第1話 家事は完璧なのにそれ以外がポンコツすぎる許嫁のレヴィアンちゃん
春とはいいもんだ。新しい出会いと別れが入り交じっている。まったく甘ったるいぜ。
一人暮らしのマンションで目覚めると、カーテンを開けて朝日を摂取する。太陽の光ってのはなににも代えがたいもんだと思わないか? これを浴びるだけで一日を乗り切れる、そんな気がする。
「ふわぁーあ」
おれはあくびをしながら洗面所へと向かう。まったくいつもと変わらない朝だ。強いて言うなら、新学期始まったばっかりでソワソワしてるってことくらいか。
でもまぁ今日で三日目だ。そこまで気負う必要はないし、そもそも気負うタイプでもない。新しい出会いにドギマギするような奴じゃない、おれは。
顔を洗って、おれはいつものように髪型をセットした。
鏡にはオールバックの青年が映っている。寝ぼけまなこじゃなければ、それなりの好青年だ。耳にはピアスだってしている。眉毛を整えて、朝食の支度をする。
「あー、留守電来てやがる。誰からだぁ? まああとで確認すればいいか」
一人暮らしをしているとよく親から連絡が来る。まぁ現状どんなことをしているのかとか聞かれるというわけだ。
正直面倒だ。後回し後回し。
「行ってきまー、っておれ一人だったな」
今日はやけにそわそわする。
おれ――羽田航輝の予感が告げている。
今日はなにかあるな。それがいいことなのかよくないことなのかは知らんが。
まだ新しい学期が始まったばかりなので、みんな友達作りに忙しい。だがおれには関係のない話っぽいな。
「よお、おはよう」
おれに喋り掛けてくる者あり。なんだこいつか。朝っぱらから元気がいい奴だぜ。
「なんだ春彦か。朝から軽薄な笑みだな。なにかいいことでもあったのか?」
「そんなことはなかったよ。むしろ部員同士でケンカ始めちゃって、全然練習にならなかったくらいだよ」
「そうか、それは災難だったな。お前たしか副キャプテンだったっけか」
クラスに入ってきていきなり喋りかけてきたこいつ――北林春彦はサッカー部に所属していて副主将なのである。茶髪、そしてピアスという容姿に似合った立場だ。学ランの下にはワイシャツではなく青いシャツを着ている。
ちなみに学校で一番モテる男なのだ。
「じゃあな、用は済んだ」
「ちょッと待てよって! もうちょっと喋ろうぜ。まだ始業時間まであることだしな」
「……ふぅ。お前おれ以外に友達いないのか?」
「はは。まぁそうかもねー」
絶対に嘘だ。こいつに友達がたくさんいないわけがない。
ちなみにここは特別進学コースの二年A組である。頭のいい奴らが集まっているわりには、着崩した恰好の奴が多い。
かくいうおれもワイシャツの裾を出しているくらいだ。これくらいならばなにも言われない。
おれは自分の席に腰掛けた。窓際の前から一番目の席だ。おれの机に春彦が腰掛ける。
「お前サー、この間数学の先生が言ってた宿題やった? おれやってる途中で寝落ちしちゃってさー、やってないんだよな」
「だからなんだ。まさか見せて欲しいとか言うわけじゃあるまいな」
「そのとーりさ、親友?」
まったくいけ好かない奴だ。そんなキザな笑みを浮かべても、男のおれはなびかんぞ。
「断る」
「はは、お前ならそういうと思ったよ。なんかいつもの航輝で安心したよ。今朝はずいぶんとご機嫌斜めな表情を浮かべているように見えたからさ」
「そりゃ朝からお前に話しかけられたからだろう」
「なぁんだ、航輝も意外とツンデレだなぁ!」
「誰がツンデレだ。いっとくが、おれはべつに喋りかけられるのを待っているような人間じゃあない。用があったら手早く事務的な会話を済ませる。そうでないのならなるべくしない。人体が保持しているブドウ糖は有限だ。なるべくならエコに生きていきたいと思うのは生命体として自然じゃないのか?」
「……はは、いかにも航輝らしい意見だなぁ。けどまぁそれもひとつの考えだとは思うよ」
ったくこいつは。いつも濁しやがる。
おれたちが楽しい、それは楽しい会話をしていると一人割り込んでくる声が――
「おっはよー! 春彦君も航輝君も早いねー! なに二人で話してたの!?」
いかにも天然ギャルといった風貌の彼女は黒沢晴菜という。ブラウス一枚、腰にカーディガンといった装いで、男子生徒たちの注目の的になっているこの女。
金髪のサイドテールを嬉しそうにぴょこぴょこさせながら春彦に近付いていく。こいつはサッカー部のマネージャーで部活内でも春彦と縁が深い。というか絶対に惚れてると思う。春彦も気づいていないふりをしているに違いない。
