底辺ロミオと高嶺のジュリエット
@Contract
第1話 人生を分ける5段階評価
「いよいよ明日か、Dランクにならなきゃいいけど」
「
「その自信はどっから来んだ?」
「政府国民管理局の方からかな」
「うわ、具体的」
どこにでもある平凡な街並みを夕日が照らしている。
整備された道に沿うように並ぶビル群。
改札や電車の音が微かに聞こ、それに合わせてスーツを着た大人達がせわしなく通り過ぎる。
「にしてもみんなソワソワし過ぎじゃない?小学生の遠足前じゃないんだからさ」
「しょうがないだろ、メール一つでこれまでの努力と関係なく人生が決まるんだ」
「別に死ぬもんじゃないし、皆考えすぎなのよ」
政府が国民にAIによるランク付けを始めて数十年が経つ。初めは国民の反対が多く中々進まなかったらしいが政治への不安。
また、AIの浸透によって徐々に試験的にランク制度が試され始め、今では職業選択に結婚、受けれるサービスに見れる情報にまでランクによって決められている。
「
「だってカッコ良くない?」
「カッコイイけどさ」
まあ実際何だかんだ言ってこれで頭がいいからテストでいい点取るのが腹立つ。
人は改めて平等ではないと思う。
こうなった原因の責任者は誰だろうか。
自堕落な僕のせいか。
「親がBだし、下がってもDが限界でしょ」
「そうは言っても大体半分は他のランクに代わるし、Eになる可能性もゼロじゃないじゃん」
「そんな事言ったって今更どうしようもないじゃない、それに試験に受かれば上げれるわ」
ランク付けに至っては明確な定義付けがされていないが、町中にある監視カメラや学業の成績を反映させ、その人の学力に性格、能力を測り反映しているというのが一般的だ。
また、上のランクに上がる可能性があれば試験を受ける事が可能で、試験内容は人によって代わる。
現在18歳でランク付けされ、それぞれのランクにあった授業を受け20で歳で卒業し働く。
そんな社会ではいじめが起こるのでは起こるのではと懸念されていたが結果は起きなかった。
いじめをすれば監視カメラやデータに何かしらの情報履歴に残る、性格的に難があるとされランクを落とされる事が確定である。
「確かにそうだけどランクが上がった人間なんて数えるほどしかいないじゃん」
「じゃあその数少ない人間になるのが私よ」
「その自信の一割でいいから分けて欲しいよ」
軽くため息を吐くと僕たち二人の間に沈黙が流れる、でもそれは居心地の悪い物ではなくむしろ心地よさすら覚える。昔からずっと一緒だったからだろう。
少ししてからふと思い出して口を開く。
「帰りなんかパーティーとかに誘われてなかった?」
なんとなく皆この通知が来る時期は仲の良い人を集めてパーティーを開く。
ランク公開前のソワソワを忘れたいのもあるのだろうが、仮にランクが違った時に疎遠になる可能性もあるからだろう。
ランクが違うと付ける職業や、使えるサービスが変わってくるため授業のカリキュラムに差が出るため、どうしても人間関係に影響が出る。
「いつものやつね、私はそのいいのよ。今日は用事があったし、また後でやるのにお呼ばれしてるし。あなたこそ誘われてたんじゃないの?」
「僕も同じだよ。今日は用事がね。」
何が用事がだ。天音と一緒に居たいからだよなんて口が裂けても言えない。
互いが何を考えているか分かっていて、そしてその時間の長さが邪魔をする。
壊したくない。
普段は沢山の軽口が出てくるのに、君の前だといつもこうだ。
風が吹き彼女の長く手入れされた美しい髪がなびいく。
「・・・髪伸びたな」
数年前までは手入れが面倒だと言って余り伸ばしていなかったはずだ。
「まあね、どう似合ってるかしら?」
クルリと回りいたずらっぽく笑う彼女に目を奪われる。
ずっと一緒に居るのにまだ好きになる。
「似合ってる」
気がついたらこぼしていた。
「・・・え?」
「あ、いや、冗談!」
「ビックリさせないでよ、おだてたって何も出ないんだからね」
「はは」
どうして素直になれないんだろうか。
