スキルと魔法

 カイは疑問に思ったので、リーヴに質問をしてみた。


 すると、リーヴはこう答えた。


「それはお前自身のスキルのおかげだ」


(え? 俺のスキル?)


 カイが不思議に思っていると、それを見たリーヴはさらに説明を続けた。


「お前のステータスには『回避率上昇』というスキルがあっただろう?」


「え? はい……」


(あれってそんな名前だったのか……)


 カイは心の中でそう思いながら頷く。

 するとリーヴはさらに話を続けた。


「そのスキルのおかげで、お前は俺の攻撃を躱すことができたんだ」


(へぇー、そうなのか)


「まっ、仮に俺がお前の攻撃を食らってもほとんど効かないけどな」 


「え? なんでですか?」


 カイは思わず聞き返してしまった。

 すると、リーヴは自分のステータスカードを見せながらこう言った。


「俺は『物理耐性』と『魔法耐性』のスキルを持っているからな」 


(なるほど。そういうことか)


 そう思ったカイだが、それと同時にある疑問が浮かんだ。


(でもそれってどれくらい効果が続くんだろう?)


 しかし、その疑問をリーヴにぶつける前に彼は話を再開してしまった。


「さて、話を戻すがお前のスキルは『回避率上昇』だけか?」


(え?)


 カイは一瞬戸惑ったのだが、すぐに自分のステータスカードを確認するとこう答えた。


「あ! あと『状態異常耐性』っていうのがあります」


(あれ? もしかしてこれって結構便利なスキルなんじゃ……)


 カイはそんな事を考えながらも、リーヴに自分のステータスカードを見せた。


 すると、リーヴはこう言った。


「それは便利なスキルだな……」


(えっ! 便利なスキルなのか?)


 カイは不思議に思ったが、とりあえず相槌を打っておいた。


「でもこれ、どうやって使うんですか?」


 すると、リーヴはこう答えた。


「それはだな……自分で確かめろ」


 そんな適当な答えを聞いてカイは思った。


(やっぱりこの人適当だなぁ……)


 そしてこれ以上聞いてもあまり良い答えは期待できないだろうと思い、とりあえずこの訓練に集中することにしたのだった。


「じゃあ次は、お前に攻撃魔法を教える」


 リーヴはそう言うと、カイに向かって呪文を唱えた。

 すると、彼の目の前に大きな火の玉が現れた。


「うわっ!」


 カイは思わず驚いてしまったのだが、そんなカイを無視してリーヴはさらに呪文を唱える。


「《火球ファイアーボール》!」


 とリーヴが言った瞬間、火の玉が勢いよくカイに向かって飛んできた。

 それと同時に彼は反射的に手に持っていた盾を前に出しながら後ろに下がった。

 すると、カイの盾に当たった瞬間、火の玉は爆発したのだ。


「ぐわっ!」


(うっ……)


 カイはその衝撃で後ろに吹き飛ばされてしまった。


(痛てててて……)


 そう思いながらもなんとか立ち上がろうとしていると、リーヴがこちらに向かって歩いてきた。


 そしてこう言ったのだ。


「今のが魔法攻撃だ」


 そして続けてリーヴはこう言った。


「ちなみに、今使った『火球ファイアーボール』の消費魔力は10程度だぞ」


 リーヴの言葉を聞いてカイは思った。


(それは少ない方なのか? それとも多い方なのか?)


 しかし、今はそんな事を考えている場合ではないので、カイは質問することができなかった。


「今の攻撃で分かったと思うが、お前は魔法耐性が低い。だから魔力の消費が少ない魔法で練習するぞ」


「はい……」


 カイは素直に返事をした。

 そしてリーヴに質問する。


「あの……魔力の消費が少ない魔法ってどんな魔法ですか?」


「まあ、色々あるが……まずお前が最初に練習するのは『風刃列覇シャイド』だな」


風刃列覇シャイド?)


 カイは一瞬戸惑ったのだが、とりあえず試してみることにした。

 しかし何をどうすればいいのか分からなかったので、カイはリーヴに質問することにした。


「えっと、どうやればいいんですか?」


 すると、リーヴはこう答えた。


「とりあえず手を前にかざして……『風よ、鋭い刃と為せ、彼の者を切り刻め』と心の中で唱えるんだ」


(なるほど、そうやって唱えるのか)


 カイは心の中でそう思いながら、言われた通りにやってみた。

 そしてしばらく沈黙が続いたが、やがてカイの目の前に小さな風の刃が現れた。


「おお! できた!」


 カイは思わず声を上げた。


 しかし、リーヴは冷静な口調でこう言った。


「それはすぐに消えてしまうから、魔力を注ぎ込んで大きな刃を作るんだ」


(なるほど……)


 カイはそう思うと、言われたとおりにやってみることにした。

 そして数秒後、風刃がさらに大きくなり始めたのである。

 それを見たカイは驚きながらも叫んだ。


「うわぁ! すごい!」


 するとその様子を近くで見ていたリーヴも驚いてしまったのだ。

 なぜなら彼が見た限り、カイが使った風刃は上級レベルのものだったからだ。


「おい! お前! それは上級レベルの魔法だぞ!?」


(え?)


 カイは一瞬戸惑ったのだが、すぐに自分が使っている魔法が上級レベルだと理解した。


(あれ? これってそんなに凄い魔法なのか?)


 カイがそう思っていると、リーヴが話しかけてきた。


「お前、今のはどうやってやったんだ!?」


 その質問にカイは一瞬戸惑ったが、こう答えた。


「えっと……なんとなくです」


 するとそれを聞いた瞬間、リーヴは呆然としてしまった。

 しかし、しばらくすると我に返ったのかすぐにこう言った。


「まあ……とりあえず魔法の使い方は分かったようだな」


 リーヴの言葉にカイは頷いた。


「はい! リーヴさんのおかげです!」


 するとそれを聞いた瞬間、リーヴはどこか嬉しそうに微笑んだ。


 そして最後にこう言った。


「よし、じゃあ今日の訓練はおっしま~い」


(え?)


 カイは一瞬驚いたが、すぐに冷静さを取り戻してこう言った。


「あ、はい。ありがとうございました……」

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