「二人でなんの話してたん? なになに? もしかして恋バナとかー!? あはっ、春彦君はともかく航輝君はそういったネタなさそうだよねー」
「ほっとけ」
おれはため息をつく。こいつどうもおれをからかうのが好きらしい。
晴菜はこんな見た目でいかにもアホそうだが、実はけっこう頭もいい。顔とスタイルと服装だけでなく、学力も高いのだからそりゃあモテるよな。ちなみに彼女の学力は学年九位だ。
ミニスカートを翻しながら、おれの隣の席に座る晴菜。もちろんこいつの席ではないが、成り行き上よくここに座ってくる。
「なんだ、おれは今忙しいんだが」
「どこがだよ」
「んでんで、なんの話してたのー!? あたしだけはぶられるのちょーいやなんだけどなー」
「航輝がツンデレだって話をしてたんだよ」
「あははっ、なにそれちょーうけるんですけどっ! まーでも航輝君って意外とでれるよね? 案外ポイント高いよそーゆーとこ!」
「な、なんなんだお前らは……。朝っぱらからおれをからかって楽しいのか……?」
「な? でれただろ?」
「くっくっ! ホントに航輝君って真面目だけど崩れやすいところあるよねー! 見てて飽きないって言うかさ」
そうかよ、とおれは投げやりに返事を返す。はぁ、こいつらといるとマジで疲れるな。ブドウ糖がもったいないぜ! こんなところで話しているくらいなら、勉強とか運動をしていた方がマシだ。ジョギングはいいぞ?
おれは会話から一歩下がることにした。晴菜と春彦が楽しそうに会話している。
「今日の練習メニュー、もうもらった?」
「えー、マジでめんどいんだよねー、あれってさー。あたしが行くと顧問いなかったりするんだよね、もうちゃんといてよって感じ」
「ははは! そりゃあの顧問も自由人だからね。だけど言っておくが、お前も相当な自由人だから気をつけな」
「な、あたしは自由人じゃないし。ちゃんとルール守って学生生活送るタイプだし。馬鹿にすんなよなー」
「はいはい」
見ての通りお似合いである。なに? お前ら明日にでも結婚すんの? それくらい仲がいいのである。
ただ二人とも自分たちは友達同士だという線を越えないようにしている、ように見える。距離感をきちんと測っているような感じだ。仲はいいけど、友達以上ではない。二人ともそれを理解しているらしい。
ちなみにこの二人はハルハルコンビと周りからは言われている。春彦と晴菜だから。おれは滅多に呼ばないけどな。
そうこうしているうちにチャイムが鳴る。
「じゃな。今日も頑張ろう」
「うんがんばろーっ!」
こうしてふだん通りの学校生活が始まった。
そうだ。そうなんだよ。学校生活自体はそこまで変化はなかったんだ。問題はここからだったのである。
おれはまっすぐ帰るのもあれな気がしてコンビニによってから帰ることにした。いやあれな気がしてってなんだよ。けどふらっとどこかに立ち寄ってから帰りたい時ってあるよな。
たとえばポテチ買ってから帰ろうとか。
たとえば栄養ドリンク買ってから帰ろうとか。
まぁそんな気まぐれ。実際におれはコーラとポテチと栄養ドリンクを購入した。
ふぅ。春って気持ちいいよな。なんでこんなにポカポカしているのだろうか。まぁくだらないことはいいから早く帰るか。
――おれはこのときまだなにも予想していない。っていうか日常からの異変ってどうやったら気づけるんだよ。
予兆もなにもなかったんだぜ。おれはいつもの通り家に帰って、いつものように飯作って、いつものようにテレビ見てゲームしてユーチューブ見て眠るつもりだったんだ。
自堕落なような気はするけどそれでも楽しい生活。おれを待ち受けるのはそういうもんだと、今日のおれは疑わない。
おれがふらふらーっと歩いていると公園が見えてきた。いつもの公園だな。まぁそれ以外に表現のしようがないぜ。
だが公園のベンチに一人、女の子が座っていた。
珍しいな、と思った。女の子が一人ってのもあるが、なんと言ってもその女の子は髪の毛が金色で、宝石のように青い瞳をしていたからだ。
どこの国の子だろうな。そしてなぜ一人なんだ。
「……うぅ、わかんないよう」
何やら呟いていやがる。なんだってんだ。
おれは頭を掻き掻き、その女の子に近付いていった。
「おい、大丈夫かお前」
「ああああああああああっ!! どうしたらいいのおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
……いやうるせーな! なんだこの女の子!
