第49話 寝顔 1
味方の戦士団も、そして領兵も押されていた。これだけ数に差があるというのに。
――まさかお兄さんがやられたということは無いだろうけど……。
そんな恐ろしい考えは頭を振って捨て去り、私に今できることをする。
まずは
私は
――虚栄にも頭を使える者が?――そう思ったけれど違った。
「ルハカ様!」
手を上げ声を掛けてくる男女二名の
「――ルハカ様! 我々は正気です! 撃たないで」
「あなたたち、大丈夫だったの!?」
「ええ、長い間拘束された上に団員が皆いがみあっていて正気を失いそうでしたけど、何とか我慢しました。ジルコワルにも
「わかりました。
「承知」
ひとりは
「まだ何か?」
「その……エリン様が……ルシア様に斬られました……」
「何ですって!?」
「突然だったのです。ルシア様の状態がまともではなく……」
「わかりました。でも今は援護が先です!」
「承知!」
ルシアがおかしいとは聞いていたけれど、まさかエリン様にまで……。
私は危険を分かったうえで
そして
私は置き土産のように
「援護します! 退却なさい!」
私は
◇◇◇◇◇
ロハラの軍がなんとか側塔の向こうまで下がっていったことを確認すると、私はお兄さんを探して引き返した。敵の数は多い。早くお兄さんを探して撤退しないと……。
途中、取り残された領兵を助け、川の方へ身を隠せと指示しながら進むと、
不意打ちは状態異常の効果も高い。団員はそのまま気絶する。
大柄な男――
「ルシア! お兄さん!」
ルシアはお兄さんに抱えられるようにして――。
むっかぁぁぁあああ!
私が苦労しているというのにルシアはお兄さんにベッタリくっついて幸せそうに寝入っていた!
「殴りたいこの寝顔……」
お兄さんはと言うと服が焼かれてボロボロだった。
お兄さんは戦闘前に
ルシアの傍には空になった平皿とそれはそれは大きい虚栄の花があった。
たぶんお兄さんだ。グズルーンに頼んだのだ。
「ルシア! 起きなさい! 起きろ!」
私はルシアの半身を無理矢理起こし、揺さぶった。
ぼんやりとした表情で目を覚ますルシア。
「あなたはだあれ?」
「えっ?」
ひっぱたいてやろうかと思ったけれど、あどけない表情のルシアに尻込みする。
「兄さま? 兄さまどうしたの!? 兄さま!」
お兄さんが倒れているのに気が付いたルシアはお兄さんの頬に手を当てる。
「……ルシアか。ルシアは大丈夫か?」
お兄さんも薄っすらと目を開け、呟く。お兄さんの言葉に安心したのか、ルシアはお兄さんに抱きついた。
「兄さま……兄さま……」
頬を擦り付けるようにしてお兄さんに抱きつくルシア。
ルシアずるい……。
「ルハカ様!
元
そうだ、まだ戦場だった。
頭を上げると周りの
私は再び
――ただそれは、丘の上からのラッパで風向きが変わった。
撤退の合図だ。
丘の上からの撤退の合図でこちらに向かってきていた戦士団は足を止める。
何が起こったのかと見上げると、三騎が向かってきていた。
「争いをやめよ! 全軍撤退だ! 争いをやめよ!」
叫ぶのはウィカルデともう一人の
そしてその後ろに居るのはエリン様だった。
撤退を指示され、一時は止まっていたものの、20名ほどの
ただ、そこへ馬を駆って駆け込んできたのはエリン様だった。
馬が眠りの魔法にかかり、落馬するのも気に留めず立ち上がったエリン様。
「やめよと言っているのだ!」
エリン様は
エリン様は戦士と言ってもそれほど体格があるわけではない。しっかりとしたプロポーションではあるけれど、あくまで女性的な美しさのプロポーションだ。鎧を纏っていてもその辺の戦士とくらべてずっと細身だし、女性らしい腰のラインに合わせて仕立てられた
そんなエリン様が
実際に
長剣を鎧で受けながら、正気ではない
十余名の
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ピンチに颯爽と駆け付けた暴力系女子!
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