0002 勇者と女神の”口”防戦
「い、痛いじゃないか!わらわに手を挙げるとはいい度胸してるな!」
自称女神は殴られた頭にたんこぶが出来ていないかを確認しながら文句を言ってくるけど、頭に直接声が聞こえてくるのはごめんだよ?本当に気持ち悪いんだよ!
「うっさい!さっさと止めないお前が悪いんだ!」
「それは、そうとな?」あっけらかんとサリーナは話題を変えてくる。
「なんだよ?」俺もつられて返事をしてしまう。
「わらわは、このベーコンエッグバーガーと言うのが食べたいぞ。」
スマホに並べられた数々の中にあるハンバーガーのメニューを指さしてくる。
「おう、このバーガーだったら、お子様セットにするとおもちゃがついてくるぞ。何番がいい?」
「ん~4番!」
何だか、幼かった頃の妹と話している気分になり・・・。
「分かった、ポチッとな。」俺はノリノリで『注文』というボタンを思わず押したのだが・・・。
「あたー!痛いじゃないか!この無礼者!」正気に戻った俺は、サリーナのたんこぶが出来ているところと同じ所にげんこつを食らわしてやった。
「何、勝手にメニューを決めてんだよ!お前に食わせる物なんて、ないんだよ!さっさと帰れ!」
「お願いだぁ〜、今日は何も食べてないんだ!せめて一口だけでも食べさせてくれ!そしたら帰るから!」
「本当に帰るんだな?」
「うん。」
宅配が届くまでの間、話を聞いてやることにした。だって他に話題がないんだもん。口の上手い俺でもテーマがないと話せないよ?第一、頭がおかしい奴とまともに会話をする方がおかしいでしょ?それだったらペテン師になるわ!
自称・女神のサリーナが言うには、異世界で魔王の復活の兆候があり、その為に魔物の動きも活発化しているらしい。その危機を脱するために国王がサリーナに勇者召喚をお願いしてきたと・・・。
ピンポーン!「三ツ谷さん、宅配です!」
「・・・と言う訳だ。」サリーナがハンバーガーを頬張りながら言った。
「でも、何で俺?そんな事に興味ないんだけど?」
「おっ、そう言うことは、わらわの事を神と信じてくれたんだな!」
「合わせてるだけだよ。けど何でお前みたいな子供が神様やってんだよ?」
サリーナはフルフルと震えながら「何が子供だコラァ!これが美の結晶だと解らんのか!それに、わらわはお前の何百倍も長生きしとるわ!」
どう見ても小学4年生位の女の子、確かに綺麗な顔立ちではあるが、これが美の結晶?笑わせるな!
「何で?それで?どうして?うそ?」俺の頭の中は「????」しか浮かばない。
「わらわの世界でわらわより美しいものなどおらんわ!」サリーナは腕組みをし、誇らしげに顎を上げた。
「俺、やっぱ、勇者やるの辞めるわ。」さよなら~と手を振った。
「なんでじゃー!」
「俺、ロリコンじゃないからさ、」
「ウッ、ロリ、ロリコンだと!」
「大体お前、この世界だと子供だよ?誰がそんな子を美の結晶の神様と崇めるよ。」
「これでどうじゃ?」と年頃の女性ならばそそられる太ももを俺に見せるようにセクシーポーズをしてくる。
そう、『大人の女性』ならば、そそられる。
「大人の真似をしても無駄だ、お子様はお子様らしくしてろ!」
「きっさまー!覚えてろ!このわらわが一番美しい事を教えてやるからな!今日はもう帰る!」
「オウオウ、帰れ帰れ。二度と来んなよ~。」
ドンドンドンと大きな足音を立てながらリビングを出て行く。相当、怒ってるな。あれ。あれ・・・。
あれ?俺のメシ!アイツ持って帰りやがった!
ん?そう言えばドアが閉まる音がしないな。まだいるのか?
玄関に行ってみる。いない。
「アイツ、本当に神様なんじゃね?」
それよりも、俺の飯・・・。ハンバーガーを食べたかった・・・。仕方ない、久々にコンビニ弁当にするか・・・。
普段着に着替えた俺はマンションを出、コンビニへと向かって歩いて行った。
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