「あ、あぁ、ごめんなさいごめんなさいっ! 私レヴィアンって言うんだけど、その、道に迷っちゃって……家につけなくなってしまって……!」
なるほどなぁ。迷子ってわけか。それなら分かりやすいな。道案内なら得意だぜ。なんたって外国人相手に駅の場所教えたことだってある人間だからな、おれは。
ってこいつも外国人か。びっくりした。日本語クソうまいな。言葉としてはたどたどしいけど、ちゃんとコミュニケーションは取れてたよな。
「そうか、迷子か。お母さんとかお父さんとかとはぐれちゃったのか?」
「ち、違うの……。私一人で日本に来てて、行くべきところに行けなくって……」
行くべきところ? やけに引っかかるぜ。ふつう家って言ったら帰るべきところって表現しないだろうか。
それとも新しい家ってことか? なるほどあれだ、留学生か。そりゃあ寂しくもなるよな。
「よしっ、じゃあおれがお前の行きたいところってとこに連れてってやる。多分お前より遥かにここらに土地勘があるからな」
「ほ、ほんとにっ! よ、よろしくお願いしますっ!!」
そうしておれはレヴィアンから地図を受け取った。なるほどなるほど。ここなら見覚えあるぞ。っていうかおれと同じマンションかー。へー、お隣同士だったりしてな。
えーっとなになに、部屋番号は?
703。
ん?
おれはこの数字に見覚えがあるぞ。っていうか毎日見ているのだが、これはいったいどういうことだろう。幻覚か? 一種の幻覚症状なのか?
「お前これ間違ってないか?」
「ま、間違ってないよっ! 今日からそこに住むことになってるんだっ! へへ、楽しみだなぁ!」
「…………………………………………………………」
え? これどうしたらいいの? 誰だよこいつ! まさかこれが新手の詐欺って奴か? あれだな、ツツモタセって奴だ! 可愛い女の子を連れ込んだだろと言いがかりをつけて、莫大な金をせびり取るあの手法だな。ってことは周りにお仲間がいるかも知れない。
「なぁ、ひとつ聞いていいか?」
「な、なにかなっ。なんだって答えちゃうよっ! えっへんっ」
「いやエッヘンじゃねぇ。この地図が示すとこおれの家なんだが」
「……………………え?」
レヴィアンは固まってしまう。いやおれの方が固まりたい気分だぜ。なんでこんな茶番に付き合わされなくちゃならんのだ。
レヴィアンは驚いたような瞳でおれを見上げる。いや『ような』じゃないな。本当に驚いた様子だ。そしておずおずと訊ねた。訊ねてきやがった。
「こ、こうき君? ハネダコウキ君?」
「っ!」
……いや待てこれはさすがにおかしい。おれは警戒心をよりいっそう強めた。なんでこいつおれの名前知ってやがるんだ。
おれが次の言葉を発する前に、レヴィアンは決定的な答えを口にした。とんでもない答えだった。おれは今後一生その言葉を忘れることはないだろうと思う。神さまはどうしてこんなくだらないイタズラをするのだろうか。
「ああああのさっ、私今日から航輝君のお嫁さんになるレヴィアンっていうんだけどねっ! そそそ、そのっ………………よろしくお願いします!!」
ぺこりと彼女が頭を下げた。
は?
お嫁さん? いやなに言ってんだこいつ? おれに結婚相手なんて存在しない! ましてや誰だこいつ! 知り合いでもない女がいきなりおれの嫁宣言してきてるんだぞ? 理解できねーよ! できる奴がいるのなら連れてこい!
おれの絶叫が街中に響き渡ったことだろう。
はああああああああああああああああああああああああああッ――!!
意 味 が わ か ら な い!
「とりあえずそこに座れ!」
おれは目の前に出されたお茶をすすってから言った。っていうかなんでお茶淹れてくれてんの? ここはふつうおれが淹れてやる場面だろうが! どう考えてもイレギュラーだ。
正直まだ混乱している。混乱だらけだこんなこと! なんでいきなり嫁を名乗る女と出会わなくちゃいけないんだよ!
ちょっと待て。考えてみれば、これってストーカーなんじゃないか? こいつがおれに好意を寄せている人物で、自分がおれと結婚したと錯覚してしまっているのだとしたら? 精神異常者か? まさか? でもその可能性も否定できないよな。
しかしお茶がうまいな。
「し、失礼するねっ。いいいいきなりいたからビックリしたよね!?」
「当たり前だ。どういうわけだか説明しろ。できなければ出て行け」
「ひえええええっ!? そんなっ……!」
「当然だ! 自分ちに勝手に上がろうとする奴、不信感を抱かない方がおかしいんだ。最悪警察に出すかもな!」
「そそそそんな物騒な! あれっ………………おかしいなぁ? ちゃんと連絡は行ってたはずなんだけど……」
「連絡? なんのことだ?」
「え、えっとね。今朝あたしが家に行くことをちゃんと伝えたはずなんだけど……」
「はぁ?」
「え、えっと、正確に言うと私から連絡したわけじゃなくてねっ。航輝君のお父さんから連絡が行くって手はずになっててぇ……あ、あの、ごめんねっ!? そんなに怒った顔しないで……!」
いや怒った顔などしていない。むしろ困惑で眉をひそめていただけだ。
しかしなんだこいつは。言っていることが支離滅裂だぞ。おれはそんな連絡など受けていな――
はっ!?
