大穴の底
大穴の底へと落ちていく俺とキプロス。
「まっずっ……」
空中で態勢を整えた俺は、キプロスを抱きかかえると、壁に沿うようにして転がりながら落ちていく。
「……ぐっ」
ばこんばこんと、体中を打ち付けながら大穴の底に転げ落ちた俺は、うめき声をあげて立ち上がる。
「いてて……」
「ゴブゴ?」
「……ん、僕は大丈夫。キプロスは?」
「ゴブ~」
そう言って、キプロスの体を確認するが……良かった。どこも怪我をしてないみたいだね。
ふと上を見上げると、大穴の上はだいぶ高い。
「……どうしよ」
そう言って俺は思わず、頭を抱えてしまう。
がけをのぼる……いや、無理がありすぎる。
この高さはさすがにきつそうだ、それに……
「ボロボロだ」
壁はまるで柔らかい泥のようになっており、触れた瞬間ボロボロと崩れ去ってしまう。
「……どっちみちこんなのじゃ、登れないな」
「……ゴブゴブ~!」
「……ん? どうしたの、キプロス」
他の脱出方法を探っていると、キプロスが何かに気が付いたようで、俺の事を呼んだ。
「ゴブー」
そう言ってキプロスが指示した先には、小さな洞窟が見えた。
「洞窟……?」
「ゴブ~、ゴブゴ」
そう言って、キプロスに手を引っ張られるようにして洞窟へと近づいて行くとそれがただの洞窟じゃ無い事に気が付いた。
「……これって、坑道?」
「ゴブ~」
洞窟の中に入った瞬間、目についたのは道の中に作られた坑木だった。
「……坑道か」
仮に自然に作られた洞窟だったら、地上に通じているかどうか分かった物じゃない……が、坑道は人間が掘った穴だ。
もちろん当たり前だが、地上に通じてる。
「……うん。行けそう」
「ゴブゴブ~?」
俺がそう言って頷くと、キプロスは何か言うことはあるんじゃない? とでも言うような顔をした。
「はいはい、ありがとう」
「ゴブ~!」
そう言って喜ぶキプロス。
……まったく、こいつって奴は。
「……ふふっ、まあ君のせいで穴に落ちたんだけどね」
「ゴブ~⁉」
「さ、行くよ」
「ゴ、ゴッブゴー⁉」
そう言って鉱山に足を踏み入れようとした時……俺は、ふと視線を感じ大穴の外を見た。
……誰かに見られてる?
いや、気のせい……?
「……ゴブゴ?」
「あ、いや……何でもない……さ、行こうか」
「ゴ、ゴブゴッ//」
「……気のせいだったら、いいだけど」
そう言って、俺はキプロスの手を握ると少し駆け足で行動の中へと入って行く。
……
………………
「グギャギャギャ」
「ギャオー」
「ギャッギャッギャギャ」
二人坑道へと消えていったのを見送った、緑色の小鬼はそう言いあって森の中へと消えていったのだった。
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