第183話 『それで、絞めたんですか……?』
俺は、いや俺たちは全てを話した。
草壁の暴走を止めようとした早霧の自爆的暴露によって、俺が早霧と一緒に風呂を入ったことがバレてしまったからだ。
それはまあもちろん、彼女なら自分の中で完結して悪いようにはならないだろうという信頼があったからで。
「それで、絞めたんですか……?」
その信頼も、ブレなさ過ぎると怖いなって思った。
長い前髪の奥に隠れている瞳は、もしかしたら俺たちの首を見つめているのかもしれない。
「し、絞めてはないよね……?」
「……絞めても絞められてもないな」
何故疑問形なのか、不安交じりに早霧が聞いてくる。
「な、なるほど……締めて、は、ない……ですかぁ……」
「……意味深に頷かないでくれ怖いから」
「ひょわっ!? す、すみません同志!」
俺たちの答えを聞いてブツブツとまた自分の世界に入ろうとした草壁に声をかけて引き留めると、彼女はビクッと身体を震わせて椅子から転げ落ちそうになった。
大人しそうな見た目をしておいて、リアクションの大きさならあの大男……長谷川に負けていない気がする。
「うんうん、蓮司は真剣になると顔が怖いからねー」
「で、でもそういう顔されるの……好きなんですよね?」
「……えへへぇ」
「そのガールズトーク俺がいない所でやってくれないか!?」
流れるように早霧が割って入って俺をからかったかと思ったら、そのまま椅子の背もたれと机を持って落ちないように耐えている草壁と恋バナのようなものを始めた。
しかも話の題材が俺っていうのが特に重要で、恥ずかしさに拍車をかけている。
「わ、わかりますよぉ……わ、私もちょっと怖い顔で私のことだけを想って迫ってくれてそのまま押し倒されて首に手を添えられたらと思うとですねぇ……」
「お、思うと……?」
「思うな!!」
「ひょわぁっ!?」
そのまま危険な話に足を突っ込もうとしたので、その小さな肩を掴んで物理的に引き戻して姿勢を正して椅子に座らせる。
ずっと椅子から落ちそうになりながら際どい話をしていた草壁は、俺が思っていた以上に愉快で変な女子なのかもしれない。
「早霧も! あまり変なことを聞くんじゃない! 影響されやすいんだから!」
「えー? そんなことないよー?」
どの口が言うのだろうか。
厚樹少年とアイシャを見てめちゃくちゃ影響を受けていたというのに。
「そんなことあるんだよ……まあそれは置いておくとして、草壁」
「…………」
話を元に戻そうと視線を移す。
すると草壁がフリーズしたように固まっていた。
「……草壁?」
「ひょわっ!? な、何ですかぁ……!?」
声をかけるとすぐに動き出す。
零か百でしか動けないのだろうか。
「どうして学校にいるのか聞こうとしただけなんだけど……固まってどうした?」
「そ、そのぉ……ど、同志に強引に引っ張られて……私……き、キュンキュンしてしまいましてぇ……」
「…………」
こういう時、俺はなんて反応すれば良い?
無敵すぎるクラスメイトを前にして、まさか言葉に詰まるとは思っていなかった。
「わかるよ、ひなちん……!」
「お前はこっち側でいてくれ頼むから!」
俺と、早霧と、そして草壁。
この三人組になると二人が暴走して、危険すぎることがわかってしまった。
今は初々しいデートに行ってしまった長谷川とユズルの出来立てカップルに戻ってきてくれないかなと想いを馳せながら、俺は隙を見せると危険な方向にアクセルを踏んで進もうとするこの新生危険コンビをひたすらになだめるのだった。
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※作者コメント
お知らせ。
前話の作者コメント欄で書いたように、現在の最終章が確実に終わらないっていうかこれからもまだまだお話が続くので、章を分割させていただきます。
詳細は以下↓
①現在
最終章 俺たちはずっとキスをしていたい
第132話~第183話~この作品が完結するまで。
②変更後
第6章 俺たちは幸せを分かち合いたい
第132話~閑話6まで
(具体的には蓮司が早霧でエッチな夢を見てからラジオ体操で厚樹とアイシャが離れ離れになることを知り、家に帰ってスク水家族会議をした後に早霧の家でイチャイチャを早霧ママに見られて解散した後に早霧からエッチな下着の自撮りを送られるまで)
第7章 俺たちはもっと仲を深めたい
第153話~第183話~作中でこの日が終わるまで。
と、なりますのでこれからもよろしくお願いいたします。
ゆめいげつ。
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