おれは今日の朝に留守電が入っていることを確認しているではないか――!
おれはだだだっと駆けていって、留守電を聞くことにした。
『よう、久しいな。といっても電話に出てくれないとは、おれもずいぶんお前から嫌われちまったようだ』
それから沈黙。そして続き。
『あぁー、なんだ。お前も不良息子になっちまったな。おれはそれを許すつもりはない。どこの世界に不良になった息子をよしとする親がいるかってんだ。ふざけんな!』
さらに続く。頭を掻いているのかも知れない。
『お前に言ってなかったことがあってな。お前に婚約相手ができた。それもおれら親同士が決めた婚約だ。文句は受け付けない。
――名前はレヴィアン・エメラルド。アメリカの超大手出版社の社長令嬢だ』
は!? なんだって? おれは正気を失いかける。アメリカの出版社の社長の娘ェ? ってことは超大金持ちじゃねーか! まぁうちもたいがい大金持ちなのだが。なんたって大手カップ麺製造会社である。海外向け商品も多く作っている超大型企業。
ってそこじゃない! 社長令嬢だと!?
『あー、そのなんだ。向こうの出版社ともなると、こっちもパイプラインを作っておきたいと思うのは当然だろ? なんせ色んなとこに顔が利いて、商品の広告がしやすくなる。向こうからその娘との婚約の提案を持ちかけられたんだが……おれは二つ返事でオーケーした。何度も言うが、モンクハイワセナイ。今日その子がお前の家に来るはずだ。お昼くらいには着くんじゃないか? 以上だ。じゃあな!』
は?
おれは絶叫した。
はあああああああああああああああああああああああああ!?
なんだと? 説明不足じゃねーか! おいおいおいおい、ふつうはまず顔合わせとか通すだろ!? それがなんでいきなりことが進んでんだよ!
ちょ、ちょっと待て! ダメだダメだ。頭が痛くなってくる。親同士が結婚を勝手に決めるのは、まぁ制度として存在しているのだから、まだ理解が追いつく。だがおれが思っているのはそこじゃあない!
海外の女の子と結婚だなんて――!
しかもあの子、めちゃくちゃ日本語うまかったぞ? っていうことはかなり勉強してきたのかも知れない。
なんでだよ……言ってくれよもっと早くに!
まぁ許嫁がいつかはできるんだろうなとは、実は思っていたことだ。おれだって大企業の息子だ。家のしきたりはかなり厳しいし、そのしきたりに嫌気が差してこんな不良まがいな恰好をしているってのもある。
だが。だがだ! せめて常識というものをわきまえろ! そんないきなり同居生活を始めますなんて言われて、よしじゃあ明日から頑張りますかとなる息子がどこにいやがんだ――!
おれはすぐさま電話を掛けた。もちろん親父にあててだ。
「はい、どちら様でしょうか?」
「おれだ。羽田航輝だ。あのバカ社長の息子だよ。さっさとあのクソ親父を出せ!」
「申し訳ございませんが、今社長は忙しくおられますので……」
おれはすぐさま理解する。この社長秘書は絶対に嘘をついている。多分今となりに社長がいて、あいつはそれを聞いているに違いない。さぞかしほくそ笑んでいることだろう!
ちっくしょ――っ! どうしてこんなにもおれは不自由なんだ。
「そうかよ! だったらあのクソ親父に伝言だ! ふざけんな! あの女はおれんちからすぐさま追い出すからな、と」
「ちょ、ちょっとお待ちください――!」
おれはがちゃんと電話を置いた。
呼吸が荒い。今すぐにでも倒れそうなくらい興奮している。
しばらくして落ち着くと、ゆっくりと顔を上げた。そこにはみごとに整った、まるでビスクドールのような美しい女の子の顔があった。
彼女は不安そうにそのきれいな眉毛を持ち上げた。
「あ、あの……大丈夫?」
「あぁ平気だ。悪いな、話を聞いたのが今だったもんで、ちょっと動揺している」
レヴィアン・エメラルドといったか。髪の毛は天使の輪ができるほど艶のある金色。そしてその肌は雪のように白い。顔はかなり幼い。
「お前、歳はいくつだ」
「えっ!? ええええっっと、航輝君と同い年だよっ! ごごごめんっ、敬語の方がよかったかな!? なれなれしいよね……っ!?」
「いい。べつに呼び方なんてどうだっていいんだ。つーか問題はそこじゃねぇ」
おれはまだ心臓をバクバク言わせている。
――正直、この子めっちゃ可愛いなとは思った。はい思った。思いました! いや嘘はつきたくない。目が合ったときにドキドキだってしたさ!
