四十三話 古都づて

京都府篠塚にある敷島神社の境内に敷き詰められた銀杏の葉。

入口の鳥居から銀杏の葉をゆっくりと注意深く観察しながら歩く少女。

何かを見落とさないようかの如く。

実際、彼女はあるものを探していたのだ。

鮮やかな黄色の銀杏の葉に紛れている赤い銀杏の葉を。

それが彼女にとって何を意味するのかはまだ知る由も無いのだが。

小枝で葉をかき分けながら丁度七往復した辺りでようやく赤い銀杏の葉を見つけた。

だが厳密にはその赤い葉は植物ではなく造花の類である。

彼女自身が赤い葉を求めているのではなく、所謂使いである。

では少女に使いを頼んだのは誰なのか?

それは現時点では明かすことは出来ないが女性だという事だけは述べておこう。

しかし少女が見つけたのはまだ一枚だ。

依頼されたのは赤い葉を四枚見つけて帰る事。

溜息をつきながら四枚全て見つけ終わったのはもう夕暮れ時であった。

赤い葉を小さいポーチにしまい駆け足で神社を後にする少女だった。

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