気恥ずかしさを感じさせてくなくて慌てて話題を探す。
「ロボット工学の授業でロボットは権利を持てるのかって宿題が出たんだ。天音はどう思う?」
「ロボットだから無理じゃない?」
「でもさ、人の形をしていて一緒に笑ったり泣いたりしたりしたら、ただのロボットとは思えないんじゃない?」
「情がわくとは思う、権利を持たせてしまうと後が怖いって言うのが本音かしら」
「もう少し明るい未来を見ようよ」
「さっきのあなたにそのまま言ってあげたいセリフね」
「それはごもっとも、でも感情を持った試験型がもう何体か作られてるらしいよ」
「面白いわね、合って話してみたいわ」
「権利反対という割にはそうゆうのは興味あるんだね」
「好奇心と倫理は別腹よ」
「最悪の別腹だ」
分かれ道が近くなる、ここを別れてしまうともう後は互に別の道で帰るだけだ。
「久しぶり秘密基地に行こうと思ってるんだけど一緒に行かない?」
「いいけど、また随分といきなりだね」
どこかに誘おうと思ってたからありがたい話なのだが。
「今日行けないと二度と行けない気がしてね」
「なにそれカッコいい」
彼女の家から20分ほど歩くと取り壊されず廃墟になっているそこそこ大きな3階建てのショッピングセンターがある。
中に入れないように柵と監視カメラが何か所かあるのだが、柵は古く一部壊れているのでそこから入れる。
監視カメラは郊外とゆう事もあって少なくなるので、上手く映らないようにすり抜けていく事が可能だ。
「よくここまでの物を作ったわね」
「みんな凄かったかしね、今は何をしてるんだか」
今でもここは胸躍る場所だ、お店ごとの仕切りが残っていてその仕切りごとに道具やする事を決めている。
まずは一階、罠やトラップが至る所に置かれていて、場所を覚えておかないと2階まで上がれない。
たまに忘れてて引っかかるんだよなぁ。
そうしてもう動かないエスカレーターで2階に上がる。
お店ごとの仕切りが残っているのだが、その仕切りごとに道具やする事を決めていた。
僕らが居る二階は金槌にのこぎり、旋盤に溶接まで備えた工具エリアにキャンプ用品が置かれたエリア、移動用の自転車や電動バイクが置かれた乗り物エリアなどがある。
ここで大抵の物は作れるし、大抵の物は揃う。
そして、人目につかない従業員用の階段を上がるとついに秘密基地最終部、3階の司令室だ。
「やっとついたわね」
「子供の頃は何も感じなかったっけどこの年になるときついな」
三階には備蓄可能な食料品に、日用品。
館内の監視カメラにアクセス可能なパソコン。
今では所持が厳しくなったガスガンに、スタンガンなど立てこもりを考えた物が置かれている。
まあ防衛装備なんてカッコよく呼んでるが、趣味ので持ち込んだ奴の物だったりする。
「やっぱりみんな、合わないだけでたまに来てるみたいね。埃は被ってないし知らないアニメのフィギュアがまた増えてる。」
実はここに趣味の物を隠したり、寝泊まりしている人も多い。
何を隠そう俺もその一人だ。
「下手に触ると
「分かってるわよ、あいつ昔から色々うるさいんだから」
「よくケンカしてたもんな」
「いちいち気にしすぎなのよ、あいつ」
ここの監視カメラやインターネットの設備を管理しているのが彼だ。
頭は間違いなくずば抜けているけど、その分こだわりが強い。
あの時の事を思い出したのか、ぷくっと顔を膨らませる。
「そんなケンカをいつも止めてたのが
「あの子は優しすぎなのよ、前にここで掃除してるのにばったりあったし」
「いいなぁ、俺も会いたい」
可愛いいんだよなぁ。羊がそのまま人間になったみたいな。
のほほんとしていて見ているだけで癒される、こころたんマジ天使。
「女の子に別の女の子の話は地雷よ、だからモテないのよ」
「別に今のは会話の流れとしておかしくないじゃん」
「正論は嫌い」
「そんな理不尽な」
「まあ、学校が違うとどうしても会う機会は減るわよね」
6年間の普通教育が終わると親のランクに応じて通える学校も選べるため、ほとんど皆がバラバラの学校に通う事になり日程が合わず皆集まる何て事はまずなかった。
