第7話
私は少女を立たせると魔法石を握りしめた。ステータスオープン、傀儡スキルレベル1の発動を確認するとそこら中に転がっているゴブリンとパーティーにいた人間たちの死体が起き上がり始めた。私は続けざまに最後の魔法石に魔力を注ぐ。ステータスオープン、使役スキルレベル1の発動を確認。死体は丸腰のまま困惑しているゴブリンたちに襲い掛かった。
天に召されたはずの仲間や敵が当然動き出し、まして自分たちを攻撃してくる様はゴブリンたちをひるませるのに充分だった。私は少女の背中を右手で支えながら少しずつ魔力を送り込む。
「分かるか今きみに魔力を供給してる、回復魔法がうてる準備が出来たら詠唱するんだ」
「は、はぃ、あぁでも杖がありませぇん」
不規則に目玉と手を動かして、顔を歪ます少女に私は苛立ちを覚えながらも幼い子を諭すように投げ捨てられた杖の場所を指示する。
「落ち着いて杖ならほらあそこにあるよ、マーキングはつけてる?」
「はぃ」
「いい子だ、じゃあまずはリターンの呪文を唱えて」
「はぃ、リ、リターン」
少女の唱えた呪文で杖は空中に浮かび上がりゴブリンの群れの中を滑空した。唱えた呪文は短いものだったが恐怖で声が上ずってしまったため少女が掲げた右手の指先をわずかにかすめ
「イタッ!」
かわりに私のおでこにクリーンヒットする。
「ご、ごめんなさぁい」
私は予期できなかった攻撃に思わず目に涙を浮かべこぶができたおでこを左手でさすっていた。
「私は大丈夫だから、はやく回復魔法を……」
奥歯を噛みしめながらそれでもできるだけ優しい口調で少女に魔力を供給する。
使役した死体は徐々に相手の攻撃に押されて次々と倒れかけていた。
少女は頷き、杖を胸にあて大きく深呼吸する。
私は詠唱のタイミングを見計らい右手から送る魔力を調整していた。しかし、
「おい、どうしたなぜ詠唱しない?」
少女は杖を構えただけで何かを唱える気配がない。もしや何か考えがあるのではと脳みそを常にめまぐるしく働かせていたが少女は初歩的な回復魔法の詠唱すら口ずさむことはなかった。
まさかまだ覚悟が決まらず恐怖で固まっているのか、だとしたらまずいぞ。
「あのぉ、魔力をもっと……もっとください」
「なんだって?」
「もっとたくさんの魔力を……じゃないと回復魔法がうてません」
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