第3話『UNKNOWN③』

「こ、これは!?」


コウの隣にいた司祭の一言に皆が水晶に注目する。


『UNKNOWN』


不明、あるいは未知と言う意味を持つ。

それが表示された事に誰もが困惑していた。


「・・・これも神のお導きか」


司祭は神へと祈りを捧げる様に手を組み天を見る。

そして、コウヘと向き直した。


「未だ未知の職がこの世界にはあります。あなたの未来は多くの可能性に満ちている事でしょう」

「ありがとう・・・ございます」


恐らく、この世界に本来存在しないジョブは表示されないのだろう。

それを司祭は未知のジョブだと勘違いした様だ。

コウとしてもその方が都合のいい。

全ての適正ジョブが確認される頃には、自分達の事を話し合う者達ばかりでコウへ声をかける者はいなかった。


「驚きましたね、まさかジョブがわからない事があるとは・・・」

「自分でもビックリです。この場合、選択ジョブはどうなるんですか?」

「前例はありませんからね・・・コウ君には申し訳ありませんが、少し時間をいただけると」


帰り道、その様な会話をしたコウは、その日はそのままツキノワへと戻った。


「所持金はまだある。確かここが一泊銀貨5枚で・・・」


アークラムでは、全ての国で共通の通貨が使われている。

銅貨・銀貨・金貨・白金貨・アークコインの5種類からなる。

コウが街の屋台や店で見てきた様子から、ざっくりとだが地球での価格より安めなのがわかった。


(大体、銀貨が1,000円位の感じかな・・・だから、この宿は一泊5,000円。風呂は無いけど食事も3食出るし・・・地球より安いよな)


屋台の食べ物もほとんどが銅貨3枚もしないものばかり、ギルドの依頼を受けずとも1ヶ月近くは暮らしていけそうだ。

もちろん、娯楽に使える様な余裕は無いが。


「とりあえず、シルバさんからの連絡あるまでは余計な事しない方がいいよな・・・今日だって危うく騒ぎになるかと思ったし・・・流石は聖職者、冷静で助かったぁ」


危ない橋を何度も渡る事になったが、今は無事平穏を保っている事に安堵する。

そして、数日後・・・


「コウさん、お待たせしました。ギルドマスターシルバより選択ジョブについてのお話しがあります」


朝食を済ませ、部屋に戻ろうとしたコウに声をかけてきたのは、シルバと同じくスーツに身を包んだ女性だった。

女性の耳が尖っている所を見ると、恐らくエルフなのだろう。


「えっと・・・わざわざありがとうございます・・・あの・・・」

「失礼しました。わたくし、冒険者ギルド副ギルドマスターのミレイユと申します。ギルドマスターシルバは本日手が離せず、私が代わりに迎えに上がりました」


背筋を伸ばし、礼儀正しいミレイユだが、背が高く切れ長の目のせいか少し高圧的に見える。

コウには相手の持つ空気からそんなつもりがない事はわかっていた。

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