「そしてそんな可哀想な白井にサプライズ!明日に創太と心が6時に来るわ」
「それは驚いたけど、お前創太と連絡取ってたんだな」
「う~ん、まあね」
何とも言えない顔を浮かべる。
あれ、もしかして
「創太と付き合ってる?」
「そうんな訳ないでしょ」
呆れ顔でを浮かべ俺を睨む。
そうか良かった…。いくら親友とは言え好きな人とくっついてたとか笑えない。
「今は付き合ってる人はいないの?」
「いないのは知ってるでしょ」
「一応気になるじゃん」
「ファーストキスはもう済ませちゃったけどね」
「え、え!?」
あー終わった、青春終了のお知らせ。いや、待て待てまだ慌てる時間じゃない。
多分父親とかそうゆう落ち。
「ちなみに私の親とかじゃないわよ」
お前俺の心読めるの、てかいやいやいやおかしいおかしい僕が先に好きだったとかそうゆう同人展開要らないってゆうかそいつを今すぐ俺の前に連れて来い。
この世の苦痛とゆう苦痛すべてを味合わせてから、鬱展開の作品ベスト100位をやって理想を抱いて溺死して欲しい。てゆうかあれだ、この世の可愛さと美しさを全て合わせた彼女の唇を奪うとかなんかの罪だろ、刑務所に連れていくしかないな、弁護士は俺だ。ありったけの悪意をもう終わってもいいっていい感じでぶちまけて一緒に刑務所で暮らしてやる。タイトルは刑務所暮らし!だ。異論のある奴いる?いねーよな!
「なんか色々考えている所悪いけど、相手はあなたよ?」
「そうか、そいつかぁ!今すぐ殺す!」
「大胆な自殺ね、ちなみに10歳の時に家でした私を探しに来て一緒にここで寝た時よ」
「え、あの時そんなことしたっけ?」
「あなた寝てたもの」
「まじか」
もう怒りと、嬉しさと、驚きが一気に来て頭が働かない。
「じゃあ今度はあなたね」
目を閉じて顔を上に上げる。そうゆう事だろう。ここまでさせておいて逃げては男じゃない。
目を閉じてそっと顔を近づける。
鼻息荒くないよね?
てか歯あたるんだっけ、えっとあ、顔近い。
…もう考えなくていいか。
唇に柔らかい感触と温かさが伝わる。
あ、ダメだ。
顔をゆっくりと離す。
天音の顔はが赤く色づき、目を下に落とした。
普段自信の塊みたいな彼女があの彼女がだ。
「もう一回していい?」
「確認何てしなくてもいいわよ」
独占欲に駆られ、今度は少し強引に肩を抱き寄せ、キスをする。
「んっ」
体から先ほどよりも緊張が取れて幸福を感じる。ずっとこうしていていていたい。
どれくらいたっただろうか、体をグイっと押されて離される。
「長すぎ!」
「あ、ごめん。幸せすぎて」
「私も幸せよ」
「いつになく素直だね」
「お互いさまでしょ」
この後どうしよう、いやてかもう抑えが効かない。
「えっとさ・・・」
「この続きなら今日はもうしないわよ」
「うっ」
やべえ、読まれてる。がっつきすぎて嫌われた?
「ごめん、いきなり過ぎた」
「正直ね、私もしちゃいたいけど用事があるって言ったじゃない。今日は家族とご飯行かなきゃなのよ」
時計を指さすと6時を回っていた。
「だからね、続きは次にあった時にね」
ドアに向かって歩き始める。
「分かった、それと今更だけど好きだ天野、ずっと一緒に居て欲しい」
ドアに向かう足が止まる。
「私も好きよ白井」
そう言うと足早にドアから出て行く。
「ちょっと待ってよ!」
この時の僕は考えておくべきだった。微妙に嚙み合わない会話と彼女の真意を。
だって仕方ないだろ。その時はただ馬鹿みたいに嬉しかったんだから。
次の日、僕のランクはEである事を伝えるメールが届き、天野は学校から居なくなった。
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ランクの区分はABCDEの5段階です。
説明補足は毎回ここで書かせて頂きます。
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