」

すると瑠花は

「なら、今の気持ち伝えて」

と言った。

俺は、もう決めていた。

この1年は短く、長いものだった。

俺は、毎日瑠花に惹かれていった。

俺は瑠花のことが

「好きだ。愛してる」

これが今の俺の答えだ。

「知ってる」

どうやらただ言って欲しかっただけだったらしい。

この可愛いやつめ…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

恋を知らない彼女は、俺のことが好き。 なゆお @askt

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