だが『はいやった可愛い女の子と結婚できた明日からパーリーナイトだぜっ!!』となるほどおれの頭は腐ってはいない。納得できない。知らない女などと結婚するなど!
「ちょっとリビングに戻ろう」
おれはいまだに震える足を叱咤しながらリビングへと歩くのだった。
歩きながら考える。ったくふざけた話だ。
日本の法律だとたしか結婚は男は十八歳から、女は十六歳からだったはずだ。
そしておれは十六歳。……おい、結婚できないじゃないか。
ただ……とおれはネットで見たことのある知識を引っ張り出す。そういや婚約ならいつでもできるんだったか。結婚と婚約は言葉の意味としては違う。
おれは大きな大きなため息をつく。つまりおれたちは勝手に婚約させられた状態と言うことか。そしておれの意志も鑑みずに同居を強制すると。
親父……あのクソ親父ぃ!
「――え、えっと、レヴィアン・エメラルド。といいます!! しゅ、趣味は音楽とか、あああとゲーム実況動画とかっ! 日本語勉強するために見てきたんだっ! そそそそんなとこっ。へへっ、そんなとこって言われてもどんなとこだよって感じだよねっ!?」
「……」
なんだこの子。
かなり慌ただしいというか、いちいち喋るたびに顔を赤らめるクセがある。
おれははーっと息を吐き出す。うん、クラスにもこういうしゃべり方の女子は一人や二人はいる。特に図書委員で窓際に座ってる子とか、喋りかけられるとこういう対応をする。
あわっ、あわあわっ!! としゃべり立てたあと、その子は急にうつむいてしまう。
「あの、別に怒ってるわけじゃないからな」
「そ、そうだよねっ、ごめん、でも沈黙が怖くって……これって私のせいだよね!」
そうじゃない。おれが戸惑っているだけだ。しかし彼女は責任を感じている。
おれはため息をついて口を開いた。
「おれは羽田航輝だ。まぁ名前くらいは知っているはずだ。そうだな、得意なことは勉強とスポーツ。案外なんでもできるタイプだとは思う。自分で言うのもなんだがな」
「す、すごいねっ! わわわ私なんかとは大違いだねっ!!」
「ちなみに趣味はそうだな、強いて言うなら一人で読書することくらいか。まぁ一人暮らしをしていると、そんな人間になっちまう」
おれはある種の気まずさをごまかすように言った。初対面の女子と面と向かって話すのに臆することはなかったはずなのだが、今日はどうにも調子が狂う。恥ずかしいとかじゃなくて、喋りづらい。
だって今日からこいつと同居するんだぜ? いきなりすぎやしないか?
「あ、あのっ、私のこと追いだすの――ッ!? さ、さささっき会話聞いちゃってたから!」
「……あぁ、なんだそんなことか。まぁ追い出すことも視野に入れておくが、今のところその気はない。まぁ今のところはな!」
「そ、そうなんだ! よかったぁ!」
よかったか? そこ喜ぶところなのか?
まぁおれもけっこう厳し言い方をしているが、なにもそこまで非道になることはしないと思う。
「お前はアメリカ人なのか?」
「え? あぁ、そうだよね……私お父さんがアメリカ人でお母さんがイギリス人なんだっ! 今は日本国籍なんだけど……っ!」
けっこう用意周到らしい。ったくわざわざ国籍変えてくるとはな――ッ! 手続きさぞかしたいへんだったんだろうな、ちくしょう!
正直面倒だな。
「はぁ。わかった。お前は今日からここで暮らすってことだな」
「うっ、うんっ! 私家事頑張るからっ! 毎日航輝君のためにおいしいご飯作るねっ!」
レヴィアンが言う。あん? ちょっと待てよ。こいつそういえばさっきおれと同い年って言ってたな。じゃあ学校は?
いやな予感がするが、おれは一応聞いておくことにした。
「お前学校は?」
「ふ、藤崎岡崎高校二年生の、五組にいくことになってるんだけど……明日から!」
おれの予感的中だぜ。やっぱりおれと同じ学校じゃねーか。
おいちょっと待てや。なんだって? 二年生の五組?
