0022 イバラヒメ

「はぁ~。」背中を丸め、ため息ばかりを漏らす。

「オウカ様、いかがされましたか?」ジギルが聞く。

「玲子が料理人を増やしたいから、嫁を増やせだってよ。」

「オウカ様でしたら、嫁の100や200、すべて扱えるでしょう?」

「お前、何言ってんだよ?毎晩、女性の相手する俺の気持ち分かる?体が持たんよ!」

「でも、大丈夫なんでしょう?」

「そうなんだよね・・・。」

「料理スキルを持っている者をお探しなら、鑑定スキルを持った者を雇うのはどうでしょうか?」

「鑑定スキル?なんだ、それ?」

「見た相手のスキルは何か?上限はどれくらいかが分かるスキルを持った者の事です。」

「そんな奴がいるのか!よし!すぐに雇おう!冒険者ギルドでいいんだな!」

「いえ、冒険者ギルドに行かずとも、私の知り合いに鑑定スキルを持った者がいます。」

「分かった!すぐに雇い入れよう!行くぞ!」

「お待ちください!、まだ話が・・・」



ー***-



「ジギル、ココって・・・」闘技場である。

「闘技場という事は、ここで働いている人?事務とか?」

「いえ、違います。」

「案内の人とか・・・?」

「いえ、違います。」

「まさか・・・。」

「その、まさかです。」

「そんな話聞いてないじゃん!」

「ですから、先ほど話そうとしたのに、オウカ様が先走るので・・・。」

「で、どこにいるの?」

「地下です。」

「地下に部屋があるんだ。」

「部屋と言いますか、何と言いますか。」


牢獄だった。

「ジギル、お前もこんな生活してたの?皆、鎖で拘束されてるよ?」

「我々剣闘士は超がつくほどの危険人物ですので、こうしておかないと危ないのです。」

「ある意味、殿堂入りして良かったんじゃないの?」

「自由はありませんが、ここに居れば空腹からは免れられます。」

「で、何処にいるんだよ?」

「変わってなければ、一番奥の右側です。」


ガタガタの石畳を歩く。天井から滴り落ちる雨水のせいで、気を抜くと滑って転びそうだ。

「あら〜ぁ、ジギルじゃな〜い?久しぶりね~。」


その声の主は美女だった。非の打ちどころがないぐらいの美女。

身長は俺と同じ位、グラマラスなボディー、褐色の肌、すらりと伸びた四肢は男を魅了する色香を放っている。


「この人は、だ~れ?」

「俺のご主人様だ!」

「あら〜ぁ、ジギル殿堂入りしたら〜ん、すっかりと牙が抜けたんじゃな〜い?こんな男の下につくなんて~・・・。」

「失礼なことを言うな!我が主は、俺を一撃で倒したお方だぞ!」

「それは~、あんたが弱くなったからじゃなぁ~いの?」

「お前、また俺にぶっ飛ばされたいのか!」

「待て待て!喧嘩をするな!」


「あの、お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」とりあえず、下手に出てみる。

「私の名前〜?ないわよぉ~そんなのぉ~。」

「でも、観客の皆はイバラヒメって言うのぉ~。」

「オウカ様、コイツは闘技場で棘のついた鞭を武器に使います。その戦い方からイバラヒメと言われています。」


イバラヒメ・・・童話と大分、違うなぁ〜。


「あら~、あなた、見た目よりずっと、強いわねぇ~」

「なんで分かる?」

「私のぉ~鑑定スキルでぇ~丸見えなのよ~。」

「ならば、話は早い、俺に協力してくれないか?」

「条件次第よ~。」

「どんな条件だ?」

「まず、闘技場で私に勝つこと~私は強い人しか好きになれないのぉ~。」

「それと~私をここから解放してくれたら、協力してア・ゲ・ル」

「オウカ様、コイツを解放しようと思うと金貨5枚必要です。」

「本当にそれで、俺に協力してくれるんだな?」

「私は~約束はまもるわ~。」

「よし!決まりだ!」

「じゃあ、行きましょうか~。」

「どこに?」

「今から、戦うの~。」


うそだろ・・・

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