誰かいる?

「……ん、それにしても本当いい拾い物した」


 そう言って俺は目の前を、懐中電灯で照らして先へ先へと進んでいた。

 ふと隣を見ると、何処かキプロスが不安そうな、なんというか……何処か暗い顔をしていた。


「ゴブゴ……」

「ん? どうしたの? 怖いの?」

「ゴブゴ……」

「手、繋いどこうか?」


 そう言うと、キプロスの顔が明るくなった。


「ゴブゴ―‼」

「はいはい」


 そう言ってキプロスの手を握る。


 ……なんていうか、キプロスの手ってごつごつしてないというか……女の子みたいな手をしてるよな。


 ……もしかしてキプロスって……メス?


「いや、違うか。ゴブリンにメスはいないって言ってたし」

「……ゴブゴ~?」

「ん、ただの独り言」


 そうキプロスと話をしていると、ふと後ろで誰かの足音が聞こえてきた。


「ん?」

「ゴブゥ?」


 獣……じゃないな、人の足音だ。


 誰だ?


 そう思いながら後ろに懐中電灯を向ける。



 一人……二人……何人だ?


 そう思ってじっと見つめていると、足音が止まった。


「何だ……?」


 そう、首を傾げた瞬間弓を弾く音が聞こえた。


「伏せてっ!」

「ゴブっ⁉」


 そう言って


 俺はキプロスの頭を押さえつけるようにして伏せさせた。

 その次の瞬間、俺達の頭の上を矢が通り過ぎていく。


「……敵か」


 そう呟き、懐中電灯を消す。


 ……こんなの付けてたらただの的だ。

 ここはキプロスの目を頼りに反撃を……


「……嘘ッ」


 俺は、キプロスを抱きかかえると、地面を転がる。

 

「……この暗がりで正確に狙撃してくるとかさ」


 そう言って、隣を見ると、すぐそこに矢が刺さっているのが見えた。


「……電気消したら、こっちがふりか」

「ゴブゴブ‼」

「……ヤバいかも?」

「ゴブゴー!」

「ちょっと黙って」

「……ゴブゥ」


 そう言って転がされたことに不満たらたらなキプロスを黙らせると、懐中電灯をつけ……


「……走る、いやこうした方が早いか」

「……ゴブ⁉」


 そう言って俺はキプロスをお姫様抱っこの形で抱え上げると走り出す。


「……全く、今日は厄日かな?」


 そう言って俺は、矢の雨を潜り抜けつつ、坑道の曲がり角に身を隠す。


「……よいしょっと、それじゃ、ここから先は自分の足で走ってね」

「ゴブゴー」


 そういって、地面にキプロスを寝かせた俺は、曲がり角から顔を出すようにして、後ろの方を懐中電灯で照らした。


「……人型、そして弓矢……夜目が効いて、大きさは、俺と同じくらいと来ている……か」


 そう言って、俺が照らした先、ゆっくりとそいつらが現れた。


 もう見慣れた緑色の肌に、古ぼけたみすぼらしい腰蓑。

 手に持つのは、さびれつつも、使うのに支障が無い武器の数々。


「……やっぱりゴブリンか」


 そう言って俺は、キプロスの手を引いて走り出したのだった。




――――――――――――――


読んでくれてありがとうなのです!

作者からの少しの宣伝なのです。

新作を始めましたのですよ!


タイトルは『転生したら幽霊船だったので、この世のお宝すべて手に入れてやろうと思います。』

https://kakuyomu.jp/works/16817330665162212961


……知ってます? 船って彼女なのですよ。

是非読んで……コメントいただけたら最高に嬉しいのです!


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