クラスが数字で表記されていると言うことは普通科ということになる。ちなみにおれが所属する特進科コースはアルファベットで表記される。おれは二年A組だ。
はぁああああああああ。なんだろうな! 盛大なため息が出ちまうぜ! べつにこの女の子が嫌いってわけじゃないが、今まで一人暮らししていた空間に女子が入るってのは、ちょっと気まずいというかなんというか、一種の恥ずかしさがある。
この子はそういうのを気にしないタイプらしいな。ったく、呑気なもんだぜ。まぁ向こうの国とうちの国では常識が違うのかも知れないが。
「はぁ。そのなんだ。まぁお互い許嫁になってしまったわけだが、とりあえずなってしまったもんはしょうがないと考えよう。――よろしく」
「よよよよろしくねっ! 私ソソーしちゃうかも知れないけど、ががが頑張るからっ!」
こうしておれたちは握手を交わした。手、小さいな。初めて女子の手というものを握ったかも知れない。……いやそれは嘘だ。小学校の頃とか、よく行きたくもないパーティーに行かされて、握手させられたっけ。
レヴィアン・エメラルド。金色の髪をアップにまとめた彼女はにこりと微笑む。その姿はまるで天使のようだった。
なんでおれはちょっと顔を赤くしてるんだろうな? ま、いっか。
おれが自室で本を読んでいると、こんこんとノックする音があった。
「ご、ゴミ箱とかあったら私捨てとくよっ……!?」
「いやいい。今は特に大丈夫だ」
「そっ、そお?」
レヴィアンはえらくもじもじしている。顔から火が出ているんじゃないかと思わせるほどに真っ赤だ。っていうか物理的に湯気が出ている。だ、大丈夫かよ……。
「どうしたんだ?」
「ごごごごめんねっ!? 航輝君すごく本読んでる姿かっこよかったからっ!」
「……」
かっこいいと言われるのはべつにこれが初めてじゃない。っていうかよく言われることだ。告白されたのなんてざらにある。おれは割とモテる方だと自覚している。まぁだからなんだっちゅう話だが。
「そうか。まぁレヴィアンもけっこう可愛いと思うぜ」
おれはなんとなく返した。本当になんとなくだ。とりあえずボールが来たから打ち返しただけである。だが当のレヴィアンはゆでだこみたいに真っ赤になって、やがてぷしゅうううううううう!! という音を立てて倒れてしまう。
「おい、おいおいおいおいっ! 大丈夫か!?」
「う、うん……大丈夫…………ぱたっ」
これは大丈夫じゃない。いやおれのせいか今のは!? レヴィアンはどこか小動物じみていて可愛いという意味だったんだが、どうやらおれが愛の告白をしているとでも勘違いしたらしい。
おれはレヴィアンを見た。ちょっと触ってみる。体が熱い。
「おい、大丈夫か!? 熱でも出たんじゃないのか!?」
おれはおでこをくっつける。熱……あるな! お前今すぐに病院に行った方がいいんじゃないか!?
「こ、……………………こうきくん…………………………その。しょにちから……………………いくたいぷなんだ…………………………わ、わたしは、いいよ…………」
おれは頭を抱えた。レヴィアンはどう考えても『キス待ち顔』である。い、いやいや、ちょっと待て。めちゃくちゃかわいいけど、そういうことじゃない!
「いや、レヴィアンお前は盛大な勘違いをしているぞ! おれはお前の体のことが心配なんだよ!」
「かっ、かかかかかからだってっ! わわわわ私大丈夫かなっ!? う、うまくできる自信が………………やさしく……してほしいな……!? 航輝君にゆだねるからっ!!」
新婚(まだ)早々なにを言ってるんだこの子は! ッ! 違うな、新婚早々の夫婦の会話なんてこんなものなのかも知れない。だが違う! なんか違う!
「違うといっているだろ。おれはべつにそういうことがしたいんじゃない。お前……その様子だと体は大丈夫なんだな」
「……えっ、あぁうん。体調不良とか、そういうのじゃないから……だからやさしく……!」
「違うっ! あぁもういい調子狂う。なんだったか、あぁそうかゴミ箱だったな。あれはもう大丈夫だ。自分で捨てるから平気だ」
「そそそそっか! ごめんね、私勘違いしてたみたい……恥ずかしい!」
「いい。あと……ご飯はお前が作ってくれるのか?」
「うんうんっ、私航輝君のためによりに腕をかけて作るから期待して待っててねっ!」
微妙に日本語が間違っている気がするが、まぁ彼女ももともと日本人じゃなかったのだ。たまに間違いはあるだろう。あえて指摘はしないでおくか。
それにしてもご飯を作ってくれるのか。それはありがたいな。
「期待してるよ」
おれが行ってやると、こくこくっとうなずいてレヴィアンが廊下を駆けていく。後ろ姿は完全に外国人妻のそれである。首の後ろがめちゃくちゃ赤くなってるぞ……。というか、体小さいな……。本当に子どもみたいだ。日本の小学生高学年くらいの身長じゃなかろうか。
おれがなんとなく見送っていると、ばたっとレヴィアンは倒れた。こけたらしい。
「うううっ、いったぁ~~~~っ!」
おれは彼女に駆けよって手を取ってやる。まったく世話の焼ける。この子もしかしたらめちゃくちゃドジっ子なのかも知れない。
「ごご、ごめんっ。みっともない姿見せちゃったねっ……」
「いいって。ほら立てるか?」
「う、うんっ。……へへ、航輝君の手大きくて温かいねっ!」
まったくどこで喜んでるんだか。
「い、いただきます……?」
「うんっ、よ、よくできたと思うんだけど……航輝君の感想聞かせて欲しいなっ。わわわわわ私、すごい頑張ったんだよっ!」
「そ、そうか……それはありがとう」
おれは目の前に並べられた料理を見る。ふわっふわのオムレツに、見るだけでヨダレが出そうな褐色をした鶏の唐揚げ、艶めいたご飯にお味噌汁……。
なんだここは? 定食屋かなにかか?
