最強にされた転生者

紅陽 流美菜

第一章『新たな世界と転生者』

第1話『勝手に最強にされた①』

見渡す限りの真っ白な世界、そこにポツンと置かれた丸テーブルに『八神 虹(やがみ こう)』は座っている。

向かいには金髪の青年、彼は虹に紅茶を差し出すと自らも紅茶を口に運んだ。

それを見て虹も紅茶を飲む、温かい紅茶が気持ちを落ち着かせてくれる。


「落ち着いたかな?」


青年は虹を見て微笑む、顔立ちは日本人の様だが、瞳は吸い込まれそうな深い青色だった。


「えっと、まぁ・・・って言うか、俺死んだはずじゃ・・・」


虹は今までの自分の人生を振り返る・・・

余命3年を告げられたのは30歳を迎えた年の春、原因は未知の病によるものだった。

治療法は確立されておらず、様々な病院をたらい回しにされた。

最後に行った病院にて、徐々に身体が蝕まれている事、このままいけば余命3年である事を告げられた。

ワクチンの開発や治療法確立の為、定期的に通院を繰り返しながら虹は自分の残りの人生をやりたい事に使う事を決め、様々な分野の知識や技術を学び過ごした。

そして・・・


「俺は充分楽しんだよ。だから、最後は笑って送ってくれ・・・」


虹は病院のベッドにいた。

周りには親や友人達が涙を流し笑ってくれていた。


虹の意識はそこで途切れ、次に目が覚めたらこの空間にいたのだった。


「君は間違いなく死んだよ。ここは君がいた地球じゃない。僕の住む、いわゆる天界ってやつかな?」

「・・・天国って事?」

「ちょっと違うかなぁ、君の魂は君の世界の輪廻の波には流れず、僕が引き取ったんだ」


青年は親指を立ててウインクする。

虹は少しイラっとした。


「引き取ったって、あんた何者だ?」

「神様・・・になるのかな、君達の世界のじゃないけど」

「神様?・・・ちょっと待て、君達の世界って何だ!?俺はどうなってる!?」


混乱した虹は立ち上がり自称神様に詰め寄る。

神は両手で虹を静止させると、座る様に促した。


「ちゃんと話すから、まずは座ってくれ。自己紹介を改めて・・・僕は神、名前はない。神は自身の世界を創り出し、それを見守る役目があるんだ。君がいた地球にもいるんだよ?」

「あんたはよその神だって事?」

「そう、僕は地球の神から君をここに連れてきてもらう様に頼んだんだ」

「何でそんな事・・・」

「助けてほしいんだ!」


いきなり神様に助けを求められた。

虹は更にわからなくなっていた。


「どういう事だ?俺は神様を助けられる様な力なんてないぞ?」

「欲しいのは君の知識さ!」


神は満面の笑顔を向けると虹の手を握る。

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