隠し部屋にいた先輩


「……ここは、部屋?」


 光が収まると、そこに現れたのはまるで実験室のような部屋だった。

 壁に追いやられた実験器具や道具たちは、この世界では見たことが無い物ばかり。


 そんな部屋の真ん中には、机といすがセットで置かれていた。


 部屋の中心にある机には埃が被っており、ここのが何年物間使われてなかったことが見て取れる。


「……というかむしろ……もう誰も使わなくなったっていうのが正しいのかな」

「ゴブゴー」


 何故俺がそう判断したのか、それは部屋にその人がいたからだ。

 

 肉はなくなり、瞳は窪み……服はまるで虫に食われたかのようなボロ着……そう、彼は骸骨となってそこに鎮座していたのだ。


「……正直、少し怖かったよ」


 俺はそう言うと、ゆっくりと白骨死体の方へと歩いていく。


「……異世界ものだとアンデットモンスターとしてスケルトンみたいなのがいることがあるけど……君はそうじゃないみたいだね」


 俺はそう言うと、骸骨の前に立ち、彼の手元に目を向けた。


「……ん?」


 彼の手元に大事そうに抱えられたそれを見て、俺は少しの驚きと共にどこか納得した。


「……そう言う事」

「ゴブ~?」

「ん、いや……こっちの話」


 そう言うと俺は、彼の手元にあった懐中電灯を手に取った。


「……コレ、貰っていくね……それと……これも」


 俺はそう言うと、彼の手元にあった本を貰った。


「ゴブゴ―?」

「ああ、ちょっとね……少し気になる物を貰って行ってるの」


 何してるの? とでも言うかのように、首をかしげるキプロスに俺はそう説明する。


「……どうせ使われないんだ。だったら、持てるだけ持って行った方がいいと思うから……よっと」


 そう言って本棚のに俺は手をかけ、いくつかの本をパラパラとめくる。


「……なるほど、やっぱり……こっちも………」


 そう言って俺は、本をカバンに詰めていく。


「……とりあえずはこれくらいか」


 十数冊の本を詰めた俺は、そう言うと本棚から離れてキプロスの元へと戻る。


「……思った以上にいい収穫だった」

「ゴブゴ?」

「ん? これが何の本かって? ……これは……」


 そう言ってキプロスに本を見せる。


「これは魔法について書かれた本だよ」

「ゴブ~?」

「これは、火……風、水……土。四属性の初級魔法について書かれてるんだ……って言ってもちょっと分からないかも?」

「ゴブっ! ゴブゴブ!」


 そう言って笑うと、キプロスはわかるもんっ! というように頬を膨らませた。

 

「ま、とりあえずいろいろと言いもの手に入れることができたっていう事で……そろそろ行こうか」


 俺はキプロスにそう言うと、部屋を出る。


「ゴブゴ~」

「はいはい、待ってるから大丈夫だって」

「ゴブゴブ」


 そう言ってキプロスが部屋の外に出たことを確認した俺は、骸骨を見た。


「……こんな場所で、なんでこんな孤独な生き方をしたのか。俺には全く分かりかねないが。貴方の生き方は……後輩として、参考にさせて貰うよ」


 そう言って俺は、頭を下げ、壁のスイッチを押した。

 その瞬間、ゆっくりと部屋の扉が閉まっていく。

 扉が閉まる直前、俺は骸骨に向かって……


「さようなら、片桐 猛さん……また来るよ」


 そう言ったのだった。

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