おれはレヴィアンの目を見る。彼女は顔を朱色に染めてこちらを見ている。すごいもじもじしている……。もしかしてこの子優秀な子なのではと思ってしまう。
「ごほん、ではいただくとする」
「は、はいっ……、召し上がれっ!」
おれはパクリと一口唐揚げを食う。うんまっ。なんだよこれ。どこのファミレスで食う唐揚げよりもうまいぞ! もちろんコンビニ弁当の比なんかじゃない!
「うまいな、これすげぇうまいよ!」
「……!! ほんとにっ!? いやややややややややっっっっっっっっっっったああああああああああああああああああああっ! 航輝君が、わ、私の料理を褒めてくれた……っ! 嬉しい! 嬉しくて私死んじゃうかも知れないっ! 私の人生に悔いはないよッ!!」
「いや死ぬなよ……でもうまいよ、マジで」
今にも卒倒しそうなレヴィアンをとりあえず置いといて、おれはオムレツに手をつける。うっっっっっっっわ。なにこれ。口の中で溶けていく卵なんて初めて食ったぞ。っていうか卵ってこんなにとろけるものなのか。ケチャップとの相性を考えて、キチンと塩コショウを振ってあるのだろう。
こいつ、天才じゃないか?
おれは次々に料理に手をつける。うまいうまい。ご飯が止まらない。
そんなこんなですぐに完食してしまう。
「ごちそうさま。お前料理うまいな。なにか料理教室とか行ってたのか?」
「うっ、ううんっ!? どどどどど独学でやってたんだけど、その、誰かに食べさせたのってあんまなくてねっ……ええええええっっっとね? あー、うん、航輝君の笑顔が見られてすっごく嬉しいっ! 私昇天しそう!」
だから死ぬなよ……。言動がとことん支離滅裂だな……。だがおれがうまいもんを食えたことは事実だ。それに対して彼女は喜んでくれている。
「ご、ごほん……あー、まーそのなんだ、これから毎日こんなおいしい料理を食えるとなると、すごいありがたいな」
「~~~~~! うんっ! 私毎日作るねっ! あっそうだ! おおおおお弁当も私が作るからっ!」
おれは口を拭きながら彼女の笑顔を眺める。すごい楽しそうだ。その目はとても輝いていてほんものの宝石のようだった。
なんか、いいのか? おれは急に不安になる。ここまで完璧な妻(未来形)ができるとなると夫(未来形)としても不安なのだ……。なにかよからぬことでも起きやしないかと。
「あぁ。まぁそうしてくれるとおれも助かるよ」
おれは応えた。どうせクラスメイトからは茶化されるのだろうが、気にしない。あんたもしかして彼女できたの!? とか聞いてくる奴はそもそも頭脳が中学生以下なのだ。晴菜だ。
「うううううんっ、航輝君のために、私精一杯作っちゃうよ! あ、アレルギーとかあったら教えてくれるかなっ!?」
「いや、ないと思う」
「そ、そうっ!? じゃあ好きな食べ物とかは?」
レヴィアンが目をキラキラさせておれに質問を浴びせかけてくる。まるで子どものようだ。そこがまた彼女の可愛らしいところではあるんだろうが、……なんかやけに距離が近すぎるような気がするんだよなぁ。
おれは彼女からの質問を適当に答えつつ、考える。
おれはずっと疑問に思っているのだ。このレヴィアンという子が、ちょっとおれに気がありすぎやしないかと。
考えすぎか? おれみたいなタイプの人間と会話することによって緊張して舞い上がっているだけかもしれない。まぁ割とそういうタイプの女子はいる。
ま、いいか。考えるのは後回しにしよう。今はとにかくこの新妻(?)と仲良くなることに集中しよう。勝手に決められた婚約とは言え、ある程度相手のことは聞いておかないとまずいもんな。
「おおおおお風呂沸いたけど、こここっこ航輝君から先入っていいよ!」
「……ん、いやべつにおれはあとからでも構わないが」
「じゃじゃじゃあ、私先はいるねっ。ごごごめん、私が先にお風呂しちゃってっ!」
「気にすんなよ」
おれはまたもやため息をつく。それから文庫本を置いて、ソファから立ち上がった。
「……ふぅ」
なんか色々ありすぎじゃないか? 初日からこんなんだと、けっこう気疲れしてしまう。徐々に慣れていくしかないんだろうが、どうも先行きが不安だ。
「きゃああああああああああああああああっ!?」
ごてん、という強い音が響いた。おいおいこっちまで聞こえてきたぞ。ったくなんだなんだ?
