洞窟少年

八雲真中

第1話~効いたよね、早めのお布団~

 社会はいつもそうだ。学歴学歴学歴学歴。学歴だけで人の価値が測れるわけじゃないのに学歴ばかりを優先する。俺は勉強が嫌いだ。東大生は勉強が好きだ。ただそれだけの違い。ブラック企業で働いている身からしてみれば一度経験してほしいものだ。

「また残業か。残業代出さねえくせして偉そうに……」

 俺の名前は、木下健斗。どこにでもいる普通の少年。16歳である。勉強が嫌いなのでみんなとは若干早く社会に出たのだ。

「ふぅ……今日も働いた……」

 次の日もまたその次の日も仕事。ならば、早めに布団に入ってやる。なぜか今日は早く寝れる気がする。

 翌日、俺にとっては嬉しい知らせが届くことになる。

「今日、休み……休み休み……っしゃあ!さあ何しよう!」

 ここに来てすることがない。はて、俺は何をするべきなのか? 俺にはこれといった趣味があるわけではない。

「最近、庭の手入れ、してなかったからしようかな」

 結局することは労働……。変わらないなぁ、いつもと。ん? 待てよ?

「何だ、あれ?」

 そこにあるのは今まで無かったはずの大穴。

「カラスか何かがほじったのか?」

 覗いてみる。不気味だ。音がしない。まあ、当たり前か。でも、興味ある……かも?

「入ってみよ……っとわああああ!」

 思ったより深かった。お尻の方を強打した。

「っててて」

 それにしても静かだな。誰もいない……のか?

「おーい! 誰かー! 誰かいませんかー!」

 返事がない。

「いないのかよー!」

 すると、後ろからスパッという音が聞こえた。壁に刺さっていたのは

「……矢? 何で?」

「ケケケケッ! 俺たちのアジトへようこそ! お前を食い物にしてやる!」

 骸骨が弓やら、刀やら、棍棒を持っている。

「だ、誰だ! 化け物っ!」

「化け物扱いをするでない! 俺たちは骸骨種骸骨科の『スケルトン』様だぞ!」

 スケルトン。中世ヨーロッパなど世界各地の伝承に登場する怪物の1つで、人間のように動く骸骨のこと。西洋の伝承の怪物の中でも、一度死んだ者が甦って動き回るものは「アンデッド」と呼ばれており、スケルトンもこのアンデッドの一種とされる。

「その前に一個聞いていい?」

「な、何だ」

「これって俺倒されるタイプ? 勝ち目ないじゃん?」

「……知らんわ!」

「ここって結局どこなの?」

 これが一番気になるところだ。

「ここがどこか分からずに来たのか、バカ者。ここは第一洞窟。世界の洞窟エリアの中でも一番大きい洞窟だ。俺はここの偉い人って立ち位置だな」

「ほえぇ。つまり他にも洞窟はある、と」

「あるな。俺はあまり知らないが、ここから進んでいくごとに魔物がうじゃうじゃいるらしい。特に、第十洞窟。俺たちの仲間はいるし、ヤバい魔物もいっぱいいる。」

「さっきから言ってるけど、第なんちゃら洞窟って何なの?」

「洞窟の分類だな。第一洞窟から第百洞窟まであり、その中には荒れ果てた地や、死体、砂漠までもあると言われている。悪いことは言わねえ、さっさと帰りな」

 帰るわけにはいかない。魅力的すぎる、この洞窟。

「……ありがとう、スケさん。俺行ってみるよ!」

「お前ってやつは……。名前は?」

「木下健斗です! ブラック企業で働いています! よろしくお願いいたします!」

「ケントか。これを持っていけ」

 手渡されたのは、ピストルだった。

「銃刀法違反ですよ、スケさん」

「ここにそんなもんはねえ。RICH-49だ。第六洞窟で作られていたピストル。それを持っているのと持っていないのでは天と地ほどの差がある」

「ありがと、スケさん」

「……死ぬなよ」

「もちろんです!」

 後ろを向いて走っていく。スケさんの声がかすかに聞こえた。「あのバカ野郎」と笑っていた。

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洞窟少年 八雲真中 @Ryukyu_KohaKu

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