キング・ゾディアシズム手稿

石川タプナード雨郎

第3の目

ベッドに横たわる女がいたのだが気のせいか?

指の第二関節に少し違和感を覚えたが、今は後回しにしておこう。

それ以上に気になるのが頭の右側頭部の辺りに鈍痛がある。

耳鳴りも若干だがあり、左手が白い粉のようなもので汚れている。

「カーク!スポッターはどうした?」

「奴は残念ながら裏切り者だったから退場してもらった」

「そうか、なら仕方ないが、で、首尾は?」

「はい?」

夕方から降り出した雨は、あと少しで止みそうだが油断は出来ないな。

完全に止んでくれないとマシンが正常に機能しない。

まあ今回は、、、70%位の回収率を、見込む確率なのでは?

「只今、臨時ニュースが入りました!」

「昨夜未明、某アイドルグループの柿崎楓子メンバーが失踪した模様です。」

「詳しい経緯などは不明ですが、既に警察に捜索願を提出済みとの事です。」

「続報が入り次第お伝えします。以上、事務所前から中継でした。」

棋王戦、第八局の開始と共に、京王プラザビルの屋上から標的を狙っていた

吉良はスナイパーライフルの引き金を鋭く絞った。

それと同時に吉良は意識を失った。着弾の目視は出来ていない。

その刹那、柿木の囲炉裏の前で茶をたてている最老猛禽卿は

二日前から苦虫を噛み潰していた。

ふん、茶に心が現れるとはよく言ったものだ。確かに心の乱れは

茶の攪拌に多大な影響を及ぼす。まずいったらありゃしない。

今、茶室にいるのは私だけ。攪拌を終えた茶筅を障子目掛けて思い切り

投げつける。放たれた茶筅は数回回転した後、障子を突き破り、廊下へ

落ちた。音もなく。障子に飛び散った深緑の茶が鮮やかだ。

味は褒められたものではなかったが、まあいいだろう。

隣室に拘束している女に仕込んだバイブレーターのリモコンのスイッチを

徐に作動させた。

「ふぐっ!」ボールギャグを噛ませてあるので言葉にはならない。

「あんっ!」しばらくは芳醇かつ麗しい調べに耳を傾けようか。

猛禽卿の右肩の少し下辺りに垂らしてある琴糸をゆっくりと下へと

力を込めた。欄間を通して隣室に向けられた琴糸の先には

隣室で開けた乳頭の先の洗濯バサミに連結しており絶妙の加減をもって

抵抗を楽しむ。その度に漏れる声、喘ぎは何物にも代えがたい代物だ。

左手で持っていた茶碗の残りを飲み干すか否か迷うが、一気に喉に

流し込んだ。それと同時に琴糸を勢いよく引き絞った、刹那。

かろうじて抗っていた洗濯バサミと乳頭の摩擦が解放された瞬間、

隣室の女も開放され、しばしの痙攣と共に絶頂に至った。

「んっんぅんーっ」

3years ago...

この図面通りのものは作れるか?

「なんです、これ?」

「長い事この商売やってますが、こんなのは見た事無いですが」

「まあ、出来ると思いますよ。ですが時間は、、、」

「そうだな、一か月を頂かないといけませんが?」

「わかった。出来次第連絡をくれ」

シンシア山脈の北西に位置する標高2876mの登山に入ってから

既に三日目。猛吹雪で身動きが取れずに8時間経過。

そうだな、精々あと7時間がリミットという所か。

せめて時間くらいは平等に進んでほしいものだな。

豆から惹いたコーヒーを飲みながら煙草に火を付ける。

およそ半日ぶりにニコチンは痺れる。

「ドウッン」

数十メートル先で低く鈍い爆発音のような音がした。

「んっ? なんだ? 」

「次いで、川のせせらぎのような音がしだす。」

「まずいっ!」

慌ててテントから顔を出し外を窺う。急いでリュックを背負いテントの外に出たが、

あそこの岩場に走るしかなさそうだ。17秒後には視界は全て白い闇に包まれた。

ホワイトアウト。

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