0013 商人ギルド

 ヤヌス王国は王宮のある首都コローレの他に、郊外にはそれぞれの貴族管轄である20の都市、30の村からなる国家らしい。さすがは一番大きな国と言ったところか。


 まずは、城下町を散策・・・。沢山の王国民がいて、非常に活気のある所だ。

 シエロ国王は「この城に住んでいい」と言っていたが、「自立をしたいので」という理由で城を出た。豪華な部屋は良いのだけど、落ち着かないし、何といっても飯が不味い。こんなのを毎日食べる事を考えるだけで、ぞっとする。であればと国王は何処でも通用する書状を用意してくれた。


 街の屋台で売っている食べ物を食べてみる。「ん?味が濃いし何といっても美味しいぞ。」昨日食べた料理のことについて店の人に聞くと、「食べたことはないが宮廷料理ほど美味い物はない、自分たちの食べるものなんて、王宮から見ればゴミみたいなもんだ」と言っていた。


 支払いをしようと金貨を出したのだが、値段が・・・銅の小粒ひとつというのは・・・。今回はおまけしとくよとの事だった。


 衣服屋を覗いてみる。どれもみすぼらしい。

「もっといい服はないのか?」

「仕立てる事は出来るが、高いよ」

「どれぐらいの値段なの?」俺達全員の仕立てをして銅貨1枚と言う。



ー***-



「今の問題は「金」だ。金がないのではなく、金貨しか持ってない!小さいお金、銅の小粒・銅貨・銀貨がないとこの街で生活できない!いいか、今から両替に行くぞ!」


 衣服屋の人に「銀行はないのか?」

「?」

「両替商はないのか?」

「?」

「金貨を小さなお金に崩したいのだけど」

「じゃあ、この街で一番大きい商人の店を紹介するよ!やだね、最初っからそう言ってくれよ!」


・・・そう言ってるんだけど、この国の商業って・・・。


 教えてもらった商会に行く途中で気になることがあった。街は活気があるのだが、家や店の作りがみすぼらしい。おそらく労働に対しての対価が安いのだろう・・・。上手く経済が回ってない証拠だ。


 細い屋台の道を抜けると大きな広場に来た。街の中心にあたるのだろうその道は四方八方に道が分かれている。

 その中でもひときわ大きな建物があった。あれが教えてもらった商会なんだろう。


 商会名は「ベル商会」。建物の中は宮廷程ではないが豪華な作りで、天井も高い。

 俺達は多くの利用客に対応するためだろう横に長いカウンターにいる比較的空いている受付嬢の所に行った。


「この商会の代表に会いたい」

「約束されてますか?」

「約束はしてないが、これを。」と書状を見せた。

 その書状を見た受付嬢は顔色を変え「すぐに呼んでまいります!」と走って行った。


「この紋所が目に入らぬか!」の印籠と同じ効果があるんだな〜ありがとう王様。


 奥にある扉が開き「お待たせしました。私がこの商会の代表をしております、ベル・ガバル・モントローレと言います。」


 この王国では、マシな衣服を着こなした紳士だろうと思う。

 やはり文化も低いのか…?


「すみません、急に押しかけちゃって。私の名前はオウカと言います。」

「お、オウカ?・・様?」

「はい。」

「昨日、この国に来られたオウカ様?」

「はい?」

「女神サリーナ様に召喚されたというオウカ様?」

「はぁ、まぁ、そうですけど・・・。」

「失礼しました!先ほどまでのご無礼をお許しください!」

「え?」

「どうか、我々の忠誠をお受け取りください!」

「あ、頭をあげてください!今日はそんなつもりで来たわけじゃないんです!」


・・・あの女神、どんだけ崇拝されてんだよ。小学生のくせに!


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