「なんだ、どうしたんだ……ッ!?」
おれは急いで洗面所へと向かう。そして扉を開けた。あーあ、開けちまったよ。
「ここここ航輝君――っ! 首に幽霊がしがみついてきたよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!?」
ちょっと声がデカい! っていうかおれの胸に当たってる感触はデカ――くないな。おっぱい当たってんじゃねーか!
レヴィアンはおれに抱きついてくる。まさに一糸まとわぬ姿、その真っ白い肌のほとんどがおれに密着している。あったけぇなんだこれ!
「え、レヴィアンさん……? 一回離れてくれてもいいか? あとそれ、多分天井から垂れてきた水が首筋に当たっただけだと思うぞ」
「……え!?」
レヴィアンはゆっくりと顔を離した。……って近っ! すっげーきれいな顔がそこにはあり、その顔は見る見るうちに朱に染まっていった。
「ううううううううううううわああああああああああああっ! ごごごごめん! 私ったら、航輝君に抱きついちゃった……! って私裸じゃん!」
レヴィアンはそのままうずくまってしまう。タオルを引っ掴んで、体をおれから見えなくなるように覆い隠した。まぁ当然の反応だよな。
レヴィアンは上目遣いでこっちを見てくる。うわ、正直可愛い。
「……み、見ないでぇえーーーーッ!」
「わわわかった! 今出て行くから! 悪かった! おれも不注意だったよ!」
おれは洗面所の扉を慌てて締めた。そのまま壁伝いに廊下を歩いて行く。
おれの網膜にはレヴィアンの美しくみずみずしい裸体が焼き付いてしまった。そしてそのあとのこっちを見ないでという表情も、しっかり焼き付いてしまった。
……あぁ、初日から災難だ。……まったくよ。
おれは自室に戻るなり、文庫本を読み直した。しかし一向に読めない。目が文字の上を上滑りしていく感覚がある。まぁサンテックスの難解な文体のせいもあるだろうが、それ以上にあの娘の裸である。
女性の裸って、アァも美しいものなのか。……って違う違う。おれは一体なにを考えているんだ! 正気に戻れ!
気が収まらないのでベランダに出ることにした。ぶどうの缶ジュースを開ける。あぁ、うんまいなっ、これは。至福の時間である。
「(……あの子かなりのドジ気質なのかも知れん)」
はぁ、まったくとんだ女の子が許嫁になってしまったものだ。
料理は完璧だ。そして容姿も完璧。だがどこか抜けているところがある。
「(明日から学校にあの子も来るのか……。というか、一緒に登校するんじゃないか?)」
まぁ流れ的にはそうだろうな。一緒に登校か。まぁべつにいやじゃないし、恥じらいがあるというわけでもないが、ちょっと慣れないよな。
にしても。お弁当を作ってくれる人がいるってのはいいもんだな、と素直に思うぜ。なんたって今までは購買で買うか、たまに自分で作ったとしてもおにぎり程度だったからな。
しょーじき、助かるってのは本音だ。
次に起こりそうな出来事を予測しておくか。まぁ次は寝るだけだろう。だがどうしたもんか。うちにはベッドがひとつしかないぞ。
まさか初日から一緒に寝るというのは……あまり慣れない部分もあるので避けた方がいいだろう。
そんなことを考えていると、レヴィアンが風呂から出てきた。風呂上がりのレヴィアンは、頬が桜色に上気していて、まぁまぁ出来上がっている。いやこの表現もおかしいけれど。
「レヴィアン、お前に言っておきたいことがある」
「え? えぇ!? な、なにかな……? も、もしかしてささささっさっきのことじゃないよね!?」
レヴィアンは不安そうにおれを見る。
「そんなしょげた顔をするな。お前は特に悪いことはしていない。むしろおれの方が感謝するべきだろう。こうやって家事を言わずともやってくれるんだからな」
「そ、そお? へ、へへっ、て、照れちゃうよ……へへ」
「……ふぅ。まぁそんなお前に提案なんだが、おれは今日からソファで寝る。お前にはおれの部屋のベッドを使ってもいい権利をやる」
いくらマンションとは言っても、ベッドはひとつしかない。来客なんざ想定してないからな。
「……ふぇ、それって、い、一緒に寝ないってこと?」
「当たり前だ。なぜいきなり初夜をともにせんとならんのだ。さ、さすがに横に並んで寝るのはおれもさすがに気が引けるというか……」
「……う、うん………………そっか…………わ、わかったっ! 私今日から航輝君のベッドで寝かせてもらうことにするっ!」
相変わらず挙動が面白い奴だ。ただまぁ見ていて飽きないというのはある。
ちょっとばかし心配だがな!
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