11 虹の彼方①
11 虹の彼方
「一応さー、種明かしを聞かせてもらっていい? お約束っしょ?」
ふわふわと浮いた
「私は探偵じゃない。だから、勘よ」
「ギャハハハ! 勘だけで”友達”を犯人されたし! 地味にショックなんすけど! フツーそこは庇うと葛藤するとかするんじゃね? マジヤバいんだけど!」
「そもそもの話、今回の件は何もかもが出来過ぎているのよ」
仮想世界における白い殺人鬼との邂逅とそれによるネット障害、顔無しの郷と記憶消去、ムジナの思惑、イーとの再会。
「それらはイーとムジナが裏で仕組んでいたこと。私だけが蚊帳の外で鳥籠に閉じ込められたお姫様みたいに賞品にされていた。でもね、本当にそれだけなのか? むしろイーとムジナは偶発的に起きた出来事に利用、あるいは便乗する形で今回の件の登場人物になった」
統計的に明らかに低いことも連続すれば、偶然ではなく何かしらの原因があると思うのが自然だ。例えば、誰かによる意図的な企みとか。
「イーとムジナは織物の横糸だとするならAKI、アンタは縦糸よ。横糸に隠れていながらも
「それ、妄想だし☆ 筮竹やタロットカード、手の皺に神サマの意思を見出しちゃう? もしかしてニアっちてスピリチュアル系?」
「私がただの平凡で友達の少ない、ゲームの実況動画を見るか、気まぐれにドライブするぐらいしか趣味のない大学院生ならそうかもね」
「…………」
「でも、違うんでしょ?」
山本似愛改めニアは世界初の
―――MR恋人が保護者、ですか
―――空っぽのMR恋人なんてどうだっていい
「イー、あんたは気がついていたんでしょ?」
ぼんやりとしていたイーは急に声をかけられて飛び上がった。質問の意図がわからず、ニアにねっとりとした視線を送っていた。その間、
「質問を変えるわ、イー、アレは何?」
「アレですか? アレはただのアバターですけど……違うんですの?」
かつての
「……偶発にしては出来過ぎていることがもう一つ起きているわ」
無人の奥多摩駅で来なかったタクシー。
そこにたまたま居合わせた、今では少数派の自家用車を運転する男。
「あの晩、通信障害なんて起きていなかったことはムジナに確認している。そのときは天狗の男が私を利用するためだと思っていたけど、あなたは私を車に乗せることでAKIをアップデートする必要があったんですね」
おそらく「神の貌」の記憶データは超圧縮した形で施設内のどこかに置かれていたのだろう。そして、MR眼鏡を装着したニアが接触することで誰の目に留まることなく回収されるのだ。
「そうなのでしょう? 時山さん」
「…………やれやれ、歴史上最高のMR
子高生からふいに感じる、半日前、悪路に揺れる車内で感じた男の存在。
温良恭倹な雰囲気を纏いながら、どこか上の次元から見下ろしているような。
「今から半世紀ほど前の話だ。MR眼鏡をー
□□はで呻き声のようなため息を漏らす。
「テストの結果は今も極秘事項で開発者たちの情報はどんな些細な情報も掴むことはできない。たとえ僕らでさえもね。しかし、事実はたった一つだけ。少なくとも人間が日常的に接するレベルにおいて、人間は人間以外の友人を持つに至っていない」
人間そのものにしか見えない仮想体が大仰に嘆くのをニアは見た。
「ああ、ニアさん。せっかく81年前から来ていただいたというのに、私たちの未来はなんと遠いことか! 銀河への道は開かれず、仮想空間でさえも莫大なリソースをもとに現実世界を
「…………子守用ネコ型ロボットも?」
AKIの顔をした誰かはニヤリと笑う。
「そうですよ。
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